第27話 ヒロイン大活躍と炎スキルの名家の滅亡

 おじいさんの言葉に全員がドン引きした。


「気持ち悪いじいさんだ」


 リーベラさんが鳥肌が立った腕をさする。


「イオちゃんがかわいそうですわ」


 ジゼルがイオをよしよしと抱きしめる。


「神獣さまに不敬よ!」


 セリスはとても怒っていた。


「イオさんに魔物の相手をさせるのは嫌ですね」


 フェイジュンがおじいさんをにらみつけた。


「さあさあ!神獣さま!」


 おじいさんは腕を広げて、こちらを満面の笑みで見ている。


「人が魔物を作るなど……言語道断!いけ!」


 土スキルの名家が守護獣ビーストに指示する。


「ご主人様、スキルが使えません」

「そうだった。神獣め……余計なことを!」

「自業自得ですわ」


 あきれたようにジゼルが言った。

 魔物はイオを狙っている。


「よし、イオ「イオさんは魔物を避けてください!」

「ん?ん?ご主人、どうするにゃ?」


 フェイジュンが先にイオに指示した。

 俺は気にしないが、みんながすごく嫌そうな顔をしている。


「うーん……。俺がいいと言うまで攻撃するな」

「わかったにゃ」

「レオはこれ!」


 セリスがどこからか持ってきたのか、剣を俺に渡した。


「私の守護獣ビーストのフォボスは泥棒スキルなの!あ、兵士から借りただけよ」


 セリスがウィンクする。


「魔術師に泥棒スキルなんて……。怖いですわね」

「ジゼルひどい!悪いことには使わないよ!」

「おしゃべりはそこまでだ!来るよ!」


 リーベラさんの鋭い声で、みんなが戦闘態勢に入る。

 ボールのような魔物が、ポーンと跳ねながら向かってくる。

 さらに四つん這いの、犬のような魔物も出てきた。


「タイタン!」

「ヒマリア!」


 タイタンの地震スキルと、ヒマリアの風スキルで魔物を蹴散けちらす。


「リーベラ、つかまえた」

「さすが、ガニメデ!うりゃあ!」


 ドゴッ


 ガニメデがつかまえた魔物を、リーベラさんが棍棒で叩きつぶす。


「ハァッ」


 ザシュッ


 鳥の魔物を、ハリブ仕込みの武術で切り捨てる。

 元人間の魔物だが、ためらうヒマがないくらい襲ってくる。


「フォボスのスキルで、コアが奪えたら良かったのに」


 魔術で相手を圧倒しながら、セリスが悔しがる。

 同じく剣で応戦しているアルベルトが言った。


「数が多すぎる。妙だ」


 ザンッ!ザシュッ!ドゴォ


「妙ってどういうことだ?」

「囚人を使って実験していると言っていた。

 こんなにたくさんいるわけがない」

「あのおじいさんが怪しいな。

 イオ!おじいさんのスキルを奪え!」

「にゃ!」

「あいつの守護獣ビーストはどこにもいないぞ!」


 アルベルトが叫ぶ。


「探索スキルの出番にゃ!

 …………見つけたにゃ!」


 イオが部屋の真ん中、湧き出る水向かって走り出す。

 イオを追って魔物が動く。

 ボールの魔物から触手がイオに伸びる。


「ヒマリア!」

「ガニメデ!」


 風スキルと拘束スキルで妨害する。


「うにゃー!」


 イオが水スキルで水源を枯らす。

 水の底にヒトデの守護獣ビーストがいた。


「ぱっくんちょ!」


 増殖スキルの効果が止まった。

 あんなにたくさんいた魔物が数匹に減っている。

 ガニメデがあっという間に拘束した。


「あぁ……神獣さま……尊い…………」


 おじいさんが両手を組んでうっとりとしている。


「本当に気持ち悪いな……。

 セリス、この魔物も元人間だ。元に戻せないだろうか?」

「この池の配置から、おそらく部屋全体が魔法陣だと思う。壊しちゃう?」

「壊すなど!私の長年の研究成果だぞ!

 魔術師たちが認めれば、歴史上の大発見なんだぞ!!」


 おじいさんがブチ切れた。


「イオ、魔力を奪え」

「にゃ!」


 おじいさんにあきれた俺は、さっさとイオに指示をした。

 きらめく光が、おじいさんからイオに入っていく。


「おぉぉ!私の一部が!神獣さまのものになるなんて……!グハァ」


 炎スキルの名家がおじいさんを殴りつけた。


「役立たずが!うぉおっ!?」


 スキをついて、アルベルトが炎スキルの名家を体当たりする。

 実の父親を池に落としたのだ。


「父上、あんたもたいがい役立たずだよ」


 もがく父親を足で踏みつけ、沈める。


「旦那様!」


 炎スキルの名家の守護獣ビーストがアルベルトを投げ飛ばした。

 スキルを使わない守護獣ビーストの戦いかたを初めてみた。

 アルベルトの体が床に転がる。


「貴様ぁ!ただではすまんぞ!」


 池から救い出されたアルベルトの父親が叫ぶ。

 アルベルトに掴みかかろうとして、突然動きが止まった。

 まるで、考えていたことを忘れたように。


「この池の水は考える力をなくす薬が入ってる。

 おれが屋敷に幽閉されていたときから、飲み物に混ぜられていたやつだ。

 イプラの薬師が飲ませた気付きつけ薬で、ようやく我に返るくらい強力な薬がな」


 アルベルトが遠くを見て言った。


「父上は忙しくて、疲れているだろう?さっさと隠居するといい」

「な、なんだと!?」


 アルベルトの父親が明らかに動揺している。

 池の水を飲んだのか、喉を押さえた。

 アルベルトが見下ろす。


「人造魔物がいるから、守護獣ビーストがスキルを奪われても強気だったのにな。

 自分が人造魔物の素材になるなんて、バカだなぁ」

「うぐ、き、きさ、は、はぁぁぁ……」


 アルベルトの父親が床に寝転んで動かなくなった。

 守護獣ビーストもピクリとも動かない。


「さよなら、父上」


 アルベルトは無表情で、廃人になった父親を見捨てた。

直後にアルベルトが倒れた。


「アルベルト!」


俺はアルベルトのもとへと走った。


「時間切れだ」


アルベルトはそう言って動かなくなった。

ジゼルが駈け寄る。


「レオくん、彼はこのためだけに生きてましたの。

もともと助からない人でしたわ。

神獣さまの回復スキルの奇跡だと、イプラの師匠が私にだけ教えてくれましたわ」

「復讐するために気力で生きていたのか……」


それはアルベルトらしいが……。

アルベルトを見るとスッキリとした顔で眠っている。

アルベルトのまぶたを降ろしてやった。


「本当に炎スキルの家は強烈な家系だな……」


俺は立ち上がり、王さまと風スキルの名家をにらみつけた。


 ◆◆◆

 アルベルトさん本当に退場です。


 読んでいただきありがとうございました。 


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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

 ・水   ★★★

 ・土   ★★★

 ・風   ★★★

 ・増殖  ★★★

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