5・反撃

 梨沙子の知人の到着予定が、刻々と近づいていた。高坂サービスエリアが、待ち合わせの場所だ。

 途中、関越自動車道内ではスピードを極端に遅くしたり早めたりして、堤の尾行を警戒した。それらしい車は発見できなかったし、待ち合わせの場所も言葉にしていない。

 先回りされる危険は少ないはずだった。

 それでも2人の警戒心は張り詰めたままだ。

 問題のジャーナリストは女関係に問題はあるが、時間厳守は貫いているという。

 危険度が高い紛争地取材のおりに、日本人の感覚で時間を守ったことでテロを回避できた経験があるらしい。それは偶然に過ぎないだろうし、常に幸運を呼び込む保証もないことも分かっている。それでも縁起を担ぐスリル中毒にとっては、重要なジンクスなのだ――。

 梨沙子はそう語った。

 だが梨沙子自身が、その話を眉唾だと思っているようだった。浮ついた女たちを引きつける作り事だと疑っている。

 それでもなぜか、時間を守ることだけは信じていた。

 左右に大きく広がったサービスエリアの建物には、トイレ以外にもフードコートや土産物の売店があるらしい。その前の広いレンガ道には色とりどり屋台が並び、休憩に立ち寄った観光客たちが楽しげにくつろいでいる。

 柚は建物の右端近くの、全体が見渡せる場所に車を停めていた。

 運転席の柚が改めて問いかける。

「でも……リサの知り合いを関わらせて、本当にいいの? あんなに危険な奴らなのに……。今はまだ脅しだけですんでるけど、本気になったら人殺しだってためらわないよ?」

 高速に乗ってからは無言だった柚は、ずっとそのことを考えていたようだ。

 梨沙子は外から見えにくいように、後部座席で横になっていた。

 だが不安は同じらしい。返事に力はない。

「命の危険があることはしつこいぐらい説明した。それでも詳しい話を聞きたい、力になりたい――ってさ。ジャーナリストの習性らしいわ」

「ホントに分かってるなら仕方ないけど……」

「とはいえ、大手の仕事にあぶれてネットメディアに細々としがみついてる半端者だからね。売れるネタがなくて困ってたところだって喜んでた。戦場にも行きにくいご時世だから、危険でも報酬が高い事件を探していたんだって。その筋じゃ悪名高い、無謀な一発屋なんだ」

 柚の不安は大きくなるばかりだ。

「それって……やっぱり信用できなさそうなんだけど……」

「あたしだって、できるなら頼りたくない。それでもあたしたちには、力がある協力者が必要。ネット民やマスコミを巻き込んで先に炎上させちゃえば、比嘉だって簡単には手が出せないはずだから」

「だけど……他人を巻き込むのはやっぱりまずいんじゃ……」

「そりゃ、やりたくない……。特別思い入れがある人じゃないけど、あたしが原因で痛い目を見たら……それどころか、命だって奪われかねない。もし比嘉に殺されたりしたら、あたし、一生立ち直れないかもしれない」

「でしょう?」

 梨沙子の返事にも力はない。

「逆にうまくいって教団から逃げられても、死ぬまで付きまとわれるかもしれないし。その方が、あたしには辛いかな。仕事にも女にも、しつこい奴だっていう噂しか聞いたことないから……」

「そこまでして……?」

「追い詰められてるんだもの……。それぐらいの覚悟がなければ、反撃なんかできない。初めから無謀な抵抗だったんだし……」

「それはそうだけど……」

「それに、ユズにだって協力者はいる。教祖も時生も超能力を持ってるんだし、どんなに隠しても探り出される危険は防げない。同じことでしょう?」

 柚の答えは変わらない。

「わたしは、充分に気をつけているから……」

「比嘉や堤は、怖くても普通の人間。奴らになら隠し通せるかもしれない。でも、教団は普通じゃない。超能力が絡んだら安心はできない。だから急がなくちゃならないの」

「でも、焦って他人を巻き込むのはやっぱりイヤだな……」

「イヤでも、今は時間が勝負。追っ手は撒けたみたいだけど、迫ってきてるのは確実なんだから。向こうが次の手を打ってくる前に、炎上させちゃわないと。SNSとかで拡散するにしても、あたしたちだけじゃ効果的な方法が分からない。専門家を頼るしかないじゃない」

