第29話 新国王の仕事と再びラカータの村へ

 国王を倒し、この国の王となった。

 総督そうとくとして騎馬族をまとめていたときから、薄々王国のことも治めなければならない気がしていた。


「ご主人?どうしたにゃ?」


 それはイオとともにいるからだろう。


「これからどうしようって思っただけだ。イオはどんな国がいい?」

「美味しいものが食べられる国にゃ!」


 白いネコミミをピンッと立ててイオが言った。


「食いしん坊だなぁ」

「たくさん食べるのはいいことにゃ」


 コンコン


「レオ様。お時間です」


 魔術師の男が迎えにきた。

 一応、俺の側近にあたる。

 セリスが側近になりたがっていたが、フェイジュンとジゼルとリーベラさんの反対があった。

 ちなみに全員騎馬族へ報告に行っている。


「分かった」


 王国に居場所がない俺は、王宮の客間に住むことにした。

 王の部屋が、前王が住んでいたときのままなので、改装が行われるまでの間だが。


「宰相たちと今後の王国の道筋を決めていただきます」

「前王を倒した俺を受け入れるだろうか?」


 武力革命のようなものだし不安だ。


「ご安心ください。我々がいます」


 魔術師の男は怪しく微笑んだ。


「……怖いんだよなぁ」

「何かおっしゃりましたか?」

「なにも」


 王宮の奥から執務スペースへと向かう。

 行事で王宮に来たことはあったが、見慣れない景色ばかりだ。


「迷子になりそうだ」

「イオがいるにゃ」

「さすが神獣さま。心強い」


 会議室は以前入った部屋とは違う部屋だった。

 兵士が開けた扉をくぐる。


「陛下のご登場です」


 その一言に、ずらりと座る宰相や大臣たちが立ち上がり、こちらを見る。

 重苦しい雰囲気に、気持ちがひきしまった。

 一番立派なイスに座る。


「レオ新国王。私は宰相です」


 一人の男が俺の前へきて、自己紹介をした。

 それを合図に、次から次へと家臣たちが俺にあいさつに来る。

 知っている人も、知らない人も、全員を頭の中に記憶する。

 全員の自己紹介が終わると宰相がまた俺の前にやってきた。


「新国王よ。我々はあなたのことを信用していない」

「そうだろうな。いきなり来た奴を、すぐに信頼するのはバカだ。

 少しずつ信じてくれればいい。

 宰相、政治は任せる。だが、不正は見逃さない」


 水スキルの名家は文官のトップだ。

 俺も将来のために、政治の勉強を行っていた。

 実際の政治とはまた違うだろうが、全然分からないよりもマシだろう。


「疲れた……」


 部屋に、戻ってソファに倒れ込む。


「退屈だったにゃ」

「話し合いだらけだからな。でも騎馬族のときとは全然違う」


 騎馬族みんな協力的だったから、楽だったんだろう。


「ラカータのご飯食べたいにゃ。魚の干物

 も欲しいにゃ」

「みんなどうしてるかな……」


 スッ、と魔術師の男があらわれた。


「騎馬族のもとへ、行きますか?」


 びっくりするけど、慣れてきた登場にうなずく。

 あっという間にラカータの村へやってきた。


「レオさん!イオさん!」


 フェイジュンが走ってくる。


「久しぶり、じゃないか。騎馬族がどうなってるのか見にきた。あと、おババさまに会いに」

「ご飯食べたいにゃ」

「まだまだご飯の時間まであります。ジーウェイもでかけていますので、先におババさまに会ってはどうでしょう」

「分かった」


 フェイジュンはにっこり笑って言った。


「レオ国王。ご即位おめでとうございます」

「フェイジュン、ありがとう」


総督そうとく、国王になったんだって?やるなぁ」

「王さまおめでとう!」


 おババさまのところに向かうまでに、様々な人に祝われた。

 守護獣ビーストが集まっているおババさまのテント。

 魔術師の男にはここで待ってもらう。


「おババさま。レオです」

「お入り。元気にしていたかい?」

「おかげさまで。おババさまたちも、ご無事でなによりです」

「それで、なにが知りたい?」


 ズバッと本題に入るおババさま。


「王を倒しました。王国のトップは俺です。

 俺は王国を、スキル差別がない国にしたいんです。

 でもどこから手をつければいいのか……」


 頭の中のこんがらがったことが形になっていく。

 おババさまと話をすると、どこか落ち着くのだ。


「ほうほう、お前は少しずつ、神獣さまのために動いているだね。いいことだ。

 …………そうだね、まずは王宮の弱きものを助けるところからはじめなさい」

「王宮の、弱きもの」

「強いスキルの守護獣ビーストがもてはやされる影で、弱いスキルの守護獣ビーストがつらい目にあっているだろう。

 手が届くところから、少しずつ変えるんだよ」

「少しずつ、ですか」

「そう。あせって大きな変化を求めるのはおよし。

 急な変化に着いてこれるものは少ない」


 俺は宰相の言葉を思い出す。

“新国王よ。我々はあなたのことを信用していない”。

 思わず苦笑いしてしまった。


「王さまを倒したのは急な変化ですよね……」

「そうだね。しかし、起こったことはしょうがない。

 これからをゆっくり、確実に進みなさい」


 優しいまなざしのおババさまに励まされて、俺は思いを新たにした。


 ◆◆◆

 第2章はじまりです。

 読んでいただきありがとうございました。 


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