第28話 記念パーティー
なんやかんやあったものの、とりあえずひと段落したミカマート店長のミカは、再び怠惰な就業に戻り、ダンジョンに行く約束も忘れ店長室でせんべいを食べていた。
そんな時、レジでミルクコーヒーを買った少年が店長室に向かってくるのが監視カメラから見て取れた。
「ほえ?」
「ミカ!」
訪問者は忍者ピピンだった。
「なったっすよ!」
ピピンは興奮気味だ。
「ほえあ?」
「ダンジョンでレベル100になったすよ!」
「おおー!!」
ピピンはほぼ毎日のようにダンジョンに足繫く通っていた。素直に喜ばしい事だ。
「それはめでたいわね、おめでとう!」
「へへ…」
ピピンは照れている。
そこからミカの思考がチクタク動き出した。そうだ!
「なら記念パーティーをしましょう!」
「パーティーすか」
「ピピンには色々とお世話になってるし、ミカマート2号店で盛大にパーティを明日しましょう!」
「い、いいんすか。なんか照れるっすねぇ」
「おいしい食べ物を無料で提供するわよ!」
こうして明日、ミカマート2号店で記念パーティーを執り行う事になった。
次の日。
昼にポンポンと色付きの煙が空を彩る。店の前には「忍者ピピンレベル到達100記念パーティー」と書かれた幕が飾ってある。
「食べ物、飲み物無料で~す!皆さんで祝いましょう!」
「ヤキトリ、チュウカマンムリョウデスヨ」
バイトのロボが次々と料理を持ってくる。見ていた野次馬たちは、とりあえず無料で料理が食べれるということでちらほらと近づいてくる。
「おめでとう」
「いやーガッツがあるな、おめでとう」
「ありがとうっす」
おでんを食べながらピピンが対応する。
お昼を過ぎた頃にはお客の数はピークを迎えていた。そこに一筋の影がすばやく現れた。
「レベル100にとうとう到達したのね」
「あ、あなたは!」
そこにいたのはいつぞやのハイエルフだった。焼き鳥を食べている。
「むしろそこからのモチベーション、目的が人生を左右するわ。精進することね」
そう言ったかと思うと、逆光で姿がおぼろげになり、気が付くといなくなっていた。
「そうなんすよね…これからの目的、それが悩みなんすよね…」
そういうとピピンは悲しげにうつむいた。
その後もパーティーは盛況の内に終わり、カナも1号店へと戻っていった。
ピピンも一緒についてきていた。
「カナ」
「ん?」
「自分考えたんすけど」
「どしたの?」
「自分、隣町のレベル150ダンジョンに挑む決意をしたっす」
「えええ!?」
突然の告白にカナは声をあげてしまった。記念パーティーのつもりが、お別れ会になってしまった。
「そう…寂しいけど、ピピンの決断なら応援するよ」
「またちょくちょくこっちに来るっすから!寂しくはないっすよ。でもカナのパーティーには参加できなくなって、それはすまんす」
そう言ってピピンは振り返り帰っていった。そうはいっても寂しくなり泣きそうになったが、ぐっとこらえピピンの背中をずっとずっと見つめていた。
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