第28話 レオの簒奪と即位

 剣を片手に王さまへ近づく。

 頭のなかが妙に静かで、周りがよく見えた。

 水スキルの名家、俺の元父親が前に出てくる。


「レオ、やめなさい」


 いまだに馴れ馴れしいのが気に障る。


「黙れ」

「ひっ」


 怯んだ元父親を無視してさらに進む。

 風スキルの名家が俺を止めようと動く。


 ドゴォ


「四大名家の恥晒しが」


 土のスキルの名家が大きな石で、風スキルの名家を殴って気絶させた。


「お前は何をしている!」


 王さまが土スキルの名家に叫ぶ。


「私は私の愛するものを守るだけです」


 静かに伝えて、フェイジュンを見つめた。

 気になるが、それは置いておいて。


「あんたが全ての元凶だ。アルベルトも、騎馬族も、どれだけの犠牲があったと思ってるんだ」

「犠牲など!王国の安定に比べたら小さなことだ!

 私さえ強ければ、この国を守ることができる!!」


 王さまが小さくみえる。

 これが、俺が忠誠を誓うはずだった男か……。

 小さなころの、父や兄とともに王国の役に立つ、という夢は、いま完全に壊れた。


「一人だけ強くても意味はない。強いひとだけ集めたって意味はない。

 強いひとも弱いひとも、協力しあってはじめて、強くて安定した国ができる」


 それは俺が騎馬族と暮らして感じたことだ。


「そんなはずはない!そんなはずは!」

「俺はこの国を作り変える」


 王さまにむかって剣をかまえた。


「い、いけ!私の守護獣ビースト!」


 王さまが命令する。


「王さま、今はお昼です」


 王さまの守護獣ビーストはそう告げた。


「時間を教えるスキルにゃ」


 イオが教えてくれる。


「これは……弱いどころじゃないぞ」

「あぁぁぁ……」


 王さまが床に崩れ落ちた。


「お前に分かるか?こんなくだらない守護獣ビーストを得た私の気持ちが!」

「分からないな。俺はスキル無しの守護獣ビースト持ちって、国から追い出されたので」


 皮肉げに笑って答えてやる。


「いやだ。いやだぁぁぁあ!!」

「王さま、さよなら」


 俺は、剣を振り下ろした


 ザシュッ


「やったー!我らが王!ばんざ~い!」


 セリスが飛び上がって喜ぶ。


「全部、終わってしまいましたね」


 少しさびしげにジゼルが答えた。


「騎馬族の扱いも大きく変わるね。こりゃ祭りだ!」


 リーベラさんはニコニコとしていた。


「おじいさま……」


 フェイジュンが、土スキルの名家につぶやいた。


「これが、私のつぐないだ。あの子を追い出した罰を、生涯受けよう。

 フェイジュン、お前のせいではない。私たちが弱かったのが、悪いのだ。」

「そういうことか」


 土スキルの名家のつぶやいた言葉の意味がわかって、全てがつながった。


「レオさん。だまっていてごめんなさい。

 私のお母さんは土スキルの名家の娘でした。

 無能スキル持ちと追い出されたんです」


 母親は大したスキルが無くて追い出された。

 でも、娘であるフェイジュンには一族特有の、強い土スキルを持つ守護獣ビーストがあらわれたんだろう。


「貴族の血が入ってない騎馬族のほうが珍しいから今更だよ。

 王国は無能な守護獣ビースト持ちを、すぐに追い出すからねぇ」


 リーベラさんはフェイジュンと肩を抱いた。


「あらあら、フェイジュンちゃんも、訳ありの仲間ですわね」


 ジゼルが笑う。


「さて、戻ろうか」


 みんなに向かって話しかける。


「セリスさんの転移魔法で戻りますか?」

「えぇ!疲れるよ!」

「イオが回復するにゃ!」

「神獣さまのためにやります!えい!」




 俺たちと水スキル、風スキル、土スキルの名家は、無事に王宮のどこかへ転移された。


「ここは玉座の間?」


 豪華な装飾の部屋だ。

 子どものころに一度だけきたことがある。

 魔術師をはじめ、兵士や文官がたくさん集まっていた。


「我らが王よ!即位おめでとうございます!」


 国で一番の大魔術師が俺を迎えた。


「地下の研究所を調べて、破壊してくれ」

「かしこまりました」


 数人の魔術師がすぐに消えた。

 俺は魔術師に命じる。


「こいつらを牢へ閉じ込めろ」

「はっ!」


 魔術師ではなく、兵士が四大名家を縛って連れて行った。


「レオ!レオナード!ラスキン家に盾突たてつく気か!」


 水スキルの名家が俺に叫ぶ。

 最後まであがく姿が無様だ。


「俺はただのレオだ!ラスキン家なんて知らない!」


 そう言うと、父親だった人はうなだれて連れて行かれた。


「我らが王よ。兵士も文官も全て説得しました。

 あなたがこの国を統べるのです」



 大魔術師に連れられて玉座の前へ移動する。

 そして俺は王冠をかぶった。


「我らが王よ!バンザーイ!」

「レオ様!レオ様!」

「ご主人〜!すごいにゃ!」


 俺はこの国の王となったのだ。



 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

 ・水   ★★★

 ・土   ★★★

 ・風   ★★★

 ・増殖  ★★★

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