「だけどさっきの電話、ハッキングとかされてない……? ホームセンターだって簡単に侵入されちゃうぐらいだよ」

「そのためにプリペイドSIMを契約してもらったんじゃない。それで安心――ってわけじゃないけれど、今はこれ以上の対策はムリ。もしも時生に情報が漏れているなら、あいつには別の能力もあるかもって証拠になる」

「でも、そしたらそのジャーナリストさんは……?」

「危機に陥る。比嘉が殺しに行くと思う」

 あまりにあっさりとした返事に、柚が驚く。

「いいの⁉ 死んじゃうんだよ!」 

「それもちゃんと話した。了解済みだから……」

「だけど――」

 梨沙子が反論を封じる。

「ユズだって死にたいんでしょう? だからこうして手伝ってくれてるんでしょう?」

「あたしはそうだけど、他の人は――」

「破滅願望って、あるんだよね……。あの人の理由はユズとは違うけど。危険が大好きで、危ない事件ほどお金も稼げる……そういう人。でもお金が欲しいだけなら、安全な仕事は他にもある。それでも危機に惹きつけられるのは、お金よりスリルを求めているんだと思う。普段は死んだような目をしてる人だし、退屈してるんでしょう。だからあたしが持ち込む話は、無視できない。元々覚悟ができてる人だから」

 柚は梨沙子の真意を理解した。

「それって、教団の能力を調べるための捨て駒にしてもいいってこと⁉」

「捨て駒だなんて……。藁にもすがりたいのは本音。本当にネットを炎上させてくれるって頼れるから、連絡したんだし。でも、時生はあたしたちの作戦の先を行ってくるかもしれない。どんなに慎重に計画したって、能力を隠されてたら勝負にならない」

「だったら余計に――」

「だから、急ぐの。でも、協力者は誰でもいいってわけじゃない。利益も危険も全部分かった上で、納得してもらったのよ。失敗の可能性も計算の上。たとえ失敗しても彼は恨みごとは言わないだろうし、あたしたちにも得るものはあるかもしれない」

「その彼って……命も捨てられるのね。リサのため?」

「それほど深い関係じゃない。退屈に耐えられないだけだと思うよ」

「どういう知り合いなの?」

「ナイショ。あたしにだって、隠しておきたいことはあるのよ。若気の至り――ってことにしておいて」

 柚はいくぶんか羨ましそうにつぶやく。

「リサって教祖のお気に入りだったから、外出も多かったものね……」

「柚だって外の世界を知ってるでしょうに」

 柚がうつむく。

「教団よりも生きづらい場所だった……。どんなに頑張っても馴染めなかった。わたし、普通っていうことが理解できないの。心が壊れてるんじゃないか――っていう不安に、いつも付きまとわれていた。どうしてこんな人間になっちゃったんだろうな……」

 と、スマホにコールが入る。梨沙子は一瞬ためらったが、息を整えて電話に出る。

「来てくれたの?」

 スマホからかすかにもれる男の声は、楽しんでいるようだ。

『ああ、儲け話を見逃す余裕はない』

「じゃあ、トイレの個室に入って。このまま電話で説明するから、黙って聞いて欲しいの」

『顔も合わせないってか? だったら、こんなとこまで出張って来させる必要ないじゃないか』

「データも渡すって言ったでしょう?」

『寂しいが、仕方ないな。お前が言うほど危険なお宝なら、用心に越したことはない。大金が入った時には東京湾に沈んでた――なんてことになったら、ご先祖さまにボコられちまうからな』

「軽口叩いていられるのも、今のうちよ。データを見たら、その意味が分かるから」

『今、車を止めた。黒のスバルだ。じゃあ、トイレに入る』

 梨沙子が顔を上げて窓の外を見る。

 20メートルほど先に止まった古ぼけたSUVから男が降りてくる。

 歳は30ほどで、いかにも遊び人といった風情だ。片耳に目立つブルートゥースヘッドセットをつけている。それで通話を聞いているのだ。

「見えた。振り返らないで!」

『いよいよ〝ミッション・インポッシブル〟だな』

 そう言いながらも、男の足並みは乱れない。口調は頼りないが、危険度の高さを承知した上で警戒し、しかも警戒を悟られないだけの注意を払っている。

 監視されていることを前提にした動きだ。

 男はトイレに向かう。

「建物の右端に円形のベンチがあるでしょう? 木を囲むように配置されてるやつ。その後ろの柵の奥の植え込みにUSBスティックを隠しておくから。あたしたちはUSBを回収したのを確認したらすぐ立ち去る。中の写真データを使って、一気にネットを炎上させてね」

 男がトイレに入っていく。

『顔を見るのは、敵を倒してから……か。じゃあ、詳しい話を聞かせてもらおうか』

 梨沙子は、教団や比嘉トレーディングの内実を含めて詳細を説明した。

 その間に柚は、車を出て指定のベンチに向かう。周囲を警戒しながら座り、人がまばらになった時を見計らって植込みにUSBスティックを押し込んだ。

 柚が運転席に戻っても、梨沙子の話はさらに10分以上続いた。

 それだけ濃密で危険な内容だったのだ。

 男は黙って聞いていたが、話が終わると言った。

『もうトイレ、出ていいか?』

「あたしが警戒する理由が分かったでしょう?」

『それは最初から察していたさ。俺みたいな半端者を頼るしかないんだからな。予想よりはるかに大物だが、その分燃える。金の匂いもする。いったん火が着いたら、大手からの取材申し込みも殺到するだろう。堂々、最前線に復帰だ』

「せいぜい頑張ってね」

『だが、君のお友達の方はどうなんだ? 仲間がいるんだろう? そっちも修羅場を知っているのか? 俺なら自分の始末はつけられるが、素人が喰らい付いていい相手じゃない。分かってるのか?』

「それは……」

 男の話は、やはりスピーカーからもれていた。

 柚が言った。

「それはわたしの問題。きっと大丈夫だから、気にしないで」

 その答えも、男に聞こえていたようだ。

『お友達か? 了解したよ。俺は俺の身だけを心配する』

「終わったら、お礼はするから」

『一晩付き合ってくれるのか?』

「それはもう、ごめん」

『命を賭けさせて、それか?』

「あんたの目当てはお金でしょう?」

 男の返事から薄笑いが消える。

『退治できるものなら、消した方がいい連中のようだからな。せいぜい、生き延びて見せるさ。じゃあ、またな』

「ありがとう」

 通話が切られ、トイレを出た男が植え込みを探る。USBスティックを見つけたようで、振り返りもしないで軽く手を挙げた。

 頭を上げて男を確認していた梨沙子がつぶやく。

「カッコつけなんだから……」

「でも、案外頼りになりそう……」

「危険の扱いには慣れてる人だっていったでしょう? ここまできたら、任せるしかないしね。さあ、あたしたちは姿を消さなくちゃ。どこかに身を隠して、あいつのお手並みを拝見――」

