第6話
「いいですか?絶対私の側を離れなでください。必ず皆さん助けますから」
優しく問いかけるとみんな覚悟を決めたのか、力ずよく頷いてくれた。
守る令嬢は5人。敵の数は不明。
(こんな事なら剣か銃を仕込んどくんだった)
私の武器は奇しくも、父様からプレゼントで貰ったナイフのみ。
まあ、途中で武器なんて補充すればいい。
「……行きますよ」
扉には外から施錠が掛けられ内側からは開かないようになっている。
どうするか?そんなの決まってる。内側からぶち破ればいい。
「せーーーの!!!」
ドカンッ!!!
思いっきり蹴破ると、その音に何事かと男共が集まってきた。その数3人。
扉を壊した時に埃が舞っていて、令嬢達はむせながら目を覆っている。
私は今のうちにと、やって来た男共の首を掻っ切って行った。
出来るだけ返り血を浴びない様にし、令嬢達の目に死体が映りこまないよう空き部屋に放り込むことも忘れない。その時間、約一分。
(バレずに動くのしんど!!)
私の正体を知られるにはいかない。
万が一バレたらアルフレードのせいにしようと思いつつ、急いで息を整え令嬢達の元へ。
幸いにも、まだ目が開かない様で必死に目を擦っていた。
ただ一人を除いては……
「……ローゼルさん、貴方……」
シャーリンにはバレてしまった様だが、今ここで説明している暇はない。
「すまん!!後で説明する!!」とだけ言って、素早く甲板へと上がった。
そこで、私の顔色は曇った。
何故なら、思ったより敵の数が多い。
8……いや、10。
令嬢5人を庇いながら相手にする人数じゃない。
(──ちっ!!アルフレードの奴!!帰ったら殺す!!)
無事に帰れたらだけど。
令嬢を背にナイフを格好良く握りしめても、相手からしたら負け犬の遠吠えにしか見えない。
その証拠に、ニヤニヤしていて危機感ってものがまるで無い。
だが、その舐め腐った態度はこちらからしたら好都合「この調子なら殺れる!!」と思ったのも束の間。一人の令嬢が私に抱きついてきた。
「やだやだやだ!!!怖い、死にたくない!!お願い助けて!!!」
「──ちょっ!!助ける!!助けるから、離せ!!」
慌てて引き離そうとしたが、全く離れない。
見かねたシャーリンも手伝ってくれたが離れなず、そうこうしているうちに男達に囲まれてしまった。
「随分とお転婆な令嬢だなぁ。こういう令嬢は一度痛い目見せなてやらんとなぁ」
「──くっ!!」
一人の男が私の頬にナイフの腹をペチッと当てながら言ってきた。
「あぁ~……そうだな。ご主人様お許しくださいって許しを乞うなら考えてやってもいいぞ?」
「がはははっ!!」と高々に笑いながら言いやがった。
絶対死んでもそんな事は言わない。命乞いする位なら潔く死ぬわ。
しかし、どうするか……
このままじゃ令嬢達の身が危ない。かと言ってこんなクソ野郎に頭を下げる気はさらっさらない。
(こんな事なら初めから私一人で遂行した方が余っ程楽だったわ!!)
そんな事を考えていると私の頬に当てていたナイフが私の胸元に下りて来て、少しずつ服を裂き始めた。
「さあ、どうする?このままだと、霰のない姿になっちゃいますよぉ!?」
周りの男共はその様子を舌なめずりをしながら気持ち悪い顔で見ていた。
……本当、虫唾が走る。
横ではシャーリンが私を心配しながらも恐怖に怯えている。
(殺るか!?殺ってもいいよな!?よし、殺ろう!!)
ここまできたら四の五の言ってられない。
令嬢達には酷な場面を見せてしまうが仕方ない。人を殺る場面なんてトラウマになるだろうな……
(すまん。文句は全てはあの竜騎士の団長に言ってくれ)
胸元を半分ぐらい裂かれた所で決断したが、それと同時に私達を大きな影が覆った。
「何だ!?」と上を見上げた瞬間、思わず息を飲んだ。
それは、大きな黒竜の影だった。
そして、その黒竜を従えているのはこの国で一人だけ。
タンッと格好良く降り立ったのは、竜騎士団団長アルフレード。
降り立ったのと同時に私の方を見るなり、バサッと団服を頭から被せてきた。
そして一言「すまん。遅くなった」と。
「本当にな!!」と言いたかったが、アルフレードのただならぬ殺気に言葉を飲んだ。
そこからはまあ、秒殺だった。
流石は団長の称号を持っているなと思えるほどの腕前だった。
特に私の服を裂いた男の顔は原型を留めないほどのボコボコにされていた。
全員潰した所で、ようやく他の竜騎士も到着し令嬢達は無事に保護された。
そして、アルフレードは殿下の婚約者候補であるシャーリンに手を差し出し一緒に黒竜に乗って王宮へ……
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