第29話 次なる野望

店長室でファッション雑誌を読みながらおせんべいをほおばっているカナだが、密かに次なる野望を胸に秘めていた。

2つ目の金庫が大金貨で溢れそうなのである。これを腐らせておくのはもったいない。この街は城壁に囲まれていて、入口は門番が守っている1箇所しかない。その入口すぐ前に3号店を出すのが、この街の最終完成形なのだ。しかしいかんせん建物が開いていなかったのだが、この度入口前の靴屋が閉店するとのことで、急いでそこを確保し、3号店を出店するのが、今一番大事な重要事項なのである。

早速靴屋を買い取りに行ったのだが、ダンジョン前の1号店からは端と端にある。さすがに乗り合い馬車で向かい、靴屋の主人と交渉、大金貨を渡し無事所有物となった。

しかし1号店とここまで遠いと売上金を貰いにいくのが大変面倒である。そこでカナはロボバイトに売上金を持ってきて貰うことにした。売上金の移動には危険が伴うので、3号店のロボットは対戦闘用のロボットにすることにした。これで強盗対策にもなる。

建築現場で働く人数を2倍に増やし、急ピッチで建設する。とにかくライバルを作らせないことが大事だ。

コンビニはあっという間に完成し、ロボットに1日で仕事を覚えさせる。

こうしてお金の力にモノをいわせて、3号店はあっさりオープンした。もちろん盛況だ。入れ替わりで門番がご飯を買いにくる。とりあえずお腹が減った人がコンビニに入ってくる。冒険に向かうパーティーが買い出しをしに来たりする。

これでこの街は制覇した気分になった。これ以上に強い3店舗はないだろう。

金庫が3つ目に増えていった。

「これであとはライバル店を押さえつければ問題はないわ」

逆にこれ以上どうしたらいいだろう。この街は制覇できた。でもそのあとは?

そんなことをぼーっと考えながら、カナは店長室でモンブランを食べていた。

新店舗もできて、すっかり疲れたカナは寝ようと思い、お茶を買おうとレジに向かっていると、ロボットの接客で信じられない光景を見た。預かったお金をエプロンにしまい込んでる光景だ。

(これってロボットの万引き…?)

全く思ってもみない事態だが、ロボットはほぼ人間に近い物体である。しないとは決して限らなかった。緊急でロボット屋に電話し、全ロボットにお金を盗む行為を消去することで事無きを得たが、非常に冷や冷やした。

もうヘトヘトだ。店長室の布団に包まり、泥のように眠るカナなのであった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る