最終話 第三十七集:雲心月性

 皇宮の方から、数多の雄叫びと悲鳴が入り交じった音が、翠琅すいろうの耳に届いた。

「まさか……、皇宮にも鬼霊獣グゥェイリンショウが⁉」

「困りましたね、翠琅すいろうさん」

 目の前には未だ二十万以上の鬼霊獣グゥェイリンショウがいる。

 今この戦場から抜けることは出来ない。

 翠琅すいろうとスペンサーは攻撃の手を緩めることなく戦い続けている。

 ただ、危機的状況になった割には、翠琅すいろうの表情に変化はない。

「……玲瓏兄上が言っていた通りになりました」

 鬼霊獣グゥェイリンショウの首を刎ねながら、翠琅すいろうは兄の手腕に感嘆した。

 スペンサーは鋭い爪で掴んだ鬼霊獣グゥェイリンショウの首をねじり切りながら、興味深そうにニヤリと笑った。

「ほう。というと?」

「『申し訳ないが、城外の戦闘はお前に任せる。わたしは梅寧軍と共に皇宮で戦おう。おそらく、罠があるはずだ』と。だから、ひそかに立て直していた三万の梅寧軍が、皇宮付近に待機しているんです。市民のふりをして」

「さ、三万も、ですか!」

「多くはまだ十代で若く未熟ではありますが、十七年の時を経ても、梅寧軍の志は脈々と受け継がれているんです」

「さすが、翠琅すいろうさんのお兄様。一度、脳みそを観察させていただきたいくらいです!」

「怖いこと言わないでください……」


☆★☆★☆☆★☆★☆☆★☆★☆


「……玲瓏、動揺の一つでもしてみたらどうだ」

「英王の卑怯な性格や残酷な性分は承知している。きっと何かしてくるだろうと思っていた。だから、対策は十分にしてある」

「対策、だと?」

「あなたは梅寧軍の生命力と志、そして忠誠心を侮りすぎているようだ」

「なんだと⁉」

 英王が顔をゆがめ、怒りをあらわにしたその時、扉の外から聞こえてきたのは、戦闘が始まったことを告げる鬨の声だった。

「そんな……。一体どこに隠していた!」

「江湖だ。我らの勢力は深く傷を負い、悲しみと悔しさに身を震わせながらたどり着いた江湖に身を寄せ、ずっと力を蓄えてきた。お前から家族の名誉を取り戻すために!」

 玲瓏は剣を構え、英王に迫った。

「罪を認め、裁きを受けよ! 真実を白日のもとへ還すのだ!」

 英王は目を見開き、膝から崩れ落ちながら空気が口から洩れるように笑い始めた。

「はは……ははははは……。何十年もかけて練り上げてきた計画が……。こんな、こんな小僧に敗れるとは……。あと少しだったというのに……。あと少しだったというのに!」

 英王はうなだれ、話すこともやめてしまった。

