第9話 待遇




本来はあの後、歓迎会を兼ねた食事会が用意されて居たらしいが、急遽時間を遅らせる事になった。


俺の事について異世界人に伝えるかどうか協議をするらしい。


『良かった』


これでもう、俺が聖夜だと思う人間は居ないだろう。


これから先、俺はどうすれば良いのだろうか?


彼奴らと別の人生を歩めるなら、それで良い。


そう思っていたが、いざそれが叶うとなると『何をして良いか』迷ってしまう。


さて、どうするかな?


今の俺はこの世界での生活基盤が無い。


どうするかな…自由と言うが、よく見るライトノベルだと何をするにも仲間が必要だ。


『クラスメイト』死んでも嫌だ。


虐めに会う前なら、真理だろうと静香だろうと祥子だろうときっと仲間になれば嬉しく感じたろう。


要や守、満のパーティに誘われたら『勇者パーティ』だと喜んだ。


勿論、他のクラスメイトでも同じだ。


だが、今の俺には一律クズにしか思えない。


『見て見ぬふりをした奴も同罪』


『一緒になって攻撃してきた奴は更に悪い』


只の友人にすらなりたくないのに、背中を預けたり共に長い間過ごすのは無理だ。


多分、俺にとって一番最初に考えないといけないのが『仲間』だな。


◆◆◆


トントン、ノックの音が聞こえる。


ドアを開けるとそこには、先程の王様の様な人物とは別に貴族風の男性、そしてマリアン王女が居た。


「先程は失礼した、儂はこの国の王、ハインリッヒ4世と申します、今お時間は宜しいでしょうか?」


「別に構いません」


「私は宰相のマルローと申します、今回のお話は宮廷だけの話ではなく国単位の話になりそうなので同席させて頂きます」


普通に考えるならこんな重鎮とこんな話、普通はしないよな。


だが、伝説に残る勇者だからこそ、対応に困るのだろう。


他の人間はこれからなのに対して、俺はもう『功績』がある。


俺の手柄なのでは無いが、魔王との戦いを終わらせた勇者なのだから。


「それで、俺の待遇はどうなるのでしょうか?」


「その事についてこれから話をしようかと…まずはこちらの考えをお聞きください」


1. 金貨800枚(約8億円)を報奨金として払う。

2. 何時でも伯爵の地位を欲しい時に授与

3. ジョブについては『英雄』という事にするが関係各所には『勇者』であることを伝える(領主、ギルマス相当)なお、勇者としての公表については望めば即時行う

4. 領地については当国、聖教国、帝国で話し合い、相応の物を用意、移り住むまでの間は代官を派遣しその収入は積み立てる

5. その他、王や貴族、教会に何時でも助力を求める事が出来る


こんな内容だった。


「凄く、好待遇だと思うのですが、良いのですか」


「構わないですよ…貴方は世界を救った功労者、本当なら全てを与えても良いのですが、貴方はまだ若い、いきなり渡してしまったら、権力、領地経営などで自由に生きられないでしょう…そこで欲しくなったら与える、そういうスタンスを考えたのです」


何故か、普通の人間の方が女神より優秀に思えるのは気のせいだろうか?


「ご配慮ありがとうございます、早速ですが一つお願いがあります」


「お願いですか?」


「はい」


俺は仲間探しで、考えていたことがあり、その要望を伝えた。







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