AIの活用 古文書の記録と解読

 専門家ではないので。

 生成AIとか、チャット型だとか、いろいろあるみたいですけど、ともかく一般的なイメージでのAIでお話させていただきます。


 最近、私は磯田道史いそだみちふみ先生の新書にはまっております。

 文庫化されているものもありますが、文字も図表も大きくて読みやすい新書。時には古本屋や図書館で漁っております。


 磯田先生は「新聞を読むように」古文書の解読が早いという稀有けうな能力をお持ちの方です。

 ご自身、小学生時代から古文書に興味を持ち、中学の時にはもう我が家にあった古文書の解読もなされていたとか。すべて学を楽しく、努力のたまものです。


 古文書はピンキリです。


 歴史上有名な、それこそ織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、時代は下って、坂本龍馬、西郷隆盛、ビッグネームのそれなら高値で売買されます。

 古文書はそれだけではありません。

 文字を得てから日本人は特に記録が好きですし(中国の影響もあると思われますが)、歴史に名を残すような人以外も日記やメモのようなものを書きつけています。それが現代にまで伝われば、すべて古文書です。


 お金になるかならないかだけで見れば、一般人が書いたものなどなんの価値もないでしょう。誰が興味持ちます? そんなものにお金が出せます? しかし、古文書の価値はお金では代えられない。現代まで伝わっていること自体に価値あるものが多い。昔の人の日常に触れられるのがまたいい。


 磯田先生、並びに古文書の解読をなされる学者先生方はそれを熱弁されます。

 私は古文書の専門家ではありませんし解読も出来ませんが、どちらかといえば英雄的事績を残した歴史上の人物よりも、それとは関係なくもたくましく生きてきた、いわゆる庶民のほうに惹かれます。ですから、庶民の暮らし、庶民の苦労から、今の時代を生きるためのヒントを得るという考え方には非常にうなずくところなのです。


 庶民の暮らしが知れる一次資料として古文書は貴重なものです。


 ところが往々にして「お金にならない」ことで無造作に扱われ、代が変われば捨てられることもあります。このへんの悲哀は、アイデアメモは自分にとっては命にも代えがたい、どれほどお金を積まれても売れない、でも他人にとってはごみと同じ、作家のそれと同じと考えてもらえばわかりやすいですか。

 古文書があるようなおうちは代々続く旧家とか、蔵のある大きな家とかが多いんですけど、そんな家ほど、お金にならないようなものには無頓着だったりします。家宝の何それ、文化財にもなるようなもの、お金に代えたら数百万、数千万、それは大事にするけど、先祖の日記? 何それ、おいしいの? そんなところでしょうね。


 磯田道史先生の研究の一つに、過去の災害を古文書から読み解き、現代へ啓発するというものがあります。


 そのお仕事には深く感銘を受けました。


 地震、津波、大雨、土砂崩れ、噴火、高潮(台風)……。


 日本は災害大国です。

 およそ、天災と名のつくもので、日本が経験したことがないものなどないといっていいくらいに。


 現代はでも、それを忘れがち。

 克服したと勘違いしているともいえます。

 とんでもないことです。自然はいつでも人智を超えます。昨今の地球温暖化から「過去に類を見ない」ような災害がいくつも起こるようになりました。


 いえ、「過去に類を見ない」という言い方さえ全くの誤りです。


 災害を経験した名もなき庶民が「これは教訓として伝えなければいけない」との強い意志から残している古文書も多いのです。

 それをひも解けば、また地名の由来なども調べれば、その地域が何の災害に弱いか、過去何に遭っていたかも分かる。すなわち、今の災害は過去にあったことなのです。


 そんな貴重な記録が、お金にならないだけで捨てられていいのか。


 そこで、AIです!


 長々と前置きでしたが。


 すでにその試みはベンチャー企業や大学の研究室などで行われているようですが、既存のアプリであるような「写真に撮っただけでその花の名前が分かる」というように、「古文書を写真に撮るだけで解読できる」時代も来るはずです。


 デジタル写真ならば、かさばらない。

 クラウドサーバーに保管すればなお。


 それをスーパーコンピューターとも組み合わせれば、もしかしたら今まで埋もれていた古文書の中から大発見も!

 実際、今でも山奥の村の蔵から、あるいは地方の図書館に手を付けられないまま保管されている古文書から、歴史を変えるような大発見も多いのです。

 そうなればそれこそ紙屑が一千万クラスになるわけですけど、解析が早くなればそれも可能です。


 古文書そのものが後世に伝わるほうがいいに決まっています。

 実は紙が重ねられていたり、裏にも文字があったり。書き直されていることにこそ意味があることも。新発見は技術の発展と共に見つかることも多いのですから。

 それがでも、かなわないなら……。

 せめて、画像記録として残しておいてほしい。

 それをまたAIが高速で、磯田先生の「新聞を読むくらい」どころか、「速読以上で」解析することが出来れば、さらなる発見と、さらなる啓発もかなうでしょう。


 AIは急速に発達しすぎて負の側面が強調されがちですが、やはり正しく使えば暮らしをより良くさせることが出来るものであります。


 古文書などという過去の記録が、AIという未来の技術によって、現代によみがえる。

 夢のある話じゃないですか!!

 現実に、古文書には今の時代を生き抜くヒントも大いにある。


 お金には代えられない価値。


 古文書から知れる過去は、未来へとつながり、現代を救う。


 そのためにAIを活用。

 するためにも、AIは分析は出来ても集めることは決して出来ませんから、そこは人間の手で「価値のない価値」も残してほしいです。

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エッセイ @t-Arigatou

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