絶対見つけ出してやる。@雨谷ゆり


 厄病神との関係が、やっと終わる。そう思っていた私に、最後のデート練習の内容が届いた。


 最後だし、最高の一番でデートして。


 そう言われて英治の為にと想像し、自分なりに思いっきり可愛いく仕上げる事にした。


 今日で終わりの家庭教師の男に確認を取った。


 120点だった。


 ベタベタに誉めてきた。


 興味なんてない家庭教師にそんな事確認させて、あいつは何がしたいんだろう。


 そんなに男の知り合いなんていないから褒められたことないし、悪い気はしないけど。


 それに、カラーリングまでさせられた。


 暗いからしてみたかったけど…確かに気分は明るくなる。英治が誉めてくれた髪だったけど、でも従うしかなかった。


 それに……陰鬱な私の象徴でもあった。


 でも、これなら鏡の中の私は花咲さくらに並べる。そう見える。こんな簡単なことで自信がつくのか。


 英治…気にいってくれるかな…


 そして今日で最終日で、あいつからやっと解放されて、なんて。


 そんな事が重なったからか、知らず知らずのうちに、気分は盛り上がってしまっていた。


 ニコニコしながら英治に早く見せたいな、なんて願ったせいか、最悪な叶い方をした。


 今日は英治の高校は始業式で、放課後こんなところには来ないのに。


 神様はちゃんと見ているのね。


 そんな現実逃避をしている私に、追い討ちが待っていた。



 雨谷さん。


 英治はそう言った。


 恋の目は、もう感じられなかった。


 それがわかった。


 中学校の時の雰囲気に戻っている姿を見て、初めて私を好きになってくれていたのだと気付かされた。


 好きなのは私だけじゃなかった。


 ちゃんと響いていたんだ。


 その事実に私は固まってしまい、取り返すつもりで、なんとか英治の為にしているんだなんて見当違いの言い訳をしてしまっていた。


 いつのまにか恋人繋ぎされていた事も気づかずに。


 緊張した時のクセで力いっぱい握りしめていた事にも気づかずに。



 英治は足早に立ち去った。


 英治を早く追いかけたい。


 追いついて謝りたい。


 そして全部話したい。



 平手打ちしてもなかなか離してくれない家庭教師だったけど、結婚式には呼んで。


 その英治の言葉で家庭教師は素早く手を離した。


 その時やっと私は男の事を誤解して理解していたのだと本当の意味で理解した。



───初めてをどうでもいい家庭教師に捧げ、根暗な自分を変えてくれたセックス、良かったでしょ?───



 英治の走り去ったあとに入ってきたこんなメールを最後に、あいつは消えていった。



 そもそもおまえが元カノに勝てないからって煽ってきたからじゃない!


 花咲さくらの可愛いさをチラつかせて!


 同じ学校、同じクラスだからって見ないように考えないようにしている心配事もチラつかせて!


 何通も! 何回も! 何度も! 毎日のように! 少しずつ! ちょっとずつ! 削るように! えぐるように!


 

 あんなものに縋るんじゃなかった。


 私…ただの馬鹿じゃない…



 あの厄病神…絶対見つけ出してやる。


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