 梨沙子は言葉を最後まで続けられなかった。

 その場を立ち去ろうとした男が、突然胸を押さえて腰を折ったのだ。

 柚が身を乗り出す。 

「なに⁉ どうしたの」

 男が前のめりに倒れる。遠目でも、口から泡を吹いて痙攣しているのが分かった。

 それに気づいた通行人が、パラパラと集まってくる。人だかりが次第に増えていく。

 梨沙子が両手で顔を覆った。

「やだ……奴らだ……時生の仕業だ……」

「でも……何をしたの……⁉」

「分かんない……けど……もう、バレちゃった……」

 柚があたりを見回す。

「堤もいるの⁉」

 倒れた男を凝視する梨沙子は、動けない。

「これ……憑依なんかじゃない……」

「そうなの⁉」

「心臓発作みたい……憑依したって、病気にはさせられない」

「じゃあ、どうして⁉」

「きっと、呪い……」

「何よ、それ⁉」

「呪って殺したんだ……」

「そんなことまでできるの⁉」

「時生はたぶん、呪力を隠していたんだ……」

 と、群衆から黒スーツの男が離れた。

 堤だった。

 堤はまっすぐに梨沙子たちを見つめ、片手を上げた。そこには、柚が隠したUSBスティックが握られていた。

 同時に、梨沙子のスマホが鳴る。

 2人は同時に身を震わせた。

 梨沙子がスマホの表示を見る。

「時生の番号だ……」

 柚が叫ぶ。

「出ないで! 怖い!」

 梨沙子が息を整える。その目に、気迫が戻った。

「そんなわけにいかない……戦うって決めたんだから……」

 そして、応答する。

 かすかな時生の声が流れた。

『これで梨沙子の切り札はなくなったね。あとの障害は、柚さんのお仲間だけだ。さあ、わたしを彼らの元に案内しなさい。データさえ回収できれば、殺しはしないから』

 梨沙子は通話を切って叫んだ。

「逃げるわよ!」

 柚がエンジンを吹かして急発進する。思わず叫ぶ。

「怖い!」

 タイヤが鳴る。反射的に運転はしていたが、体がかすかに震えている。

 堤は、その車にスマホを向けていた。

 時生に中継しているのだ。

 今ここで、2人とも呪い殺されてもおかしくない。高速道路上なら、衝突事故も簡単に演出できる。

 梨沙子は苛立ちを隠せない。

「あたしだって怖い! でも、だったらここで死ぬ⁉ ここで殺された方がいい⁉ あんなの見せられて、死にたくなった⁉ ユズは元から死にたがりだもんね! でも、あたしはイヤ! 絶対逃げてやる! 時生になんか負けないから!」

 その苛立ちは、梨沙子自身の思慮の浅さと無力さに向けられていたようだった。

 目の前で人が死んだ。

 時生に殺されたことは、間違いないのだ。

 梨沙子が巻き込まなければ、消えずにいられた命だ。本人が覚悟していたとはいえ、あまりに急激で衝撃的な展開だ。

 肩をすくめて無視できるような事態ではない。

 パーキングを出た車が、本線に合流する。

 柚は逆に、わずかに落ち着きを取り戻していた。

「あの男の人……死んだって決まったわけじゃないよね……」

「ムリ……きっと、もう死んでる……」

「そんな……」

 梨沙子がうめく。

「警告はしたんだから……すごく危ないって……何度も何度も言ったんだから……」

 柚が慰めるように言った。

「でもきっと、警察が……」

「警察が来たって、何も気づかない。たぶん、心臓発作にしか見えない。時生の能力なんだから、証拠なんか残すはずがない……」

「平気……なの?」

 梨沙子が声を荒げる。

「平気なはずないじゃない! 目の前で殺されたんだよ! あたしが殺したんだよ! 怖いに決まってる! でも、全部分かってて始めたことよね! 助けてくれる人だって危険だって分かってるよね! 後戻りしたって、何も変わらない。ここで降参したらユズはきっともっとひどい目に合う。協力者のことを全部話すまで、拷問される……いいえ、もっとひどい超能力で、無理矢理喋らされるかもしれない。時生は比嘉と一心同体。教団と比嘉の会社を守るためなら、みんな殺すかもしれない!」

