第13話⁂初枝の男を惑わす理由は?⁂




 実は…あの蜃気楼のビデオテープは、3月下旬から6月上旬にかけて蜃気楼が最も現れやすい1954年4月上旬にN○Kで蜃気楼の特集が組まれた時の映像なのだ。


 🌸。*・゚゚時期的に桜の見ごろと重なって、一層幻想的且つ美しい日本の象徴国花である桜が、山々にまるで雲のように、桜雲が群れを成して咲き乱れている*。・❀

 

  すると花の雲から、白雪のような桜の花びらが空を舞い⋆。❀.:*:鳥の羽のようにひらひら舞って来た.:*:・。

 

 その時、山々に🌄強風が吹き荒れて

 それはやがて幾千もの花びらとなり、花屑となり*。*・゚゚✲

 まるで日本最大級の足利花火大会のフィナーレである

 大ナイアガラ&スタ―マインと見間違うほどの圧巻ぶりで

 怒涛の如く桜吹雪が舞い散ってきた⋆:*:・🌸'。.:*❀


 その時偶然にも蜃気楼を見に行っていた、以前は東京暮らしをしていた初枝にして見れば物珍しいので見に来ていた。


 たまたま幾ら年齢はそこそこ行っていても、こんな片田舎には珍しい美しい女性だったので映し出されていた。


 それではもし山根が初枝の子供だとしたら一体誰の子なのかという事になる。

 当然男を魅了してやまない魅力が有るからなのだろうが、いくら何でも男性の出入りが激しすぎる。


 初枝は根っからの淫乱女なのだろうか?

 それとも何か……男達に対して別の目的が有っての事なのだろうか?

 そこには想像も付かないとんでもない秘密が隠されていた。



 ◆▽◆

 初枝は幼少期から近所でも評判の美少女だったのだが、実は…複雑な家庭環境で育っていた。


 明治時代に飛騨地方の極貧農家の娘たちは、家族の生活を支える為に岡谷の製糸工場に出稼ぎに行った。


 年端も行かないまだ12歳~14歳くらいの娘が、極寒の野麦峠を越え、それこそ工場での労働は朝4時半頃から夜10時頃まで、働きづめという大変過酷なものだった。


 そういえば、昔の映画野麦峠では、年端も行かない娘が吹雪の野麦峠を越えるシーンが沢山出て来るのだが、どうして気候のいい夏に移動しなかったのか?



 実はそれには訳があるのだ。

 その理由は、カイコが繭(シルクを作る繭)を作るのは夏なので、製糸工場は7~8月がいちばん忙しい。


 そのため、お盆休みは短くて3日間くらいしかなく、帰省出来ない。

 逆に冬は原料の繭が残り少なくなるので、暇。

 また、繭をゆでて糸を取るには大量のきれいな水が必要で、岡谷の製糸工場は諏訪湖と天竜川の水を利用していたが、諏訪湖は冬に凍る。


 その為、製糸工場も正月休みになり、1~3月まで休業。

 女工さんたちは、年末にもらった給金を持って家族のもとに帰った。



 ◆▽◆ 

 初枝の実母は、飛騨の極貧農家に生を受けた娘なのだが、実は初枝の母親が、あの野麦峠で有名な岡谷製糸工場の女工さんで、器量良しだった事が災いして、なんと製糸工場の監督から強姦されてしまったのだ。

 こうして出来た娘が初枝だった。


 けれど朝4時半頃から夜10時頃まで、働きづめという大変過酷なものだった為に育てることが出来ずに泣く泣く手放す事になった。

 

 それは当時の産婆さんの手配によるものだ。

 それでも…よく出産することが出来たものだが、働きが悪いと給金も減らされて大変らしいが………?


 実は…総監督だった憎きこの男は、この工場ではかなりの権力者で実母のどうしても生みたいと言う気持ちを、已む無く受け入れてくれたのだ。


(例え憎き男の子だとしても、いざ、お腹に宿ってしまったら殺すなど絶対に出来ない)

 頼み込んでやっと命の灯を守り通せたが、初枝の母は臨月だと言うのに泣き通し。


 それを不審に思った産婆さんが、心配して相談に乗ってくれた。

 何故泣いていたのかというと、それは監督から酷い言葉を浴びせ掛けられていたからである。

「産んで育てるなど言語道断!働く為にわざわざ飛騨からやって来たのに絶対にダメだ!」

 あいにく子供が授からなくて苦労している夫婦の、たっての希望で初枝は生まれて直ぐに里親に出された。


 里親の実家が富山県魚津市なのだ。

 里親で小学校の校長先生を務める父親と、専業主婦の母親の元でスクスクと成長したのだが、器量の良かった初枝は、早速同じ校長職に付く父の友達の御子息で小学校の教員との、縁談話が持ち上がり婿養子に入って貰った。


 夢のような幸せな生活を送っていたのだが、運が悪い事にあの当時は不治の病と言われた肺結核で、愛する夫をあっけなく失ってしまった初枝の落胆ぶりは、尋常なものでは無かった。


 ショックを通り越して、生きる気力も失いかけていた初枝では有ったが、夫を失って3年、いつまでも立ち直る事の出来ない初枝の事を父親が心配して、又しても縁談話が持ち上がった。


 それが戦争で亡くなったエリ―ト軍人村上だった。

 実は…今から90年程前の事ともなると、幾ら美人で成績優秀な初枝でも、再婚で傷物の初枝が、家柄も申し分のない独身エリ-ト軍人と再婚出来るなど、あり得ないことだったのだ。

 

 そこにはとんでもない落とし穴が………???

 

 実は…このエリ-ト軍人村上は上司から厳しく言われて、致し方なく結婚に踏み切ったのだった。

「これからお国の為に力を注いでもらう為にも、身を固めて落ち着いて貰わないと!」

 初枝は結婚して僅か1年で前夫を失っていたので、子宝に恵まれることが出来なかった。

「これでやっと前夫の事を諦めて、前を向いて生きていける!これで子供でも出来れば………」

 そう思い再婚に踏み切ったのだが、とんでもない夫だった。


 こうして初枝の異常行動の原因が判明する。

 当然男を魅了してやまない魅力が有るからなのだろうが、いくら何でも男性の出入りが激しすぎる。


 それではもし山根が初枝の子供だとしたら一体父親は誰なのか?











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