 玲瓏の合図で英王に近づいていった兵士が、腕を拘束し、周囲にいた白虹教の導師たちも同様に捕縛され、天牢てんろうへと運ばれて行った。

 玲瓏は目の前で淡々と過ぎていく光景に、違和感を覚えた。

 あっさりしすぎている気がするのだ。

 英王はおそらく、まだ何かを隠している。

 ただ、今は早く翠琅すいろうの援軍に向かわなくてはならない。

 玲瓏は皇帝と皇太子、そして姜医師に挨拶をすると、城外へと向かって走って行った。


☆★☆★☆☆★☆★☆☆★☆★☆


「あ! 兄上!」

「おう、翠琅すいろう。加勢にきたぞ」

「ありがとうございます」

 梅寧軍五千を引き連れ、援軍に来てくれた玲瓏のおかげで、鬼霊獣グゥェイリンショウとの戦闘は大きく動き、その数を十万にまで減らすことが出来た。

「玲瓏殿下ぁ! 若様ぁ!」

「あ、飛燕将軍」

「世子様が『休憩しろ』とのことですぞ。もうあとは我々でどうにでもできましょう。お二人はお休みください」

「わかりました」

「ありがとう、将軍」

 玲瓏を目の当たりにした飛燕は感無量だったらしく、男泣きをしながら微笑んだ。

 翠琅すいろうと玲瓏は城内へと入り、水や食べ物を受け取り、用意されていた席に着くと、穆王府の軍に拘束されて連れていかれる英王府の兵士たちを眺めながら食べ始めた。

「あれ? あのさっきまで一緒に戦ってくれていたひとは?」

「ああ、スペンサーさんは悪魔だから、飛燕将軍が来る数秒前に離脱したよ」

「いればいいのに」

「悪魔の姿があまり好きじゃないみたいで。見られたくないんだと思う」

「そうか。あとで礼を言いに行かねばな」

「うん」

 二人で休んでいると、梨鶯りおうが馬に乗って現れた。

「あ、兄上!」

「玲瓏殿下、翠琅すいろう、お疲れ様です」

「世子殿もお疲れ様です。戦ったり治療に回ったりかなり忙しかったようですね。お休みになられた方がいいのでは?」

「弟たちの体調の方が心配なので」

「あはははは。これから末永くお世話になります」

「もちろん。おかえりなさい、玲瓏殿下」

「ただいまです。梨鶯りおう殿」

「これをお返ししておきますね」

 そう言って梨鶯りおうがさしだしたのは、弥王世子の玉佩ぎょくはい

「ち、父上の……。ありがとうございます!」

「あとで母にも会ってください。とても喜ぶと思います」

 梨鶯りおうはいつもの優しい笑顔を浮かべると、颯爽と馬で皇宮の方へと走って行った。

「いいなぁ、翠琅すいろうは。梨鶯りおう殿は話に聞いていたよりもずっと格好良い。薬術にも長けていて、強く、優しく、見目も麗しい。天はいったい何物与えるつもりなんだ。羨ましい……。わたしも『兄上』と呼ばせてはもらえないだろうか……」

