第50話 瓦礫多少女は拒まない。

KP  あなた達は、目を覚ます


KP  あなた達は白いシートの上に寝かされている。辺りにはサイレンが鳴り響

   き、救急車がせわしなく走っていることだろう。アニカや、薬井もけが人の治

   療をしているようだ。だが、彼らは生きている。この町は、燃えてなどいない


杉谷 「…これは……」


遠縁 「…守ったんだな…街を…ゴホ…」


皇  「みんな生きてる…良かった」


遠縁 「…後輩くん…君のおかげで今も生きてられるよ。まぁ、今はちぎれかけてる

   けど」


皇  「あー、大丈夫…じゃないよね。ちょっと怪我見せて」


皇  応急手当とかふれますか?


KP  無理ですね。まだ動ける体調ではないです。ただ救急車がいますので特に振

   らなくても問題はありません


遠縁 「今はゆっくりでええよ。救急車きてるし…って、講師そのお隣の子は?」


KP  また、もう一つ気づくことがある。杉谷さん、貴方の隣には朱里が寝てい

   る。隊服を着てはいるが、その腕や皮膚は、人間そのものだ


杉谷 「!…朱里……どういうことだ……」


皇  「…夢じゃなかったんだ」


遠縁 「奇跡起きたんですかね?」


杉谷 「そんな非科学的な…いや、もう科学とかじゃないな…そんなものとはかけ離

   れた数日間を過ごしたもんな…」


遠縁 「そうですね。凄まじい激闘な日々でしたね」


皇  「えーっとね、カクカクシカジカで神サマからのご褒美?みたいな」


遠縁 「はぇー・・よかったんか?後輩くんは?」


皇  「え、私?」


遠縁 「神様からのご褒美、自分にも使えたんじゃない?」


皇  「まぁ能力欲しかったけど、助けれる人がいるのにそっちを選ぶのはなん

   か……それにあのまま親子がお別れだなんて悲しすぎるよ」


遠縁 「いい後輩もったよ」


彼は皇の頭を撫で回してる


皇  「私もう子供じゃないよー!」


遠縁 「はははは」


杉谷 「(そんな二人を遠目に見つつ)……これからもっと強くならなきゃ……いつ

   か自分の手で……この子を守るために……もう二度と、あんな思いしないため

   に…」


杉谷 「(朱里の頭を静かになでる)それでも、よく頑張ったね…朱里……」


杉谷 「……家に帰ったら、おいしいもの、いっぱい食べような……っさて、僕も行

   かないと。今はゆっくり休むんだよ」


KP  さて、気が付けば空は明るくなり、太陽が昇っている。それは、あの太陽ではない本来の太陽だ。あなた達は、救い救われた。そんな結末を迎える


薬井 「…あ、だ、大丈夫ですか…?!今から病院行くので…」


遠縁 「大丈夫ですよー ちょっと内蔵ちぎれかけてるくらいなのでー」


KP  そんな風に、彼らはあなた達の元へと近づいてくるだろう。アニカも担架を

   もって近づいてくる


アニカ「…大丈夫?!良かった…怪我も酷かったから…」


遠縁 「んー大丈夫、みんな元気。あとほら、結婚の約束してるのに死ぬわけには

   ね?」


アニカ「…そ…それはそうだけど…」


皇  「え、二人ってそういう…」


遠縁 「んーそういう感じかな?」


アニカ「ああ…わ、私はもう行くから…」


彼女はそういうと顔を赤らめながら去っていく


遠縁 「あーいっちゃった」


遠縁 そういえば薬井先生からしたら初耳てか驚きではないだろうか?


薬井 「…ありがとうございます。まさか…あの子がそんなところまで進んでいると

   は……あの子を人間としてみてくれて、ありがとうございます。…アニカを、

   よろしくお願いしますね」


遠縁 「ええ 彼女を幸せにさせてみせます」


薬井 「…ふふ、きっと今も幸せですよ」


遠縁 「ならいいですがね」


遠縁 「・・あ、そういえば」


彼はそういうと杉谷と皇を見る


皇  「ん?どしたの」


杉谷 「?」


遠縁 「…お二人がいなかったらここまで生き残れませんでしたよ。本当にあなた達

   と知り合いで本当によかったです」


皇  「先輩にはたくさん助けてもらったし、こちらこそありがとう!」


杉谷 「僕だって、お二人がいなかったらこうして娘のことを救うことができません

   でしたし、とっくに発狂して逃げ出していたと思います。二人とも、ありがと

   うございます」


KP  それではそうしてあなた達は病院へと向かう事だろう


KP  この一連の騒動は、ゆっくりと幕を閉じていくのだ


―――――――


海風は、止んだ


森のざわめきも、収まった


そして太陽が、この町を照らす


ここは、アラハバキ。様々な人間が集い、交わり、去っていく


コスプレイヤー、芸能人、サラリーマン、学生


あの騒動の後も、街には活気があふれている


人間とは相容れない存在たちは皆、元の住処へと帰っていった


カッチリと噛み合った歯車。それらは自然と離れて、それぞれで回り出す


貴方達の物語は、これからも続くのだろう


だが、この物語が「君」という歯車を以て廻り出したことは疑いようのない真実だ


………


???『ああ、これだから人間は面白い』


――――「とある者の独白」より


――――――――


クトゥルフ神話TRPG「瓦礫多少女は拒まない」

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瓦礫多少女は拒まない。 宿木はたけ @YadorigiHatake

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