第11話 【閑話】黒木の自殺と29名消失
ダンッ、ドゴッ
校舎の外から大きな音が聞こえてきた。
「きゃぁぁぁぁー―――――っ」
女生徒の悲鳴もほぼ同時に聞こえた。
私事、緑川はその声に驚き校舎の外に出た。
私がそこに駆けつけた時に見たのは、生徒の死体だった。
見た瞬間から解る。
『死んでいる』
遠目に見ても…死んでいるのは解る。
頭部が潰れてピンクの物体がはみ出ていた。
「皆ぁぁぁぁー――そこから離れろ、見るんじゃないー-っ」
すぐに私は傍に居た用務員の梶原に保全を頼み、スマホで警察に連絡を入れ職員室に走った。
この学園は歩いて5分もしない所に警察署がある。
すぐに警察も来るだろう。
問題はわが校から自殺者が出た事だ。
◆◆◆
「だから、私はちゃんと調査しろと言ったんだ」
校長がキレているが、今はそんな場合じゃないだろう。
これからすぐに警察がこちらに事情を聴きに来る。
もう、私は…終わりだ。
死んだ人間は、私のクラスの生徒、黒木聖夜だ、背格好から解る。
彼はきっと恨んでいるから『遺書』を残している筈だ。
校長も教頭も主任も職員全員が青い顔になっている。
この学校で彼の虐めに加担していない人間は居ない。
虐めの主犯は 金城 満…金城グループの総裁の息子だ。
この学園も多大な寄付を貰っていたので庇わなくてはならなかった。
しかも、黒木の両親も、妙に納得してしまったから、その虐めはどんどん酷くなっていった。
私は担任だから、少しは心が痛んでいた。
だが『黒木には何をしても良い』その風潮がこの学園に広がり、何もできなかった。
流石に『自殺』こうなってしまったら…大変な事になるだろう。
職員室でのこの僅かな間の会議では話は何も進まなかった。
◆◆◆
「少し、生徒に話を聞いて良いですか?」
職員室に警官が来た。
「それは困ります」
校長は断ろうとしたが…
「死人が出ていまして『遺書』までありました、流石に何も事情を聴かない訳にはこちらもいかないんですよ」
散々、揉めた挙句、担任の私が付き添い、1時間という時間制限で校長は許可を出した。
『気が重い』
この学園には虐めの証拠が山ほどある。
彫刻でいたずら書きされた机、中はゴミだらけ。
下駄箱も同じだ。
幾ら否定をしても、それと遺書…もう逃げられない。
良く自殺をする人間も居るが、怖気づいて学校以外で行う。
それなら、言い逃れは出来る。
学校で行った場合…『言い逃れ』は難しい。
理不尽かも知れないが、管理責任を取らされるし、自殺場所である以上警察はずけずけと入ってくる。
生徒はクラスメイトはなんて言うだろうか?
嘘をつけばつくほど首を絞める…だが金城が睨むなか、そう簡単に裏切るとは思えない。
私は溜息をつくと教室の扉を開いた。
「誰も居ないようですが…」
可笑しい、今の時間は体育や移動教室の時間ではない。
本来なら、教室に居ないと可笑しい…
だが、可笑しな事に…誰も教室には居なかった。
「この時間はこの教室に居る筈なのに…」
その後、教師全員と来ていた警官数名により学園を隈なく探したが、黒木を除く29名、誰も見つけることが出来なかった。
後に都市伝説になった生徒消失事件のこれが始まりだった。
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