8話 購買

「先輩行こう!」

今日は彗が以前気になっていたものの、あることを理由に行けずにいた場所へ向かっていた。

「購買は人気のようだね。」

「うん、何にしよっかなぁ!」

目的地の購買へ着くと、彗は人の多さに目を見開く。初めて来たのであれば無理もない。

多くの人々か購買の受付へ押し寄せているのだから。

「おい、あの人って」

「宇宙峰財閥の…」

2人が購買の列に並ぼうとした時、ふと彼の存在に気づいた生徒達がひそひそ話をし始める。

その話はすぐ広がっていき、気づいた時には購買へ続く道の前には誰一人いなかった。

「せん、ぱ…」

郁利は戸惑う相手に声をかけようとしたが、移動してきた人々にもみくちゃにされ声を届けることすら叶わない。

「いらっしゃいませ、宇宙峰様。どれでも自由にお持ち下さいな!」

「いや、あの。」

彗は諦めて購買の受付へ進むと、元気なおばちゃんになんでも持っていってと言われ困惑した。

宇宙峰財閥の息子というだけで、この学校の人間はすぐに特別扱いする。

だから彼はこういった場所が苦手だったのだ。

「すみません、困らせてしまいましたね!こちらに校内で人気の商品を全ていれておきましたので、お口に合うか分かりませんが召し上がって下さい。」

「いえ、お金は払い…」

「いいえ!お金は必要ありませんから、さぁどうぞ!」

商品を選ばす立ち尽くしていると、おばちゃんは1人でペラペラ話しながら購買の商品を袋に詰めていく。

さすがにタダでは受け取れないという彼の言葉に聞く耳を持たず、強引に商品の袋を渡すと満足げな表情をする女性。

彗は周りの視線もあり断りきれないと察したのか、お礼を言うと足早にその場を立ち去った。



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