第8話

「白翼 あかねとしての活動終わりっ! 放送終わったーよっー! ベッドダーイブ! あんたの隣かくほー」


「よかった? そう。えへへ、楽しかったよ〜。まさか放送中に彼女のベッドに潜り込んで待機するとか言い出すとは思わなかったけどね。私じゃなかったら引いてるかもね。受け入れてくれると思った? 惚れた弱みってやつかねぇ。私を陥れるのが上手いようで、大変よろしいよ」


「ん〜? うん。私の家に泊まるのも久しぶりだよね。小さい頃以来かな。あの時はあんたまだおねしょしてたりしてさー。恋羽ちゃーんお漏らししちゃったーって言ってたのよねー。こらー照れ隠しにほっぺ触るなー。それならこっちも、耳元に息吹きかけてやるんだからー。ふぅーっ少しずつ吹いていくからねぇ。私の虜にしてやるんだから。上手いでしょー。まあ昔、あんたがいつも先に寝るから毎回やってたんだけどね」


「耳が敏感になったの私のせいだろって。確かに。私もせいかも。でもいいじゃん、これからもずっと私が開発したげるから。こんなんで満足してくれるなら安い──いやいや、私の吹きかけは高いですけどねぇ? あんたにしかしないんだから、値段なんてつけられないはずですけどねぇ」


「……お母さんもさ、私があんたに惚れてるの知ってて、どんなことしてるのかも気づいてて、気を回しててくれてたらしくてさ。私が放送中なのにあんたを部屋に誘導したのもぜーんぶわかっててやってたらしくてね……お母さんには勝てないねー」


「ん、私が白翼 あかねだってバレたからこうやって……想いを告げられたわけだし、感謝しなきゃねー。子はなかなか親に勝てないよ。勝つつもりなんてさらさらありませんけどね。この恩はもう一生頭あがらないよ。孫の顔が見たいだなんて言ってたの? まだまだ早いよねー」


「んふふ、んー。あんたの顔こんなに近いんだなって思ってね。見慣れてるはずなのに、ふたりでベッドにごろんってしてると新鮮でさ。笑えてきちゃうし……ドキドキするし、平静に見えるぅ? まだまだだなー。幼馴染理解力が足りないよー。そういえば白翼 あかねの声を聞いて私だってわかってなかったのよね、あんた」


「毎日聴いてるからわからなかった? すんごい傷つくんだけど。距離が近かったからってことよね。もう少し早めに距離取ってればもっともっと悩まずに済んだのかなー。色々回り道しちゃってさー」


「そしたら、こうはなってないかもって? 一度切れた縁をまた繋ぎ直すのは難しいかぁ……確かにそうなのかもねぇ。距離が近くても遠くても、見えなくなるものはあって……それでもこうやってあんたが一緒にいてくれるの嬉しいよ」


「ん? 白翼 あかねはどうしていくのか。ふむ。また通話したいぃ?」


「ふふ、だーめ。もう白翼 あかねとしてはもうあんたと話さないよ。あくまであんたの興味を惹くためのものだったし……それに最初は違ったけど、いまはちゃんとしたVとしてやっていきたいとも思ってるからさ。いまさらだけど、リスナーとの線引きはしないと。白翼 あかねはみんなものだから。誰のものにもならないのだよ。私のリスナーくんならよくわかるよね?」


「いくら残念がってもダメなんだから。その代わりさ、私が、白鳥 恋羽さんはあんたのもの。白翼 あかねはもうあげられないけどね、私と彼女は別人だからね。それに、あんたも私のものなんだから……それじゃ、ダメ、かな?」


「ドキドキする? 私もいまめっちゃ心臓ばくばくしてるんだから。いいよね、お互いさまだよ? ほら、胸触ってみる? こら、本当に手を伸ばさないの。ダメに決まってるでしょ。一緒に添い寝してるだけなんだからさ~。それに息遣いでわからない? ふっー……息が震えてるのわかるでしょ~。もう平静になろうとしてるけど、あんたといるだけでもういっぱいっぱいなんだよっ……? 告白してからさ、もっともっとあんたのこと好きになって言ってる気がする。私のことちゃんと見てくれるようになったからかな」


「あんたが私を一途に見てくれたら嬉しいし、私もあんたを一途に見るよ。こうやって近くにいて……ずっとね。あんたも努力して、私も努力してさ。よいしょっ」


「ほらほら、もっと寄っちゃうよ~。ふふ、これからは真剣に私のことを見てね……? ガチ恋勢くらいになってくれないと困るんだから。Vチューバーにだって、私はもうぜんっぜん嫉妬しちゃうんだからね? 昔からずっと一緒にいても、もっともっと私のこと知っていって、好きになってもらって、一生かけて私のことを見てもらうんだからっ!」


「白鳥 恋羽を、これからも、末永くよろしくね?」

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幼馴染の天使なVtuberは、あなたを振り向かせたい エルアインス @eruainsu

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