第21話  【閑話】ある男の死



事件を幾ら調査しても何も出てこない。


神隠しにあった29名の手がかりは幾ら探しても出てこない。


そんな中で黒木の死はセンセーショナルだった。


29名全員を呪い死んだ人間。


最初は黒木家に批判が多く来たが、親が泣きながら反論。


私を含み、マスコミが調べたところ、とんでもない数の虐めが発覚。


黒木は『完全に被害者』という話となった。


29名が行方不明のまま、黒木の家族は虐めの事実を元に被害届を出した。


29名の同級生の親や教師相手に民事と刑事両方で訴えを起こした。


今現在も泥沼の裁判を繰り広げている。


西園寺知事は再選ならず、それ処か息子が虐めの中心メンバーであり、その相手が自殺した事から、地元には住んで居られず隠れるように家を手放し何処かに引っ越していった。


金城グループは名前こそ残った物の事実上グループには『金城』の苗字を持つ者は居ない、近々会社名からも金城の名前は無くなるらしい。金城 満の父である総帥の孝文はその全て手放し僅かな財産を持ち引退した。


九条電機はネットで叩かれ、今現在は経営者の入れ替えが行われた。

その中でやはり、九条の苗字を持つ者は経営陣の中には居ない。


近衛の経営する会社は倒産した。


その他のクラスの人間もネット民によって特定されその家族は逃げるように引っ越していった。


ただの自殺だったら此処迄の事にならなかっただろう。


だが、29名の行方不明…その驚きの現実がよりこの事件の興味を引いた。


29名の行方不明者は恐らく『見つからない方が良い』


もし、まだ生きていて、見つかったのなら…そこには地獄しかない。


黒木が死んで1年がたった。


だが今でも、この事件は皆が興味深く追い続ける。


私は…これから死のうと思う。


私は誠雲学園の校長をしていた。


美しい妻に可愛らしい娘と共に暮らしていて、大きな家に住んで今迄は成功者だった。


だが、それはもう終わりだ。


校長を解任され、その後に面接に行ったが…何処も採用などされなかった。


妻には離婚して旧姓に戻って貰った。


「財布の中は400円か、最後にビールでも買うか」


私はビールを飲んでからロープに首を通した。


もう疲れた…黒木悪かったな…

私は椅子を蹴った。


これでようやく楽になれる…






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