「ふふふ。そうでしょう、そうでしょう!」

「ああいう武人になりたいものだ」

「兄上ならなれるよ」

「鍛錬あるのみだな」

 他愛のない話をしながら食事を済ませると、玲瓏は翠琅すいろうに皇宮で何があったかを話した。

「一応、英王は天牢に入れてはいるが……」

「心配なんだね」

「見に行ってみようと思う」

「わたしも行く」

 近くにいた飛燕侯府の兵に行き先を告げ、二人は天牢へと向かった。

 到着すると、天牢の入口は物々しいほどの警備がしかれていた。

「ず、隋王府の屈強な兵士が三十人……」

「これは誰も近づけないだろうな」

 二人は挨拶と来た理由を話し、中へと入れてもらった。

 下へ下へと降りていく階段は、一段降りるごとに寒気を感じる。

 湿気はほとんどなく、ただただ寒い地下牢。

 その中でも、特に厳重なのが〈寒扇かんせん〉と描かれた看板の先に続いている皇族専用の牢。

 ここにも、隋王府の兵士が五人、立っている。

 二人は丁重に案内され、ある牢の前までやってきた。

 かけられた赤い札には、〈簫 祁潤しょう きじゅん〉と書かれている。

「居心地はどうだ」

 玲瓏が声をかけると、囚人用の服で装飾品がすべて奪われた姿の簫 祁潤しょう きじゅんがゆっくりと振り向いた。

「ふんっ。何しに来たのですかな? 殿下」

「何を隠しているのか聞きに来ただけだ」

「さぁ? 何のことでしょう」

「今更とぼけることもないだろうに」

「何がおっしゃりたいのかわかりかねますな」

「……腕の傷はどうだ?」

「手当をしていただきましたので、もう血は止まっております」

「血? わたしには煙に見えたが」

「殿下にそう見えたのなら、そうなのでしょうねぇ」

「あくまでもとぼけるつもりなんだな」

「今日は疲れました。もし温情をかけてくださるのなら、あともう少し藁を敷いてくれませんかね」

「あとで運ばせよう」

「感謝いたします、殿下」

 その時だった。天牢がにわかに騒がしくなったのは。

「やはり、何か隠していたのだな」

「さて、何のことでしょう」

 玲瓏に目配せされ、翠琅すいろうは騒がしくなった方へと走って行った。

「どうしたんですか?」

「それが……」

 案内された牢へと見に行くと、そこには自害した白虹教の導師たちの遺体が十二体転がっていた。

「壁に血文字……。そうか、そういうことか」

 翠琅すいろうは再び走って玲瓏の元へと戻ると、牢の中では簫 祁潤しょう きじゅんが口から血を流して笑っているところだった。

「自害した導師たちの牢には、怨霊化ののろいが壁一面に書かれてた」

「だろうな。簫 祁潤しょう きじゅんはあと数分もした怨霊になるだろう」

 簫 祁潤しょう きじゅんは血にまみれた手で懐から一通の書状を取り出した。

「こ、ここに、すべて、か、書いておいた。わ、私が、したこと……。お、お前たちが、望んで、い、いる、真実、と、いう、やつだ」

 格子の隙間からそれを受け取った玲瓏は、苦しむ簫 祁潤しょう きじゅんを冷たい目で睨みつけた。

「わ、私は、お、お前たちを、見て、いるぞ。昏く、深い、死の底から、ずっと、ずっと、な……」

 大きく血を吹き出し、簫 祁潤しょう きじゅんは前のめりに倒れた後、息絶えた。

 直後、赤い煙と生温かい風が吹き抜け、外へと出ていった。

「怨霊の初期段階だな。まだ力は弱いが、三年もすれば疫病を振り撒くくらいは出来るようになるだろう」

「封印しないと……」

「幸いと言っていいのか、封印の媒介になる身体はここにある」

「……問題は場所かぁ」

「そうだ。封印に適した場所でなければ、すぐに破られてしまう」

「……スペンサーさんに聞いてみるよ」

「え、そんなことまでしてくれるのか」

「人脈がすごいからね。きっといい場所を知っていると思う」

「では、頼むとしよう」

「兄上は父上と母上のところに行ってきていいよ」

「でも、わたしも頭を下げてスペンサー殿に頼まなくていいのか?」

「そんなことしなくても大丈夫ですよ。わたし、従業員で稼ぎ頭だし」

「なにやら不思議な間柄なんだな」

「まあね」

 二人は牢の入口に立っている兵に簫 祁潤しょう きじゅんの遺体の保管を頼むと、外に出て「またあとでね」と、一旦別れた。

 翠琅すいろう大仙針だいせんしんに乗り、行きなれた銀耀ぎんようへ向かって飛び立った。

