第38話 英雄王と大歓声

 街に出た魔物を倒して、王宮へ戻ると家臣たちの態度が違った。


「陛下、ご無事で!」

「陛下、素晴らしい戦いぶりでした!」

「あのような魔物をご自身で退治なされるなんて……!」


 興奮したように話しかけてくる家臣たち。

 宰相が前に出てきた。


「レオ陛下、ご無事でなによりです。

 我々はあなたを疑っていました。

 しかし、あなたは自らを犠牲にしてまで、この国を守ってくれました。

 あなたこそ王にふさわしい」


 宰相が深々と礼をした。

 後ろで家臣たちが拍手をおくる。


「認めてくれて嬉しいよ」

「にゃあ!」


 イオが嬉しそうだ。


「よかったです」

「当然だよ」

「素晴らしいですわ」

「当たり前よ!」

「本当によかった」


 フェイジュン、リーベラさん、ジゼルにセリス、ドーラが喜んでくれている。

 あらためて、彼女たちと仲間になれてよかったと感じた。


「民も陛下のお姿を拝見したいでしょう。

 即位されて顔みせもまだです。

 祝勝パレードを行いたいと思います」


 宰相がそう続けた。

 周りの家臣たちも乗り気だ。


「分かった。だが、頼みがある」

「なんなりとお申し付けください」


 ドタバタと準備にあけくれ、パレード当日。


「みんなに集まってもらってすまない」


 王座の間には、騎馬族十二部族の首領たちと、フェイジュン、ジゼル、リーベラさん。

 魔術師たちとセリス、王国軍の大尉とドーラ、そして土スキルの名家が集まっている。


「さすが陛下!似合ってるぜ!」


 王座に座る俺を、ハリブの首領に冷やかす。


「師匠、やめてください。自分でも慣れないんですから」


 王冠に、宝石の散りばめられた儀式用の剣。

 豪華な儀式用の衣装を着ると、仮装みたいで気恥ずかしい。


「いえ、レオ総督そうとくにとても似合っています」


 ジーウェイも褒めてくれる。

 他の首領たちもうんうんとうなずいた。


「さて、今回集まってもらったのは他でもない。

 あなた方に、魔物退治の勲章くんしょうを与えるためだ」


 騎馬族がどよめいた。


「そんな大変なものを、もらっていいのか?」


 首領の一人が言った。


「俺一人の力では倒せなかった。あらためて感謝したいんだ」

「レオ総督そうとくがいなければ、こんなことは出来ませんでした。

 騎馬族はみんな感謝しています」

「なんだか照れるな」

「村に帰って自慢しないと」


 首領たちが照れくさそうに答える。


「あははっ。王国から感謝されるなんて!

 時代は変わったねぇ!」


 リーベラさんが声を上げて笑った。


「神獣さまのもとに、みんなが心を一つにして困難に立ち向かったんです。

 歴史に刻まれる出来事ですよ」


 フェイジュンが目をうるませていた。


「そして、土スキルの名家。あなたに条件付きの恩赦おんしゃを与える。

 俺のために尽くし、スキル至上主義の王宮の改革をおこなうように」

「ありがたきお言葉」


 土スキルの名家は深々と礼をした。

 四大名家は実質崩壊したが、その穴を埋めるまでは頑張ってもらおう。


「ドーラ、補佐してやれ」

「かしこまりました」


「そして、魔術師、王国軍。

 あなた方の働きにより、民に被害が出なかった。

 その功績をひょうし、名誉を与える」

恐悦至極きょうえつしごくに存じます。

 レオ陛下、あなたは英雄として、この国を治め安寧あんねいへ導くでしょう。

 我ら魔術師がお支えします」


 大魔術が応じる。


「ありがたきお言葉。

 これからも王国のため、切磋琢磨せっさたくまいたします!」


 大尉が敬礼する。

 それに合わせて、王座の間を護る兵士たちも一斉に敬礼した。


「よし!ではパレードだ。全員参加してもらうからな!」


「ガラじゃないよ」

「これで交易も楽になるな」

「ど派手にやるわよ!」


 それぞれが気合を入れて、パレードに挑んだ。



 数時間後。

 パレード開始を号砲が知らせる。


 街はいろんなところに旗がなびき、花がいろどられている。

 人々は新たな王の姿が見たいと、ワクワクして待っていた。

 空を飛ぶ魔術師たちがキラキラとした光を放ち、民を喜ばせる。


 旗を掲げる王国兵の先導され、大きな馬車に俺とイオが乗っている。

 その後ろを、守護獣ビーストに乗った騎馬族がゆったりと進む。


 人々に手を振るとひときわ大きく歓声が起こった。

 みんな笑顔で俺を歓迎していた。


「陛下!陛下!」

「あの方が救って下さったのね!」

「あれは騎馬族?初めてみた」

「そりゃ、勲章くんしょうものの働きをしたからな」

「おれは誤解していたな、あんなに良い人たちだったなんて」

「僕は知ってましたよ。毎回薬を買いに来られますので」

「レオ陛下!ばんざーい!」

「陛下!救って頂きありがとうございます!」

「陛下のご活躍を絵にしました!ご覧ください!」

「レオ陛下の英雄譚えいゆうたんを作っているんです!

 いつかお披露目させてください」


 沸き立つ街を眺めながら、イオに感謝した。


「俺がこうしていられるのは、全部イオのおかげだよ」

「イオはご主人のためにしか動かないにゃ。

 ご主人がみんなのために頑張るから、イオもみんなのために頑張ったにゃ。

 これはぜーんぶ、ご主人の力にゃ!」


 イオは胸を張って、自慢気に答えた。


 ◆◆◆

 次はエピローグです。

 読んでいただきありがとうございました。 


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