弱者の眼差し、強者の選択 3
アルマたちが
「あいつが
「ってことはあいつを潰せば鎌鼬の増援は消えるんだな?」
「ならさっさとやっちゃおう!」
アルマは敵対する彼らの奥に薄く光るドーム状の膜を発見し、今一度短剣を強く握りしめた。
――まだ持ってるか……。でも本来の結界より色が薄くなってる気がする――
「向こうの結界もそろそろ限界が近いようだから、急いで片を付ける」
「わかった」
「セラちゃん、ナディアちゃん待っててね」
アルマはイギルに目配せし、それを察したイギルは大隆牙を手に飛び上がり、鎌鼬目掛け、大地斬りを放つ。凄まじい勢いを以て、大地は鎌鼬目掛け地面を鋭く隆起させるが、敏捷性の高い鎌鼬はそれをするりと避ける。
「
しかし動く猶予が余りある平坦とは違い、地面を隆起させた状態では鎌鼬が抜けてくる道は限られてくる。そこを目掛けサリナの炎弾を撃ち込めば、ほぼ百パーセントに近い確率で炎弾を命中させることをできる。もちろん撃ち漏らした鎌鼬はアルマが腰に下げていた
恐らく鎌鼬の招集には飼育士の
飼育士の
「なっ!
サリナの炎弾の威力を目の前で見ていたイギルは、軽々と炎弾を受け止めてみせた
「あれは鱗か……?」
普通の
「食物連鎖の逆転か」
その
この村の
「二人で、あいつらを助けに行けるか?」
「アルは?」
「鱗の
「お前、一人でやるつもりなのか?」
「そんな!」
「わからないか? 上級を食らう魔物だ。上級以上の力を持ち合わせている可能性があるんだ。だからここでの最適解は一人が足止めをして、他は逃げるだ。サリナの魔法で結界周りの
「アルを一人でなんか置いていけないよ!」
「てめえだけかっこつけようとしてんじゃねえ!」
二人の激昂に対し、
凄まじいスピードで迫ってくる
「いけ! それであいつらが戦えるなら、助けに来てくれ」
その言葉に鱗の
「
二人と鱗の
しかしその貫手はアルマの手首を鱗の
「ぐっ――」
一瞬苦悶の声を漏らしたアルマは、右手に逆手で持った黒鋼のトレンチナイフを鱗の
「手ぇ放せよ」
【ギャァガッ】
それに気付いたとほぼ同時に後頭部に強い衝撃を感じ、右の視界が赤く染まった。殴打によって頭が切れたのか、血が流れたのだろう。その一瞬で力を抜いてしまったアルマは鱗の
「これしかないか」
そう言って咄嗟に立ち上がったアルマは右目にのみ魔力を集中させ、右目にだけ
生物と称されるもの全てが有する魔力は、その生物の動きと密接に関わっており、腕の上げ下げや歩行、殴打と行動を起こせば、必ず微弱でありながらも体内で魔力の増減が行われる。物質界で起きる明確な肉体の動きと、魔力界で起きる魔力の増減の双方を確実に捉えることが出来れば、それはある種の予測を超えた予知の様なことが理論上可能であった。しかしただでさえ一つの世界の情報すら捉えきれない人間の脳に、二つの視界の情報が送られると、酷い酔いと頭痛を引き起こす。
「ぐっ――」
痛みに声を漏らすアルマだが、手練れが二人いる以上、この双眼を会得しなければ、ここにいる者たちの明日はない。ただでさえ自分も行くはずであった無数の
この双眼を体得するか、鱗の
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