第26話 人造魔物の研究所と神獣の狂信者

 天井や窓から魔物たちがあらわれた。


「こいつらをやれ!」


 王さまの命令でこちらを向いて襲い出す!


「人の命令で動くなんて。これが人造魔物……」


 見た感じは魔物だ。だけど王さまと四大名家をかばうような形で、俺たちへ近づく。


「趣味が悪いですわ」

「雑魚だが数が多いな」


 顔をしかめるジゼルとリーベラさん。


「イオ!」

「タイタン!」


 俺とフェイジュンが同時に命じる。


「フンッ」

「にゃ!」


 タイタンの地震スキルで足元を揺らし、床や壁の魔物を動けなくする。

 さらにイオの風スキルで、天井の魔物を落とす。

 さらに土スキルで相手を押しつぶした。


「やった!……え?」


 ミシミシと床から音がした。


 ガラガラガラッ


 2回の地震スキルで、もろくなっていたのか床が割れた。

 部屋全体が崩れ落ちる。

 俺たちも、王さまも、四大名家も、全員がさらに下へ落ちていく。


「うわぁぁぁあ!」

「嘘ぉぉ!」

「キャァァア!!」

「にゃぁぁぁあん!」


 風スキルの風圧で、イオが落下のスピードを落としてくれる。

 しかしどんどん落ちていく。地下1階よりも下へ、下へ。


「えーい!」


 セリスが全員に浮遊魔法をかけた。

 ふわりと羽のように浮いて、ようやく見えてきた地面へ降り立った。

 降りた途端にセリスが床に座りこむ。


「はぁ、はぁ、疲れた……。もうやらない」

「セリスちゃんすごいわ!」

「とっさに全員に魔術をかけるなんて、さすが最年少天才魔術師!」

「はぁ、はぁ、当たり前でしょ……。ゲホッゲホッ」

「ありがとう、セリス。助かったよ。

 イオ、回復スキルを使えるか?」

「はーいにゃ」


 回復スキルの光におおわれ、セリスがテンションをあげた。


「きゃぁぁ!神獣さまに回復していただけるなんて……!

 もう!死ねないっ!」

「いや、死なないでくれ。……ここは?」


 頭の上の小さな光から、相当な高さを落ちたことがわかる。


「あの光が、落ちてきた穴ですね」

「ここは俺が魔物にされたところだ」


 アルベルトが辺りを見回して言った。

 中心から流れる水が、長四角の池に落ちていく。


「なんだ?お前たちは?」


 奥からおじいさんが出てきた。


「おや、陛下もお越しとは」


 おじいさんが、王さまへ最敬礼をした。

 そういえば、王さまと四大名家もいたんだった。


「なんだここは!?」


 土スキルの名家がとまどう。


「あんたは誰だっけ?まあいいさ。

 ここは王宮の地下にある研究所だよ」

「あんた、だと!?貴族の顔も分からないのか!?」

「無礼な男だ」


 土スキルと水スキルの名家が怒り出す。

 話し合いのときから思っていたが、水と土、風と炎で派閥が分かれているようだ。


「あんた、国外へ追放された魔術師でしょ?なんでここに?」


 セリスがとまどいながら、おじいさんに問いかけた。


「陛下にね、救われたのさ。

 神獣さまを愛し過ぎて、自ら生み出そうとした私を、陛下がかばってくれた」


 おじいさんがイオを愛おしく見つめる。


「あぁ……。なんて愛らしいお姿。

 この世の何にも似ていない、神々しい方だろうか……」


 うっとりした目のおじいさんが気持ち悪くて、とっさにイオを後ろに隠した。


「アルベルト、懐かしいだろう。私のために、また力を貸しなさい」


 アルベルトは剣の切っ先を炎スキルの名家に向ける。


「お前を殺すためなら貸してやるよ」

「おや、ご子息は反抗期ですか」


 風スキルの名家がくすくすと笑っている。


「まあ、いい。お前の代わりはいくらでもいるんだ」


 炎スキルの名家は池を見た。

 つられて覗くと中には黒い何かが、無数にうごめいている。


「スキルを取られても余裕なんて、おかしいですわ」


 ジゼルが首をかしげる。


「あなたは……うちの親戚の娘では?」


 風スキルの名家がジゼルを見ていった。

 ジゼルがとびきりの令嬢スマイルで返す。


「人違いでは?私は生まれも育ちも、南の森ですわ」


 ジゼルは、本当に王国への未練がないようだ。

 おじいさんがウキウキと池にコアを投げ入れる。


「このところ魔物のコアが豊作でね。コアの量が多いと、魔物も良いのができるねぇ」

「私たちの努力が、こんなことに使われているなんて……」


 フェイジュンが手で顔をおおう。


「なんのために私の両親は亡くなったのですか……。仲間は……」

「ちくしょう!」


 リーベラさんが隠し持っていた棍棒で、床を思いっきり叩いた。

 ハリブの人たちは、みんなどこかに武器を隠し持っているらしい。

俺は話し合いだから、武器はいらないと言ったのに…………。


「……あの子は死んだのか……」


 土スキルの名家のつぶやきを聞き取れたのは、俺だけだった。


「あの子?」


 俺が聞き返したときに、池に沈んでいた魔物が次々と現れた。


「神獣さま。あなたの美しき姿を、ぜひ私めにお見せください」


 おじいさんがイオをギラついた目でみつめる。


「さあ、私に天罰を!!」


 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

 ・水   ★★★

 ・土   ★★★

 ・風   ★★★

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