第12話⁂山根の更なる秘密⁈⁂


 レミママの死因が余りにも可哀想だったので、今尚レミママの事が忘れられない山根は、今でもあの日の事を思い出すと背筋が凍る思いだ。

 

 それなのに……只々レミママの感傷に浸りたくて……何でもいい、レミママの話をしたかっただけなのに……それを……


 あれだけ誰にも絶対に言わないでと言っておいたのに、父から死んでしまったレミママの話を、さも生きている様に、それもB型肝炎の話まで事細かに話していたと聞いた時は、心臓が止まるかと思った。


 もしうっかり真実を話していたら、大変な事になって居た。


 余りにもレミママの死因がショック過ぎて、自分一人では到底抱えきれない苦しみ、悲しみだったので、とうとう年上の頼りになるマネージャーで彼女の香苗に、相談したのだ。


(それなのにあれだけ「誰にも話さないで!」と口が酸っぱく成る程言ったにも拘らず、アッサリ話してしまうなんて絶対に許せない!)

こうして山根は、香苗と別れる決心をした。 



 ◆▽◆

 それではどうして香苗が山根の秘密を暴露した事が、山根に伝わってしまったのか?

 それはある日の事だ。

 いつもの優しい父が、血相を変えて話し出した。

 

「寿司屋「長兵衛」の大将から聞いたんだが、レミママの話は絶対にするな!分かったか?」

{あぁ~?香苗が大親友Yに話したんだ………そして…Yが自分の父「長兵衛」の大将に話したんだ!もう絶対信用できない。絶交だ!}


 あれだけ頼りにして信頼しきっていたマネージャーであり彼女に、亡くなってしまった自分の母レミママが、それも水商売女で、大物政治家の愛人である事や、諸々の諸事情を他人にペラペラ話されて完全にキレてしまった。


 こうして香苗は捨てられて自殺未遂騒動で、一時はテニスサークルも閉鎖に追い込まれる程の大騒ぎになって居た。


 こんな現状化、前例のある山根には、男子部員からの厳しい監視の目が向けられているので、山根もおいそれとは女子に声を掛けられない。


 そんな事情があり江梨子を介して、小百合誘い出しを目論んでいた。

 それでは山根の狙いは一体何か……?


 それは富山県魚津の片田舎である、小百合たちの住む町から20年程前に、忽然と居なくなった初枝が大きく関係してくる。

 そこには一体何が有ったのか?

 

 ◆▽◆

 北村が2人の跡をつけたあの日、山根と小百合は3時間も山根の部屋で何をしていたのか?


 部屋に入るなり誰はばかる事もなく熱い💋口付けを交わした後、山根が小百合を求めたが、小百合に拒否されてお預けとなって居た。

 山根も大切な女性と思ったのかそれ以上手出ししなかった。


 それでは2人は何をしていたのか?

 当時の1975年頃に出始めたばかりの家庭用ビデオテープで過去の映像を見ている。


 それも、1954年4月初旬の桜の見頃を迎えた、何とも美しい山々の桜が映し出されたかと思いきや、一気にカメラは逆方向の、何とも幻想的な魚津の蜃気楼を映し出している。

 海の上にもやがかかり、一層の事神秘的な何とも表現できない世界が広がって、薄っすら霧の掛かった中世の街並みらしきものが、屈折して海の上に浮き上がっている。


 それでも…いくら神秘的でも、小百合は魚津市出身で子供の頃から慣れ親しんだ景色、珍しくもなんともない。


 山根も全くKY(空気読めない)な男だ。

 そう思って見ていると40歳そこそこの妖艶で美しい女性が、可愛い赤ちゃんを抱えて微笑んでいる姿が映し出された。


 更には麦わら帽子を被ったワンピ—ス姿の女性と、若い男性らしき人物が、す—っと映し出されたかと思うと、画面が変わった。


 その時山根が、すかさず妙な事を口走った。

「この抱っこされている赤ちゃんは僕で、この女性は俺の母なんだ」


「まぁ~!お綺麗なお母様ね!」


 少し年齢は行っているが、江梨子と小百合は山根の家族の事は全く知らないので、信じ込んでいる。

「母だけど20年前、小百合ちゃんが暮らす町に住んでいたんだよ」


「ああああああ!………そういえば………色っぽい中年のおばさまが居て………町中のお父さんたちの………憧れの的だったと………聞いたことがある⁈」


「ウッフッフッフ~?………そうかな~?………ともかく………酷い事が?………起こった?………殺された人が?………ああああああああ!何でもない?何でもない?」


「一体何が有ったのよ?変よ山根先輩は?」



 一体何を血迷った事を言っているのか?


 母親は『クラブ🥀レミ』のママではないか?

 そして父は、あの大物政治家だと言うのに、山根は一体何が言いたいのか?


 第一この映像は1954年となって居るので、もう20年程前の映像だ。

 この映像に写っている女性は母親というより、祖母と言った方が年齢的に合っている気がするのだが………?

 それなのに、このような事を口走る山根君の目的は一体何なのか?


 そして…実は…この映像に写っている40歳そこそこの妖艶で美しい女性は、戦争未亡人で夫の部下達を惑わせ、更にはあの当時の片田舎の男衆を、次から次へと魅了していた何とも色っぽい妖艶な女初枝だった。


(エエエエ————————ッ!爽やかイケメンの山根が、あの妖艶な男を惑わす  初枝の子供だと言うのか?………って事はかなり高齢で生まれたという事になるが……益々分らなくって来た!)

 


 そして…更には後ろ姿の、麦わら帽子を被ったワンピ—ス姿の女性と、若い男性が初枝と何かを話している様子が映し出されていた。


 これから間もなくして初枝の姿は、忽然とあの小百合が育った片田舎の町から消えた。

 この麦わら帽子を被ったワンピ—ス姿の女性と、若い男性は一体誰なのか?

 またこの2人が、初枝の失踪事件に何か関わりが有るのか?









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