7話 謝罪

「どうぞ。」

「あの、先輩のこと利用しようとしてすみませんでした!」

彗が生徒会の資料に目を通しているとノックの音が聞こえ、そちらへ視線をずらし訪問者を招き入れる。

郁利は部屋の中へ入るなり、頭を深く下げて謝罪をした。奥の方へ来ようとせず、入口付近に立ったままだ。


「私は気にしていないよ。」

「でも、本当にごめんなさい!それを伝えたくて来ただけから…」

少しの間沈黙が流れたあと、彼は落ち着いた口調でその件は問題ないことだと話す。

しかし相手は気まずいのか、もう一度お辞儀をしながら謝ると早々に部屋を出ようとドアノブに手をかけた時だった。


「待って」

「え?」

「私は嬉しかったよ。あんな風に話をしてくれたり一緒にご飯を食べてくれる人なんていなかったからね。」

郁利が自身を静止する声に振り返ると、彗は先程まで腰掛けていた椅子から立ち上がり相手の方へ近づいて行く。

そして目の前で立ち止まると、2人でお昼を食べていた時の思いを綴る。


「だけど僕は生徒会長さんなら何かあっても代わりになってもらえると思って利用しようとしたんだよ?」

「確かにそうかもしれないね。でも全ての行動が利用する為のことだったのかい?」

「それは…」

相手は黙って話を聞いていたものの、そんなことを言われるとは思わず疑問に思い質問を投げかける。

彼は郁利の問いに頷くも、ずっと偽り続けることなどできないだろうと真意を図る。

すると相手は困った顔をして口籠ってしまう。


「それならまた来てくれるかい?君の話は興味深いからね。」

「先輩…うん、またくるよ!」

彗はその様子を見て、安心したような表情をすると郁利へいままで通り生徒会室へ来てほしいと話をする。

彼がそう願うのは、他人では叶わない自分と対等に話をしてくれる惟一の人物が郁利しかいないからだろう。

相手はしばらく考えるも、彼の厚意に甘えてまた来ようと大きく頷いたのであった。

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