第39話 エピローグ

 ――パレードから半年後。


「レオ陛下、今日の日程ですが……」

「ありがとう。フェイジュン」


 フェイジュンは俺付きの文官となった。

 俺の仕事の調整や視察に同行してくれる。


「陛下、訓練場がにぎやかですよ」


 騎馬族出身の仕官が通りすがりにあいさつしてきた。


「あぁ。俺もはやく体を動かしたいよ」


 フェイジュンをはじめ、騎馬族から王宮勤めをする人たちも増えてきた。

 とはいえ定住せず、騎馬族の村から通勤している人が多い。

 これは転移魔法おかげだ。

 騎馬族たちとの交易も盛んになり、新しい薬や、技術も生まれてきている。


「ハリブの首領による、王国軍の特別訓練ですね。

 首領も、リーベラさんも張り切っていますよ」

「早く会いたい。今から見に行こう」

「ふふふ、陛下ったらソワソワしてるのがバレバレですよ」


 四大名家が無くなった今、王国軍が国を守るかなめだ。

 今の軍事力では心細いので、騎馬族に兵力の底上げを頼んでいる。

 王国軍の練習場では、激しい打ち合いが繰り広げられている。


「まだまだ!かかってこい!」

「はい!」

「あたしに勝とうなんて100年早いよ!」

「姐さん!もう一回お願いします!」


 リーベラさんは堅苦しい王国はイヤだと、ハリブの村に暮らしている。

 だが、しょっちゅう王宮に来ては手合わせだったり、おしゃべりに来てくれる。


「おぉーい!レオ総督そうとく

 お前もやらないかー!」


 俺の師匠である、ハリブの首領が俺を見つけて手をふる。


「喜んでー!」


 俺の返事に色めき立つ兵士たち。


「レオ陛下の参戦だ!」

「これは見ものだぞ!」

「国を救ったレオ陛下の腕前、拝見ですな」


 歓声を背に、師匠と向き合った。


「さて、書類仕事で、なまってないかチェックだ」

「あいにく、うちの家臣は優秀なので、毎日練習時間もとれてますよ」


 それから俺はヘトヘトになるまで、師匠と手合わせをした。


「あー疲れた……。師匠は容赦ないなぁ。

 ジゼルも来てたのか」


 フェイジュンと仲良く話しているジゼルを見つけた。

 ジゼルはイプラの村に住んでいる。

 薬をよその騎馬族に売ったり、物々交換をしていたが、最近は王国にも薬を売りはじめたようだ。


「あら、レオくん……じゃなくて陛下。

 おケガはありませんか?」

「いつも通りに呼んでくれてかまわないよ。

 ジゼルの薬は評判がいいみたいだな」

「えぇ、おかげさまで。

 イプラのお薬が素晴らしいと、王国のかたにも分かっていただけて嬉しいですわ。

 ……うふっ、“レオくん”なんて……。

 陛下と特別な関係って感じがしますわね」

「なっ!と、特別!?」


 フェイジュンが動揺する。


「ご主人の特別はイオにゃ!」


 イオがジゼルと張り合った。


「もう!イオちゃんにはかなわないですわ」


「あら、陛下こちらへいらしたんですね」


 訓練場の俺たちのほうへ、ドーラが掛けてくる。


「ドーラ。急ぎの用か?」

「いいえ。今度、いつものサロンを王宮で行うことになりまして……」


 ドーラが主催しゅさいする、“大したスキルを持たない守護獣ビーストを持つ、貴族たちの集い”の話しだ。

 ドーラは図書館管理人と、“強いスキルこそ全て”と考える貴族たちの、意識改革を行ってくれている。



「あら、私も行ってみたいと思っていましたの」


 ジゼルがワクワクとしている。


「土スキルの名家のおかげで、強いスキル持ちの貴族たちも、参加してくれるそうです」


 土スキルの名家は、ただ一人残った四大名家として俺の実務補佐、そしてドーラの貴族たちの意識改革を手伝っている。

 一度ラカータの村に行って、娘の墓参りをしたそうだ。


「俺ももちろん出席しよう。

 俺はこの国で一番の、“役立たずの守護獣ビースト持ち”だからな」

「我が王のギャグはセンスがないのね!神獣さまに無礼だわ」


 セリスが頬を膨らませた。


「どこからでも出てくるな」


 もう驚かないが、毎回あきれてしまう。

 セリスは魔術師として、俺を支えてくれている。


「我が王に最終報告よ。人造魔物を作る薬の残りは、どこにもありませんでした。

 炎スキルの屋敷も、風スキルの屋敷もお墓もあばいて見たけど何もなし。

 魔力の反応も無し。完全に歴史の闇へと葬ったわ」

「ありがとう、セリス」

「お礼はほっぺにチューでいいよ」


 セリスが自分のほっぺを指差す。


「ダメです」

「ダメですわ」

「ダメでしょう」


 女性陣3人が即答する。


「もう!ケチー!」


 セリスがむくれた。


「あははは」


 思わず声を上げて笑った俺に、イオがニコニコとしている。


「ご主人、昔は全然笑わなかったにゃ。

 イオ心配だったにゃ」

「あの時がどん底だったからなぁ」


 なんだか遠い昔のように思える。

 それから、頼れる仲間が増えて、頼られるようになって、少しずつ積み上げた今が、未来へと続いているんだ。


「イオ、俺は今、とても幸せだよ」

「ご主人が幸せなら、イオも幸せにゃ!」


 俺はこの先もずっと、みんなとともに生きていくんだ。





 そうして、後に千年王国とも呼ばれる国を築いた賢王レオは、5人の妃を抱え、100人の子をなしたと言われる。

 また、別の物語では、猫の耳を持つ妃とともに諸国を統べたとも言われている。


 気になるなら、あなたも語り部に話を聞きに行くといい。

 賢帝レオの伝説は一つでは無いのだから。


 それは語り部たちがつむぐ、一人の男の英雄譚――。



 ―完―



◆◆◆

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役立たずの守護獣持ち!とバカにされて家を追い出されましたが、こいつはスキルを統べる神獣です!〜全てを失った少年が英雄王になるまで〜 三桐いくこ @ikukokekokko

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