6話 相談

「はぁ…」

あの日以来、郁利は彗とどう接して良いか分からず1週間ほどが経過した。

利用していたと知られた以上、前のように接することはなかなか難しい。


「あれ、郁利どうしたの?」

彼が落ち込んだ様子で帰ろうとした時、突然後ろから声をかけられて思わず振り返る。

その声の主は幼なじみの結愛だった。

「結愛。」

「なんか元気ないね、何かあった?」

「実は…」

彼女は意気消沈した様子に気づいて訊ねると、相手はぽつりぽつりと砥狩の件のことを話し始めたのだ。


「そっか、でも悪い事したって分かってるならちゃんと謝らないとね。」

「うん。利用しようとしたんだから自業自得だし、でも会うのが怖くて…」

一緒に家路を辿りながら郁利の話に耳を傾けていた結愛が謝罪を進めるも、どうやら彼は前に踏み出せないようだった。


「利用してたとはいえ、せっかく仲良くなれたのにこのままでいいの?」

「それは…」

その様子を見かねた彼女は自分の方へ向かせれば、相手の目を真っ直ぐ見つめて問う。

すると、今まで彗と過ごした記憶が蘇ってきた郁利は一言 “ 嫌だ”と答えた。


「じゃあ謝ろう、生徒会長さん宇宙峰財閥の息子さんだけどいい人だと思うし!」

「え!?」

返答を聞いた結愛は安心したような表情をして明るく話をするも、彼はなぜか驚きを隠せないようだ。

一体どうしたのだろうか。


「あの宇宙峰財閥の息子さんだったなんて…」

「侑利、もしかして知らなかったの?」

どうやら彗が財閥の息子だったという事実を知らなかったらしい。

確かに生徒会長自身も自ら郁利に話していないのだが、構内ではそのことを知らない人間はほとんどいないのだ。

「それなら尚更ちゃんと謝らないと!結愛ありがとう。」

彼女にお礼を言い見えてきた自宅の方へ駆けてゆくと、明日相手に謝罪をすることを決意したのだった。



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