第12話 パーティー


「うむ、久しぶりに訪れたのう」


そんなわけで親父にダンジョン行こうよおねだりをしてから1時間弱。

準備を終えた俺と親父とアシュレイはダンジョン前に到着したのだった。

アフェリス?

もちろんアホ妹はお留守番だよ?


俺はいつもの服にいつもの木刀、アシュレイは派手派手な赤い服に赤い剣、親父は普段着で盾と剣を持っている。


そしてマークスはアフェリスの子守をしながら親父の残してった仕事をこなしている。

がんばれ。

マークス超がんばれ!


まあアフェリスの子守についてはおやつを渡してきたから大丈夫だろ。

おやつポイポイあげてりゃアフェリスを足止めするくらいは簡単だ。

損なうのは専ら俺が自分の金で買ったおやつだけ、という悲しい現実はあるが。


「父上も昔はダンジョンによく通っていたのですか?」

「そうだな。週3くらいは通っていたな。仕事が終わった後はダンジョンで汗を流すとよく眠れるのだ。」


仕事上がりのジムかよ。

適度に運動してサウナ行ったりしてスッキリするんだよね…ってそうじゃなくて。


「えーと、父上は何層くらいまで行ったことあるのですか?」

「儂は80層までしか行ったこと無い。妻に子供が出来たからな。ワッハッハ」

「わっはっは?」


つまり俺が出来たからダンジョン攻略はやめたって事か。ふむ。

ダンジョンでは低層は20層、中層は50層までで、それ以上は上層と呼ばれている。

上層に行ける冒険者を上級冒険者と呼び、ゲームでは上級、中級の冒険者をギルドでレンタルすることも出来た。当然上級冒険者はかなり高額だが。


「叔父上は上級冒険者だったのですね。凄いです!」

「む、姫は知らんのか?その時のパーティーメンバーが儂と妻と、それと姫の父と母だぞ。儂がタンクでな、王はその時は近接のアタッカーで、王妃は弓を使っておったな。儂の妻は回復役であってな…それは美しかったのだ。」

「へー」


突然親父のノロケが始まった。

まあそりゃ美人だっただろうよ。叔母ちゃんの妹なんだもんな。叔母ちゃんったら今でもすんげー美人でスタイルも言うことないし…


「成程。父上からはダンジョンについて聞いたことがありましたが…叔父上がそのメンバーだったのですね。」

「学園に通う前からの友だったからな。わしらの父上たちもずーっと仲は良かった。おぬしらも仲良しでうれしいわい」

「せやね」

「そうですね。私もカイトとは仲良くしていきたいです」


ちょびっと嬉しそうにクネクネする赤毛の幼女。

俺ももっと嬉しそうにすりゃいいんだろうけど相手はどう見てもガキンチョ。

もう少し成長してくんないとさすがに何とも思わないでしょ?


ああ、でも順当に行けばこいつはバインバインの美女に成長するのだ。

素晴らしいな。

むしろ今から積極的にツバ付けといた方がいいのではないか。


「よし、俺もアシュレイとは仲良くしたい。ケッコンすっかケッコン」

「な、ちょっと!」

「ガハハ!それはいいな!だが、男のカイトはアシュレイよりも強くならねばならん。そうではないか?」

「む…父上、仰る通りです。男が後ろに隠れて女の子を戦わせるのは僕はどうかと思います」

「うむ。それはそうだ。強い女戦士もいるが、やはり男が女に隠れるようではイカン!せめて隣で戦わねばな。カイトもその辺りの事を良く分かっているようで儂はうれしい。アシュレイを守ってやるのだぞ!ガッハッハ」