 空はもう白み始めており、朝はもうそこまで来ている。

 上空から見下ろす瓏安ろうあんは、未だ混乱の中で不安な状況が続いているものの、兵たちは勝鬨を上げている。

 数日もすれば、また、いつもの営みの音が戻ってくるだろう。

 十七年前に野に放たれた鬼霊獣グゥェイリンショウは数を増やし、完全なる討伐は難しいかもしれない。

 それでも、玲瓏と梅寧軍が戻ってきたことで、花丹国には光がさしている。

 不安は一つだけ。

 怨霊化した簫 祁潤しょう きじゅんを、どの程度封印できるかにかかっている。

「あ、見えた」

 蒐集屋敷銀耀ぎんように着くと、まるでその瞬間がわかっていたようにスペンサーが迎えに出てきてくれた。

「お待ちしておりましたよぉ」

「先ほどはありがとうございました」

「あれしきのこと。いやぁ、久々の運動は楽しかったです」

 屋敷の中へと通されると、そこにはアーサーが立っていた。

翠琅すいろう! さっき天牢のあたりから飛び去って行ったのは怨霊かい⁉」

「え、そ、そうですけど……。なぜそれを……。あ! そうか。瓏安ろうあんを空から護っていてくれたんですよね。ありがとうございました」

「いやいや。やはり人間の欲にまみれた感情というのは香ばしいね。あの簫 祁潤しょう きじゅんとかいう男、悪魔にとってはまさに地獄に落としたい逸材の一人だよ」

「あは、あはは……」

「で、封印するんだろう?」

「あ、はい。どこがいいかなぁと、場所の相談に来ました」

「それならちょうどいい場所がある!」

「え、どこですか?」

 アーサーとスペンサーは顔を見合わせると、ニヤリと微笑みながら地図を机に広げ、指さした。

「ここは……、旧憧林……。ど、憧温どうおん将軍のお墓だったところですか⁉」

「その通り! あそこ。今空いているだろう?」

「あ、空いているって……」

 翠琅すいろうが戸惑っていると、スペンサーがニコニコしながらお茶を淹れ始めた。

「場所もちょうどいいですし、翠琅すいろうさんも行ったことがある場所ですし、魔窟ダンジョンとして育てるには、ある程度凶悪なものがいたほうが、都合がいいんですよ」

「え、それって危険なんじゃ……」

魔窟ダンジョンとしては超危険ですが、入らなければただの洞窟。簫 祁潤しょう きじゅんが出られないよう何重にも封印を施せば、とっても素敵な魔窟ダンジョンになるでしょう」

「えええ……」

「ハンターたちの流入も増えて、瓏安ろうあん近郊の村々が潤いますよぉ。お金があれば村を護る傭兵も雇えますし、みんなが幸せですよ!」

「う、ううん……」

 さすがは商売人。翠琅すいろうは上手く丸め込まれてしまった。

「じゃぁ、兄上に伝えてきます」

「さっそく明日行いますか? 封印の媒介となる遺体はなるべく新鮮な方がいいですからね」

「そうですね。では、明日封印を行います」

「わたくしたちは万が一に備えて旧憧琳の近くで待機します」

「ありがとうございます。では、また明日」

「もう帰ってしまうのですか? お茶しましょう?」

「あ、じゃぁ……、ちょっとだけ」

 翠琅すいろうは用意された席に腰かけると、淹れてもらった紅茶と果物がたくさんのったケーキをもらい、三人で優雅な朝のティータイムを過ごした。

 昨夜あんなに必死で戦っていたのが嘘のような穏やかな時間。

 翠琅すいろうは窓から見える雲の流れをぼーっと見つめながら、そっと溜息をついた。

 国内が安定したとしても、この世は戦国。

 戦いがなくなることはもうしばらくないのだろうと思うと、少し感傷的な気持ちになってしまう。

 そんな翠琅すいろうの気持ちとは裏腹に、太陽は昇り、空は晴れ渡っていった。


 翌日、旧憧林に来ると、そこは以前とは違う不思議な空気に包まれていた。

 清濁何もない、ただただ静かな雰囲気。

「これは……」

戦神いくさがみ麗桜れいおう大長公主だいちょうこうしゅだ」

 麗桜れいおう大長公主だいちょうこうしゅは、かつて憧温が所属していた軍の総大将であり、花丹国を何度も敵国から救ってきた英雄だ。

 花丹国では勝利の女神として今も信仰されている。

「かつての部下のために、目をかけてくれていたのだろう。ここには聖も悪もない。ただただ、『何もない』空間になっている。たしかにここなら、簫 祁潤しょう きじゅんを封印できるだろう。都からも離れているし、被害を被ってしまうほどの場所に人里もない。あらゆる面で安全だ」

