第25話 王国との話し合いとスキル没収

 ―― 一方その王国、上層部。


「なぜ宮廷魔術師が誰もいないんだ!?」


 会議は王さまの怒号ではじまった。

 炎スキルの名家が報告をおこなう。


「騎馬族殲滅せんめつへ派兵した軍が、戻ってきました。

 宮廷魔術師は騎馬族と、ともにいるようです。」

「なぜだ!?あいつらは騎馬族など嫌っていただろう」

「どうやら、神獣が出たことで協力体制に入ったようですね」

「あいつら!好きにさせておれば、調子に乗りおって!」


 王さまの機嫌は最悪だ。

 誰もがとばっちりを食わないように慎重に話をしている。

 水スキルの名家が言った。


「魔術師が消えたせいで、魔法薬の値が上がるでしょう。しばらくして国民に影響が出始めるかと」


 風スキルの名家が冷めた目で水スキルをみる。


「そんなことは誰でも分かるでしょう。

 国民に王国の権威を示さなければ、暴動が起こります。

 そのために軍を強化しなければ」


 土スキルの名家が反論する。


「軍の強化?それでは暴動が起きることを前提としているようだ」

「神獣の暴走を止めなければ、国は混乱します。そのための備えですよ」


 平行線の話し合いに、王さまはつぶやいた。


「どうにかして、神獣をおびき寄せなければなるまい」


 高級文官が部屋へ入ってくる。


「失礼します。魔術師本部より、陛下へ手紙が届きました」


 手紙を読んだ王さまは、ほくそ笑んだ。




 王宮へ行くのはいつぶりだろう。

 半年も経っていないはずなのに、とても昔に思える。

 下っ端の文官が1人と、兵士が6人で俺たちを出迎えた。


「こんなに大きいんですね」


 フェイジュンがびっくりして、キョロキョロ周りを見ながら歩く。


「騎馬族が王宮へ入るなんて、裁判くらいだろうね」


 リーベラさんが言った。


「裁判?捕まったりするのか?」

「あたしは泥棒したとか、イチャモンつけられて、ここに連れてこられたよ。

 何も盗んでないのにさ」

「そんなことが……」


 リーベラさんはすごく嫌な顔をして教えてくれた。


 着いた部屋は広めの会議室で、四大名家と宰相、なんと王さまもいた。


 兵士が、俺たちと王さまたちの間に壁のように立つ。


「勢ぞろいじゃないか」


 リーベラさんがボソッとつぶやく。

 俺はうなずいた。


「王さまも来るとは思わなかった」


 俺たちが着席すると、王さまが話しかけてきた。


「遠いところをご苦労。

 手紙を読み、ここに話し合いの場を設けた。

 して、お前たちの望みはなんだ」


 王さまが穏やかだが、笑っていない目で問いかけた。


守護獣ビーストのスキルだけで、人生が決まるのはおかしい。

 守護獣ビーストだけではなく、その人自身の能力もみる必要がある。

 あらゆる能力は平等に扱われるべきだ」

「レオナード、お前は何を言ってるんだ!」


 水スキルの名家が俺にどなる。

 俺の父親だった人だ。


「お前は自分が恵まれなかったから、人のせいにしているんだ!

 王国でスキルは平等に扱われている!」

「それならどうして俺は追放された?

 どうして、騎馬族を迫害する?

 王宮は強力な力を、自分たちで独占したいだけだろう!」

「子供が……。ずいぶん無礼なことをいう」


 あからさまに見下した顔で風スキルの名家が言った。


「まったく、水スキルの名家はロクな者がいませんな。

 せっかくの話し合いが無駄だ」


 炎スキルの名家が俺をにらみつける。


「子供の我儘わがままに付き合っていられん!やれ!」


 王さまが四大名家へと命令する。

 それぞれが巨大なスキルを持っている四大名家。

 スキルの力は王国で一番強い。

 王さまを守るように出てきた守護獣ビースト


「ぱっくんちょ!」


 素早くイオがスキルを奪った。


「イオさんは戦い慣れしてますからね。楽勝です」

「神獣さまがスキルを奪ったから、あんたら何になるんだい?ただの名家?」


 得意気なフェイジュンと、ゲラゲラ笑うリーベラさん。


「この害獣が!」

「本当にスキルを奪うとは……」

「本当に疫病神だ」

「神獣さまに罰当たりな……!」

「だからこの国は滅ぶんだよ」


 イオへの悪口に、フェイジュンとリーベラさんが怒った。


「滅ぶ?王国が滅ぶわけはない!

 王国は永遠だ!揺るぐなど……たわけたことを!許さん!」


 王さまが怒りだす。

 兵士が武器を構えた。


「タイタン!」

「ガニメデ!」


 タイタンの地震スキルで、兵士たちの足場を崩す。

 続けてガニメデの拘束スキルで、あっという間に兵士たちを羽交い締めにした。

 そのとき、かくれていたジゼル、セリス、アルベルトが顔を出した。

 もしもの時のために、かくれてもらっていたが、フェイジュンとリーベラさんが強かった。


「あら、良いところを取られちゃいましたわ」

「ここの兵士以外は魔術師が抑えたよ!」

「父上……」


「アルベルト!?お、お前、なぜここに!」


 炎スキルの名家が明らかに動揺している。


「俺のことを、思ってくれてありがとう。

 おかげで未練なくお前を殺せるよ」


 アルベルトは剣を抜いた。


「殺すなよ」


 俺の注意にアルベルトがうなずく。


「分かってるさ。

 あはは、あいつら腰を抜かしてるぜ!」


 自分の父親が腰を抜かしているのを見て、笑うアルベルト。


「あ、悪魔」

「自分の子供を魔物に作り変えたやつに言われたくないな」

「それを言うな!」


 アルベルトの父親が絶叫する。


「魔物に作り変える!?」

「人造魔物の計画はあったが、あれは禁術だ。

 反対されて終わったはず。なぜ今も!?」


 水スキルと土スキルの名家が声を上げた。


「いつか神獣があらわれるのは分かっていた。

 何年経っても人工の守護獣ビーストは作れなかった。

 その変わりの人造魔物計画です」


 風スキルの名家が冷静に言った。

 炎スキルの名家もうなずいた。


「全ては王のため。この国のためだ」

「ならば、俺たちはそれを壊す」


 俺は高らかに宣言した。


 ◆◆◆

 夜の更新はお休みします

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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

 ・水   ★★★

 ・土   ★★★

 ・風   ★★★

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