彼女は俺の天使だった。@白井瑛太
GWを明日に控えた日の放課後、藍沢望空の家に来ていた。
何やらお願いごとがあるらしい。
この頃にはさくらのことも沙織達のことも目に入らなくなっていた。
藍沢望空に本気で惚れてしまった。
しまったんだ。
彼女との言葉のキャッチボール。その一挙手一投足に心が奪われて仕方がない。
『ノンノって呼んで欲しい…な…?』
そう言われたのが三日前。
そして今は彼女の家。
これは間違いなくアレだろう。
だが俺からは告白しない。空気には流されない。恋愛は戦争だ。告白した側が不利になる。
しかし、この包まれたくなる衝動は何なんだ。俺の性癖は違ったはずだ。いや、今日こそは主導権を握ってやる。
あわよくばその先も。
「ハーブティーなんだけどいいかな?」
「あ、ああ、うん」
「ふふ。どうしたの?」
「いや、ノンノってエプロン似合うなって」
彼女は俺の天使だった。ふわりとした白のラグランのトップスにベージュのショーパン姿。そこに純白のエプロンがまるで初々しい新妻みたいな…
「新妻みたい…? 似合う…かな…?」
そう言って彼女は俺の心の中を言い当てる。まるでわかってるかのように言ってくるが、不思議とイヤじゃない。
でもくっそ照れる。悟られないようにと、自然とハーブティーが進んでしまう。
「ああ、うん…すごく…似合うよ」
「ふふ。それって花咲さんより可愛い?」
何故さくらが…?
ああ、これは最終確認なんだろう。
確かに俺はノンノにさくらのことを相談していた。彼女からすれば、とんだ鈍感クソ野郎に見えていただろうな。とっくにさくらは見限っていたのに伝わらなかったのか。
ノンノからすれば、告白なんて勇気のいることだろうし、もう一度言ってみるか。
「それこそ意識が…あれ? そ、そう、こんな風に…飛びそう…な…くらい…さくらよりノンノが可愛いよ…」
ああ、彼女の可愛さに当てられているのがわかる。意識が飛びそうなのがわかる。恋に落ちる、とはこのことだったのか。
「えへへ…大袈裟だなぁ。でも嬉しいかも」
そう言ってノンノは立ち上がり、微笑んでからその場でふわりと回った。
エプロンが遠心力で浮き上がり、細いのに肉付きの良い内太ももをチラチラと晒してくる。揺れる胸も平均より大きいし、お尻は小さいがパンと張っていて格好良かった。
エロい。
もちろんパンツなど見えないが、とにかくエロ可愛い。
おかげで意識が本当に飛びそうだ。
ああ、天使に出会うと…安らいだ気持ちで気を失ってしまうんだな…意識が真っ白に染まっていくくらい…
「ちょっと、はは…意識飛びそう…」
「もしかして緊張して眠れなかったり…とか?」
「あ、ああ、うん、実はそう…なんだ…」
「ハーブティーで、きっとリラックスしちゃったんだよ。んふふ」
確かに舞い上がっていたのは事実だ。あまり寝れなかったのも本当だ。でも俺が緊張するなんて…いや、ノンノの言う通りかもしれない。
何せこんな気持ち初めてのことなんだから…
「じゃ〜あ〜子守唄でも歌おうかなぁ〜ら、ら、ら、らりらり…? あれれ。早すぎぃ。もーえーちゃんはもう少し粘ったのにぃ。んふふ」
えーちゃんって俺のこと…だよな…嬉しいな…ママを思い出してしまう。
「えーちゃんって…ノンノ…嬉しい…よ…」
「んふ。やっぱりわたしって引きがつよつよなのかな〜? ♯引き強すぎて困るんですけど♯いや困らないんですけど〜ら、ら、ら〜ら、りら、るら〜えーちゃんお待たせぇ〜。ごめんね? ちょぉっとだけ我慢しててね〜? んふふ───」
ひき?
微かに残る意識の中、俺にはそんな風に聞こえた気がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます