第13話 ぴょんぴょん♪

 週が明けて、真は学校の廊下を進んでいた。


 次の日には熱も下がり、すっかり体調も回復した。


 ぐっすり寝たし、いっぱい食べたし、もう元気いっぱいだっ。


(みんなに心配掛けちゃったな……)


 特に管理人さんはというと、『私がそばにいるから、安心して眠ってね』と言って、次の日までずっと一緒にいてくれた。


 体調が悪いと、どうしても不安だったり寂しくなったりするから、とても心強かった。


「そういえば、あのイチゴタルト……美味しかったな……っ」


 今度、姫川ひめかわ先輩に作り方を教えてもらおう。琴美ことみにも食べさせてあげたいしっ。


(元気にしてるかな……)


 実家にいる妹のことを思いながら、廊下を進んでいると、


「………………」

「ん?」


 ふと後ろから視線を感じてバァッと振り返ったが、そこには誰の姿もなかった。


「あれ……?」


 でも、今、確かに誰かに見られていたような気がしたんだけど……気のせいかな?

体を前に戻して再び歩き出した真。


「………………」


 物陰からその後ろ姿を見つめる、まん丸な瞳があった――。




 それから、屋上でお昼ご飯を食べているときのこと。


「うーん……」

「マコマコ、どしたのー?」

「実は今日、ずっと誰かに見られているような気がして……」


 それは、体育の授業のとき――


「いーちっ、にーっ、さーんっ、…………んん?」


 グラウンドで準備体操をしていると、どこからか視線を感じた。


 校舎の方からだったような気がしたけど、こちら側からだと教室を特定することはできなかった。


 朝のときと同様、誰かに見られているのは確かだ。


 すれ違う人たちの視線はよく感じるが、それとはまたなにかが違う。


 昔から、人の視線に敏感ということもあるんだろうけど。


「それ、ストーカーじゃない?」

「絶対にそうだよっ! 誰だ~っ! わたしのマコマコに――」

「お前のものじゃないからな?」

「ストーカー……うーん……それとはまた違うというか……」

「違う? どう違うの?」

「えぇーっと、うまく言葉にはできないんですけど……」

「ええぇーっ。マコマコ、大丈夫~? お姉さんが付いててあげようか~?」


 梨花りか先輩……顔が近いです……っ。


 それから、腕を絡めてきたことで、胸が思いっ切り当たっていた。


「…………っ」

「マコマコ~?」

「!! ま、まだ、ストーカーと決まったわけでは……」


 すると、横でホットドッグを頬張っていた梨奈りな先輩が言った。


「でもさ、可能性がないってわけではないでしょ?」


 ……否定はできない。


「もし、本当にそうだったとしたら、どうして僕なんだろう……?」


「「えっ、それは……」」


「なにか心当たりがあるんですか!?」

「心当たりというか……梨花、後は任せた」

「ええぇーっ!? わたし~!?」


 じーーーーーっ。


「え、えーっと…――」




 バンッ!!!!!




「「「………………ッ!!?」」」


 突然の大きな音にびっくりした三人は慌てて、音がした扉の方を見ると、そこには………………栗色お団子ヘアーの女の子が、仁王立ちでこちらを見ていた。


 制服を着ているから、ここの学生ということはわかる。でも、問題はそこではない。


 なぜなら、その子は……まだ、子どもだったからだ。童顔というより、幼顔と言った方がいいだろう。


「………………」

「……ん?」


 まん丸な瞳が、まことを捉えて離さない。


 この目力と気迫は一体……っ!?


「「あっ、うさセンパイだ」」


「うさ……先輩……?」

「おいっ、そこのギャルビッチ姉妹っ、鬼野きの先輩と呼べ」

「ギャル……ビッチ……?」


 見た目に寄らず、容赦ない言いようだ。


 それより……誰だろう? 先輩たちのお知り合いかな? 


 すると、その『うさ先輩』は目の前に来ると、小さな口を開けた。


「私は三年の鬼野兎きのうさぎ、よろしくね」

「よっ、よろしくお願い……えっ、三年……っ!?」


 ……そっか。だから、梨花先輩たちは『センパイ』って呼んでいたんだ。


「早速で悪いのだけど、一つお願いを聞いてもらってもいいかしら?」

「え? お願い……?」

「そうよ」

「? まあ、はい……」


 勢いに流されるまま頷くと、


「じゃあ放課後、わたしの部屋に来なさい。これは、絶対よ」

「…………はい?」

 

 これは一体、どういうことなんでしょう……?

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