「そんなのイヤ!」

「イヤだからやるの! それが時生なの!」

「イヤよ……」

「だから戦うしかない! 逃げ込める場所なんてないのよ!」

「でも……戦うって、どうやって⁉ まだ頼りにできる人がいるの⁉」

「いたところで、また殺される。そんなのは、もうごめんよ」

「じゃあ、どうやって……」

 梨沙子は息を整えて、わずかに落ち着きを取り戻す。

「プランB……いえ、もうプランZかも」

「なによ、それ?」

「やぶれかぶれの最終手段。どこに逃げたって逃げ切れやしない。時生はあたしが知らない能力を持ってる。ユズの仲間を守るためにも、あたしたち2人で片付けるしかない。作戦は立てたんだし。あるのはおもちゃみたいな道具ばかりだけど……」

「やっぱり……やるんだね?」

「できることは、もうそれだけ。直接対決するしかない! なんとしてもみんなが生き延びる道を拓くから!」


       ※


 教祖がうんざりしたようにつぶやく。

「やっぱり最後まで逆らう気なのね……」

 時生は教祖の横で、ソファーにもたれていた。

 眠っている。度重なる憑依で疲れ切っていることは明らかだ。

 比嘉がため息を漏らす。

「まさか、本当に碓氷湖まで引き摺り出されることになるとはな……」

「こんなにしぶといとは思いませんでした」

「わざわざ目の前で人を殺して見せたのに、な。長谷川というのはそんな女だったのか?」

「とんでもない。いつも周りに気を遣ってビクビクしているような、気が弱い子ですよ」

「だったら、どうして今度に限って?」

 教祖の答えも投げやりだ。

「分かりませんよ、私にだって」

「そもそも、なぜそんな女が反抗を企てた?」

「死にたい――と言っていたことは、梨沙子から聞いたことがあります。どうして真逆な行動に出るのか、理解できません」

「今は協力者を守ろうと必死なんだろうがな……」

 教祖は言った。

「それもこれも、梨沙子の不始末です。時間まで指定してきたんだから、逃げることはないでしょう。私が直接出向いて説得します」

「できるのか?」

「責任は取ります」

「何人か手下をつけてやろう。荒事をためらわない連中だから、お前が指示すれば強硬手段にも使える。なんとしても協力者の正体を吐かせろ」

「分かっています」

「だが――怖くはないのか?」

「何が?」

「出るんだろう?」

「出る?」

「化け物、みたいなもの」

「悪霊、ですか?」

「時生は恐れている。行きたくないと言っていたぞ」

「テレビで見た限りでは、私は何も感じませんでしたけど」

「事実なら、お前の霊感と反発しないのか?」

「確かに不気味ではあるけど……。行ってみなければ何が起きるか分かりませんから」そして、肩をすくめる。「あなたも行きたくないのでしょう?」

「俺は幽霊など信じない。信じているのは、自分の目で確かめた予知や憑依だけだ。あそこに近づくのはまずい理由は他にある」

「そうやって割り切れる神経、私には理解できませんけど」

「堤に任せてもいいんだぞ」

「梨沙子は娘ですから。何より、教団の未来を支える子供を産む身。万が一にも不始末があったら全てが瓦解します。あなたも時生も行けないのなら、私が行くしかないじゃないですか」

「ああ、済まないな。こっちは準備を整えなければならないことも多い。協力者の身元が割れれば、すぐに忙しくなる。相手の身元によっては処理の方法が変わるし、最悪の場合、家族や知り合いまで一掃しなければならないかもしれない。だからといって無駄な時間は掛けられない」

「分かってます。全ては教団を守るためですから。あなたにとっては、会社の方が大事でしょうけど」

「その程度の問題ではない。あのデータが流出すれば、日本全土が震撼する。政界も経済界もパニックだ。当然、俺たちはあっさり処分される」

「それも承知しています。何年もあなたの妻を続けているんですから」

「尻拭いをさせて済まなかった。不覚にも、小娘に振り回されてしまったからな。ここで必ず決着をつけてくれ」

「当然です。予知ができなかった私の手落でもありますから」

「お前はすでに充分働いてくれている。手落ちがあったのは俺の方だ。時生もしばらくすれば回復するだろう。堤が現場で合流すれば、また憑依も使える。現場はお前に任せよう」

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