第10話 妾(さゆりへ)


 いいざまじゃの。

 男なんて、どれも同じじゃ。

 頼りになぞ、ならんよ。平気で裏切る。

 ……遠い昔の、わらわの男もそうじゃった。妾を、化野あだしのの、されこうべにした男……。


 恋なぞ、するものではない。


 本当に頼りになるのは、突き抜けた自分のうつくしさだけ。

 それが、すべての拠り所になる。

 それによって、生きていける。


 わかったろう、さゆり。

 一歩、屋敷の外へ出れば、こうなる。

 わがしゅなかりせば、お前は、形を結ぶことさえできはせぬ。

 妾とお前が、初めて出逢うてから、それだけの時が、流れたのじゃよ。



 ……。

 大丈夫じゃ。

 お前がどんなに不実であったとしても、妾は、お前を見捨てたりはせぬ。

 骨のかけらを拾い集めて、再び、さゆりを造り上げよう。

 前のさゆりより、もっといっそう、うつくしく。


 そうやって、さゆりは、どんどん、どんどん、うつくしくなってきた。

 次のさゆりも、少しだけ、さゆりらしさを、残しておこう。

 それが、いつの日か、妾を裏切り、妾は、退屈せずにすむ。



 次は、何人の男を狂わすことができるかの。

 殺すことが、できるか、の。


 ふふふ。

 楽しみじゃ。







fin.

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あだし野のされこうべ せりもも @serimomo

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