第3話 いきなりボス戦ですか!?
出刃包丁片手に出発とは殺人鬼の様だ。
今の私の恰好は、リクルートスーツにパンプスと旅をするには不釣り合いな恰好である。
一度、戻って着替えて出直すことにした。
「ただいま」
自宅に戻ったが、妹の姿はない。
コンビニでも出かけたのだろうか?
私は、自室に戻り上下黒のジャージに着替える。
替えの着替えと備蓄しておいた保存食3日分と2ℓペットボトルの水を5本をアイテムボックスに収納して思った。
私物は全部アイテムボックスに入れておけば便利じゃね?
私は、自室の中にある私物だけでなく裏口から出て自転車や原付もアイテムボックスに仕舞ってからサイエスに戻った。
出刃包丁を装備している状態だと、ステータスは変わるのだろうか?
何も変わってないと、スライムにも負ける可能性がある。
よし、確認だ。
「ステータスオープン」
---------STATUS---------
名前:未設定(
種族:人族/異世界人
レベル:1
職業:
年齢:25歳
体力:10
魔力:8
筋力:3(+30)
防御:3(+3)
知能:5
速度:2(+5)
運 :300
■装備:
■スキル:縁結び・
■ギフト:全言語能力最適化・アイテムボックス・鑑定・経験値倍化・成長促進
■称号:なし
■加護:須佐之男命・櫛稲田姫命
-------------------------------
補正が掛かっている部分は、着ている服や履いている靴に補正が掛かっているのだろう。
筋力に+30とあるが、これは出刃包丁を持っているからだろうな。
流石にジャージ姿で町に入ると不審がられそうだ。
町に付く前に、一般的な服に変更しよう。
しかし、何故名前の欄が『未設定』になっているのだろうか。
名前のところをタップすると、見慣れたキーボードが現れた。
ヒロコと打ち込むと、名前がヒロコに設定された。
さて、一面見渡す限りの草原に人一人居ない。
町に行くには、どの方角へ向かえば良いのか皆目見当もつかない。
自称神が、あらゆる言語使えるようにしてくれているのなら、その辺の動物の言葉が分かる可能性はある。
ものは試しとばかりに、木に居た見た目がリスっぽい奴に声を掛けた。
「ねぇ、君。美味しい木の実を上げるから町がある場所を教えてくれない?」
『美味しい木の実? 本当にくれるの?』
木の実に食いついたリスもどきは、木から降りて私の三歩前で止まり体を上下に動かしている。
もふりたい欲求に一瞬かられたが我慢我慢と邪念を払い、非常食用に持ってきたミックスナッツをアイテムボックスから取り出し、封を切って地面に数粒置いてみた。
小さな手でそれを掴み恐る恐る口に運ぶ姿が萌えた!
一口二口と食べるにつれ食べる速度が速くなっている。
異世界でもミックスナッツは美味しいらしい。
塩分過多にならないかなぁ、と余計な心配もしてみる。
『美味しい。もっと頂戴!』
「町の場所を教えてくれたら上げる」
『この草原を南に進むと道に出るから、その道を辿れば町に着くよ』
「そう、ありがとう」
私は持っていたミックスナッツの袋を逆さにし、リスもどきの体の1/3くらいのナッツの山を作り、示された方角を歩き出した。
暫く歩いていたが、いくら歩いても同じ景色だ。
街道も見当たらない。
一時間くらい歩いたところで、足が痛くなった。
「無理! どんだけ距離があるのさ!! いくら歩いても街道に出ないなんて、どれだけ歩けば良いのよっ。歩きたくないでござる」
早々に異世界ライフが挫折しそうだ。
楽して移動できる手段はないだろうか?
そんな事を考えていた私に名案が浮かんだ。
「原付を使えば良いじゃん!」
自転車でも良いが、ペダルを漕ぐのが面倒臭い。
ゴールド免許のペーパードライバーでも、誰も居ない草原なら事故を起こすこともないだろう。
アイテムボックスから原付を出し、
「いざ出発!」
の掛け声とともに急発進する原付。
舗装されていない道を走っていると時々ヒヤッとしたが、乗っていると徐々にコツがつかめてくる。
スピード規制もないのでMAXまで上げようかと思ったが、障害物に当たった時の衝撃が怖いので時速は50キロとゆっくりした速度で収まった。
20分くらい走っていると街道らしいものが見えた。
なるほど、これがリスもどきが言っていた道か。
遠目に城壁らしきものが見える。
あれが町なんだろう。
流石に原付で行くのは悪目立ちするので、ジャージから白いシャツと黒いパンツに着替えて徒歩で移動することにした。
この年で路上ストリップ劇場をする羽目になるとは、トホホホである。
しかし、町に入る時に入関税取られたらどうしよう。
この世界のお金は持ってないので、実質無一文だ。
自称神は、某MMORPGを模範した世界と豪語していたのだ。
モンスターを倒せば、お金が少なからずドロップされるだろう。
そうあって欲しい。
索敵のスキルがあれば敵を見つけられるんだろうが、地道に歩いて探すしかない。
変なところでゲームだ。
歩く事数分で居た。
明らかに初心者向けじゃないモンスターが!
ゴールデンリトリバーを1.5倍にしたくらいの大きさの狼が、私を餌と認識しロックオンしている。
「いやいや、初戦でエリアボス討伐? ここは、定石にスライムでしょう! 殺しに掛かってるじゃない。
コマンドがあれば逃げるを選択しただろうが、絶対逃げられない奴だ。
頭の中で対ゴキブリ用殺虫剤を思い浮かべた。
声に出す余裕なんてないもの。
宙に殺虫剤が現れたので、左手で掴み取る。
右手に万能包丁、左手に殺虫剤。
ナイス私の妄想力!
このシチュエーションも、絶対に自称神様のお膳立てに違いない。
「グルルルルッ」
「こんな糞ゲーで死ねるかぁああっ!」
飛び掛かってきた狼の顔面目掛けて殺虫剤を噴射する。
「ギャンッ!!」
対ゴキブリ用殺虫剤マイナス85℃の威力を思い知れ!
目を手で覆い蹲る狼の首を目掛けて万能包丁を思いっきり振り下ろした。
肉をすり潰して斬る感触に、一瞬怯むも調理用の肉を切っているんだと自分に言い聞かせる。
一撃で仕留めないと、こちらの身も危ういのだから必死だ。
振り抜いた後は、動脈が切れたのだろう大量の血を頭から浴びた。
やはり魔物、首を少し斬られたくらいで即死するわけがない。
カウンター狙いで攻撃して出血死するまで時間稼ぎをする。
狼は殺虫剤を警戒しているのか、大きなうなり声を上げて威嚇している。
警戒しているのがチャンスとばかりに殺虫剤を仕舞い、漂白剤を出して狼の首元を目掛けてぶっかけた。
「ギャァァァアアォォオオゥ!!!」
傷にしみて痛いだろうに。
最早戦闘どころではなく、狼は痛みにゴロゴロ地面を転がり泡を吹いて倒れた。
鑑定すると気絶となっている。
今がチャンスとばかりに、私は万能包丁で狼の首を切り落とした。
すると、狼の身体は消え毛皮・赤い石・お金が落ちていた。
お金を拾って数えてみると金貨が30枚。
今のところ価値が分からないので、金貨30枚が大金かどうか判断出来ない。
「一度、家に帰って出直すか」
返り血を浴びて全身血まみれ状態だ。
腕時計を見ると出発から7時間も経っていない。
私は、今日はこの辺で切り上げた方が良いと判断して自宅へ出戻ることにした。
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