「ハイ!」

「バカ!もう…何を言っているのだお前は!」


ガッハッハと上機嫌な親父に照れてるアシュレイ。

そして親父を持ち上げて適当に誤魔化そうとする俺、という混沌のパーティーは何事もなくダンジョンを進む。

そしてついに、第一ミミズを発見した。


「はっけーん!カイト殺りますッ」

「応!」「がんばれ~」

「とうっ!ツリーアロー!」


悪即斬ならぬミミズ即射殺である。(字余り

まあ言うて一撃で射殺なんかできないんだけどね。

ツリーアローを一発撃ったらダッシュで距離を詰めて後は木刀を拘束されたミミズに向けて…


「ふん!どりゃ!おりゃりゃりゃ!」


ボコボコとぶん殴る。一撃で倒せないなら連撃で倒すまでよと容赦なくボコる。

連撃なんてかっこいいものではなく、ただポコポコ殴っているだけだと思うが。

ボコっているうちにミミズは消え、俺はレベルアップの光が光った。


「おおっ光った!」


よかった。

そういや初めて敵を倒すとレベルが0→1になって光るんだから、倒して光らなかったら誤魔化さなきゃならないところだったんだな。

すっかり忘れて適当にボコボコにしてたわ。


「うむ。おめでとう。」「おめでと!」

「あんがと!」

「ふむ、カイトは初めてのダンジョンなのに思い切りが良いな!素晴らしい。妻を思い出すわい」

「母上ですか?母上はどのような冒険者だったのでしょうか?」

「うむ。お前の母は回復魔法を得意としておったが、割と前に出るのが好きでな。お転婆ぶりに驚いたものだ。」

「へー。強かったんですかね?」

「前衛としての火力はもう一つだったがな…攻撃魔法も使えたし、回復魔法はものすごい効き目だった。儂の腸がはみ出た時なんかもみるみる治ったのだ。優れた回復役なのについつい前に出たがる癖があってのう…。あとは申し分なかったがのう。」

「ほうほう。治してもらっているうちに父上が惚れ込んだと」

「いやそれは…まあそういう事だ。ガッハッハ。それでステータスはどうだ?スキルは?」


そう言われてステータスを確認する。




カイト・リヒタール

リヒタール伯爵家 嫡男 8歳

Lv3

職業:


Lv3

HP 17

MP 33

STR   5     

AGI  8             

VIT   4          

INT  18          

DEX   9           

LUK  10 


ATK 16

MATK 19

DEF 6

MDEF 1


固有スキル

樹魔法Lv1


ギフト 

富国強兵



おお、ステータスがちょっと上がった。

ほんのちょっとだ。

誤差じゃないかこれ?って程度だ。うーむ。

ゲームで使ってたアシュレイは最終的に1万とか行ってた気がするんだけど…気のせいだろうか?


「固有スキルに樹魔法があります。それとギフトが…」

「ギフトを得たのか!何だ!」

「富国強兵とあります」

「富国強兵…なんだそれは??」

「私も初めて聞いたぞ。未知のギフトかも知れんな」


二人は知らないという。

俺は知ってるけどその詳細を言うのはどうか。

どこで調べたのかって話になるからなあ。めんどくさいな。


「まあ効果は不明ですが、少なくとも無いよりマシでしょう。そのうち良い鑑定士でも見つけて詳細を確認します。それよりもっと先に行っていいでしょうか?父上にタンクをしてもらってアシュレイと二人で撃ちまくれば2層以降も大丈夫だと思うのですが」

「ふむ…そうであるな。よし、ならばどんどん狩り進めよう」

「「おー!」


よっしゃよっしゃ。上手くいった。

勝手にレベル上げしてたのも誤魔化せたし、おまけにパワーレベリングにも付き合せられる。


正直パワーレベリングより地道な訓練のほうが好きだが、折角良い壁がいるのに使わないのももったいない。どうせ農業してもパパッと強くなんてならないだろうしな。


マークスがいれば危ないからとか言い出しそうだが、父上ならどうとでもなる。

モリモリ狩らせてもらおう!


「アシュレイ、どっちが先にレベル10になるか勝負だぞ!」

「ふん。私の炎魔法でトカゲどもを瞬殺してやろう」

「あ、そういやそうだな。木矢が燃えるから俺が撃った後で撃ってね。どうせ俺の矢じゃ死なないだろうし」

「おう…相変わらずお前は強気なのか弱気なのかわからんなあ」



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