第24話 嫌われるアルベルトと魔術師本部でのお披露目

 アルベルトとも仲直りできたので、今後の計画をみんなで考えることにした。

 温泉から出て、イプラの村へもどる。

 アルベルトは、なぜか女性陣に嫌われていた。


「全員がにらみつけてくる」

「お前は悪役だからな」


 優越感を感じつつ、アルベルトと話し合ったことを提案した。

 もちろん過激なことは隠して。


「王国に攻めるなら、あたしは行くよ!」


 リーベラさんはノリノリだ。


「王国じゃないから。王と四大名家を倒すだけだから」


 慌てて俺は訂正する。


「しかし、王国の武器や魔法は、騎馬族の何倍も強いです。

 いくらイオさんがいても立ち向かえないのでは?」


 フェイジュンは圧倒的な武力差を指摘した。

 確かに移動して生きる騎馬族は、工房を持てない。

 それに加えて、大量にモノを作ろうとしても、倉庫も持てない。

 また王国が騎馬族に本を売るのを禁止している。

 学術的な情報がまったく入ってこないのだ。


「私たち魔術師が支援するから、楽勝でしょ!」

「私はお薬を作って、レオくんのお手伝いをしますわ」

「セリスとジゼルは王国の人間だろう?そんなにノリノリでいいのか?」

「魔術師は神獣さまを中心に考えるから、王国とかどうでもいいわ」

「私は貴族籍を消されているので、王国で生きることはもう出来ませんもの。

 どうせなら好きな人に尽くしますわ」


 胸の前で手を組み、俺を見つめるジゼルに、リーベラさんとセリスがヒソヒソ話をする。


「ジゼルはお嬢さまのクセにガンガンいくねぇ」

「ジゼルって肉食よね」

「軍隊なら俺が詳しい、ある程度の動きも予想できる」


 そうアルベルトが話した途端に、全員がそっぽを向いた。


「まあまあ、炎のスキルの名家は、王国軍の総司令官も兼ねてるから……。

 王宮内部なら、四大名家だった俺も多少は分かるから大丈夫だろう」

「えぇ!?」

「はぁぁ!?」

「きゃー!エリート一族!?」

「あらぁ!?」


 四人ともあんぐりと口を開けた。


「あれ?言ってなかったか?」


 俺はすっかり騎馬族に馴染んでいたから、全部話していると思っていた。

 簡単に事情を話すと、みんな怒ってくれた。


「そんな異常な国おかしいです!滅ぼしましょう!」


 フェイジュンが一番ヒートアップしていた。


「じゃ、さっそく転移魔法で行きましょ!」


 セリスが、みんなの意見を聞かずに転移魔法を発動させた。


「本当に魔術師は変です!」


 魔術師本部の部屋にまたやってきた。

 いきなり転移させられたフェイジュンが叫ぶ。


「俺も引き継ぎがまだ……」

「私がジーウェイくんに手紙を飛ばしますよ!」

「またここかい」

「魔術師は世間のルールなんて知りませんもの」

「今日はクサくないにゃ!」

「神獣さまのために、消臭を徹底しましたから!」


 ドアが開いて、魔術師の男が入ってきた。

 以前も会った男だ。


「おかえりなさいませ。神獣さま、我が王よ」


 それから魔術師の集会に呼ばれた。

 いつものように、いきなり転移魔法だ。

 ローブを着た様々な人間が、大広間に集まっている。

 俺はイオと魔術師の男と壇上にいた。


「こんなに魔術師がいるのか」

「にゃ」


 俺のつぶやきは静かに消えた。


「我らが王と神獣さまがいらした」


 魔術師の男の言葉に、魔術師の集団が、静かに頭を下げた。


「偽りの王を玉座より引きり降ろし、真の王を玉座にえる」


 壇上に大魔術師が上がった。

 王国で一番の魔力を持つ、偉大な魔術師。


「これより我らは王宮より手を引く。これからは、我らが王と共に」

「「「王と共に」」」


 その後、魔術師たちは消えた。


「集会は終わりました。戻りましょう」


 そう言ってまた部屋に戻された。


「どうでしたか?」


 ジゼルがおそるおそる聞いてくる。

 フェイジュンは手紙を書いていた。


「なんかすぐ終わってしまった……?」


 ありのままに答えるとジゼルとリーベラさんは首を傾げた。

 セリスが戻ってきた。


「集会の終わりの顔見せでしたから。

 魔術師は王国から手を引きました。

 大魔術師さまは、騎馬族との協定を結ぶそうです。

 宮廷魔術師たちが、騎馬族の土地を元に戻すために派遣されました。

 草原を焼き尽くしたなんて、幼稚ですね」

「ありがたいんだけど……。やっぱり強引なんだよね」


 リーベラさんが呆れている。

 そこから魔術師の転移魔法で騎馬族と行き来して、恐ろしいほど早く復興ふっこうを終えた。


「騎馬族はみんな元の場所に戻ったよ」


 俺がフェイジュンとリーベラさんに伝えると、二人ともホッとしていた。


「それから、王宮との話し合いの場を作った。

 証人としてふたりとも来てくれ」

「分かりました」

「ドンパチしないのかい?」


 リーベラさんは不満げだ。


「最初に話し合いをするのが王国のルールだから」

「お父さんに会うの、怖くはないですか」


 フェイジュンが心配そうだ。


「あの人はもう父親じゃないから」


 俺の覚悟は決まっている。

 いよいよ王国を変えるのだ。


 ◆◆◆

 読んでいただきありがとうございました。 


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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆

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