「では、さっそくやりますか」

「そうしよう」

 木製の棺にたくさんの氷と共に入っている簫 祁潤しょう きじゅんの遺体。

 それを馬車からおろし、煌糸こうしで浮かせながら、翠琅すいろうと玲瓏は魔窟ダンジョンの中へと入って行った。

翠琅すいろうが頭を持ち帰ったそうだな」

「そう。銀耀ぎんように雇われてから最初の仕事だったんだ」

「大変だったな」

「うん。気持ち悪いものがいっぱい出てきて大変だったけど、今はその影もないね」

「虫も動物も、植物さえ生えていない。まさに、虚無だな」

「うん……」

 下へ下へ。深き場所まで進んでいくと、大きな広間へ出た。

「ああ、ここだ。戦った場所」

「跡形もないな」

「だだの岩肌にぽっかり空いた空間って感じだね」

 二人で棺を中央に置くと、蓋を外し、玲瓏が呪文を唱え始めた。

――魔唄まがうたかそけき常闇に、かばねが一つ、にえとなる。

――おの魂魄こんぱくかしりに変え、さ迷うは劫火ごうかむしろ

――ふるえふるえ、匣の中。

――ふるえふるえ、鎖に繋がれ。

――ふるえふるえ、無限の牢に。

 棺が揺る。遺体が動いているのだ。

 己の魂を呼び戻すために。

(来た)

 赤く湿った生暖かい煙が入って来た。

 抵抗でもしているかのように空中で止まるが、成すすべなく煙は遺体の中へと吸われて行った。

「今だ、翠琅すいろう

 翠琅すいろう煌糸こうしを紡ぎ、遺体を覆うように巻き付け、強く縛り上げた。

「剣をもって封と成す」

 最後に、玲瓏が鉄で出来た剣を深く差し込み、封印となった。

「ふう。上手く言ったな」

「そうだね。ただ……」

「ああ。空気が変わった。数分もすれば、ここは再び恐ろしい魔窟ダンジョンに変貌するだろう」

「いいのかなぁ……」

「大丈夫だろう。ここは蒐集屋敷の管轄となるらしいからな。簫 祁潤しょう きじゅんもそう簡単に抜け出させてはもらえまい」

「たしかに。それもそうだね」

 顔を見合わせると、玲瓏はふと力が抜けたように微笑んだ。

「帰るか、翠琅すいろう。わたしたちの家へ」

「うん。あ、でも、兄上は屋敷と領地をもらうんだよね?」

「ああ。領地は簫 祁潤しょう きじゅんが治めていた場所と合わせて広大になるらしい。屋敷は姜侯府の隣だ」

「わあ! 嬉しい!」

「完成は来年だ。しばらくは皇宮に部屋をもらい、住むことになる」

「遊びに行くね」

「ああ。菓子を用意して待っている」

 魔窟ダンジョンの外へ出ると、先ほどとは打って変わって鳥の声や獣の気配がした。

 生き物は清すぎる場所にも、穢れ過ぎた場所にも、住むことは出来ない。

 清濁併せ持つ場所で、皆生きていくのだ。

 誰もが心に光と闇を抱えている。

 それをどう表現し活かすかは、その人次第。

 だからこそ、生きるのだ。

 自分の中の光に気づき、闇を受け入れるために。

「では、玲瓏殿下。わたしは本日もお仕事があります。そろそろ瓏安ろうあんへ帰りましょうか」

「ふっ。とってつけたような敬語だな」

「えへへ」

 翠琅すいろうは近くで待っていたスペンサーとアーサーに手を振り、玲瓏を都まで送り届けた。

 そのまま大仙針だいせんしんに乗り、上空へと飛び出す。

 眼下に、一匹の狐が目に入った。

 翠琅すいろうは自分の手を眺めながら、螢惑けいこくを思った。

 また変身することもあるだろうか。

 朝廷に混乱をもたらす不吉な存在。でも、翠琅すいろうにとっては、自分を守ってくれた大事な半身。

 もし新しい時代に必要な瞬間が現れたら、迷うことはないだろう。

 護りたいものがあるから。いくらでも、凶を纏える。

「えっと、今日の行先は……」

 今日は海底遺跡に出現した魔窟ダンジョンへ調査に行く。

 何が待っているかはわからないが、きっと安全ではないだろう。

 でも、それが楽しいのだ。

「頑張って稼ぐぞ!」

 穏やかな風が吹く。

 新しい季節と時代が、待っているのだ。

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螢惑守心の煌仙子 智郷めぐる @yoakenobannin

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