第18話 巨人魔物 VS スキル付きレオ

「レオ総督そうとく!大丈夫か!?」

「何だありゃ!」

「あんなの見たことないぞ!」


 無事に戻ってきた村人たちが口々に俺に話しかける。

 元気な様子にホッとした。


「俺は無事だ。それより、そっちにケガ人いないか!?」

「イオさんに回復してもらいました。あれは……」


 フェイジュンが魔物をみすえる。


 ドシン……ドシン……


 魔物が足をつけた瞬間に、地面が割れていく。

 魔物がやってきた方向をみると、ボコボコと盛り上がった土や深い亀裂が、たくさん出来ている。


「これは地割れスキル!」

「近づくのが難しいな」

「にゃ!」


 イオが、ツタを生やして魔物を拘束する。


 ブチブチッ!


 魔物は軽々とツタを引きちぎった。


「にゃにゃ!」


 筋力増強スキルで飛び上がって蹴りあげる。


「無傷にゃ!?」

「イオのスキルが効かないなんて……。そうとう強いな」

「体も硬いな。何もなかったように動いている」


 ドンッ


 大きな音が敵陣から聞こえた。


「大砲か!」

「まったく効いてません」

「しかし攻撃してこないな。歩いているだけだ」

「おそらく踏みつぶすのが魔物の攻撃でしょう」


 敵陣の方が魔物に近い。

 敵陣から守護獣ビーストが飛びだして、魔物に襲いかかる。


「イオにスキルを奪われてもまだ戦うのか……」

「みんな、ご主人が大事なのにゃ」


 当然のようにイオが言った。


「スキルを返してやってくれ」


 このまま見捨てることは、俺には出来ない。


「了解にゃ!」


 たくさんの柔らかな光が守護獣ビーストたちへと飛んでいく。


「このままだと俺たちも危ない。いったん王国軍と共闘しよう」

「分かりました」


 ジーウェイの指示で数人の村人が伝達に走る。

 捕らえていた王国軍も解放して、スキルも戻してやった。


 ボコンッ


 変な音がして振り返ると、魔物の脚が穴にハマっていた。


「土の下が空洞だったのか」


 すぐに共闘への指示を出す。

 となりのイオがぼんやりと突っ立っている。


「イオ?」


 返事がない。

 魔物がハマっている穴のほうを、じっと見ている。


「レオ総督そうとく!準備が整ったぞ!」

「分かった!」


 いつもと違うイオに戸惑うが、いまは非常事態だ。


「魔物が動けない、いまがチャンスだ!

 あらゆる攻撃を試して弱点を探ろう!」


 騎馬族の首領がそろっているのに、誰も見たことがない魔物。

 消耗戦になることは間違いない。


 敵陣より一歩手前で立ち止まった魔物に、王国兵と騎馬族が立ち向かう。

 意外なことに、捕らえていた兵が王国軍と騎馬族の間に入って、スムーズに攻撃が出来るように協力してくれた。


「本当にありがたいな。捕まえて、スキルまで奪ったのに……」

「イオさんのおかげですよ。王国のひとにも回復スキルを使ってくれましたから。

 おかげで色んなことを教えてくれました」

「そのイオは、何だか様子がおかしいけどな」


 フェイジュンがイオを心配そうにみつめる。


「スキルの使いすぎで疲れたのでしょうか?」

「それもあるかも知れない。イオは休ませて、俺たちで出来ることを探そう」

「はい!」


 いまだに穴から抜け出せない魔物だが、少しずつ脚が穴から抜けでている。

 カモメの守護獣ビーストが竜巻スキルで

 魔物の顔面を狙ったとき、魔物がよけるような動きをみせた。


「初めて避けた。顔を攻撃させるのが、嫌みたいだ」


 ほかの守護獣ビーストたちも気づいたのか顔を狙っていく。

 魔物は脚を抜こうとするのをやめた。

 片手で顔をおさえながら、もう片方の手で地面を払うように動かしている。


「あまり攻撃しすぎると、村人が危険です」

「じれったいな。俺にスキルがあればいいのに。たぶん、目が弱点みたいなんだ」


 しかし魔物の手を避けるのが精一杯なので、守護獣ビーストたちが攻撃にうつれない。


「んー?ご主人もスキル欲しいにゃ?」


 さっきまでぼんやりとしていたイオが俺をみている。


「もらえるなら、欲しいかな……?」

「じゃあげるにゃ」


 ふわっと光が俺を包む。


「な、これは!?」

「この光……スキルですか!?」

「筋力増強スキルにゃ」


 エネルギーのかたまりが、体の中を駆けめぐる。

 試しに足に集中させると、どこまでもジャンプ出来そうな気がした。


「ひとっ飛びで動けるそうだ」

「動けそうじゃないにゃ。動けるんだにゃ」

「総大将が動くなんて……。ガセーラの首領に怒られるな」


 そういって俺は魔物に向かって走り出した。

 あっという間に野営地を抜ける。

 速すぎて誰も俺を止められなかった。

 敵陣近くで、王国兵の剣を拾った。


「近くでみると大きいな。」


 家より大きな魔物に一瞬、恐怖を感じた。

 しかし俺には絶対に倒せる自身がある。

 距離を測って大きくジャンプした。


「なんだこれ、めちゃくちゃ高いぞ!」


 そのまま魔物の足を蹴って、どんどん上へ登っていく。

 腕へ飛び移り、さらにジャンプすれば、あっという間に魔物の肩に到着した。


「気持ち悪いな……」


 近くでみる魔物の顔は、人間に似ていて、人を傷つけるような嫌悪感がある。

 魔物の目は守護獣ビーストの攻撃のせいで閉じている。

 そのため、俺に気づいていないようだ。


「何をするの?」


 カモメの守護獣ビーストが俺にたずねる。


「目に剣を差し込みたい。合図したら、竜巻スキルで手伝ってくれ」

「分かったわ」


 カモメの守護獣ビーストは、ほかの守護獣ビーストにも伝えにいった。

 魔物の顔への攻撃がやんだ。

 おそるおそる手を外して、動きが止まった。

 周りの様子をうかがおうとしている。

 ……もうすぐだ。


「……」


 ツバを飲むことすら、ためらってしまう。

 安心したのか、また、穴から足を引き抜こうと動き出した。


 ゆっくりと、顔を上げる。


 まぶたがピクピクと動いた。


 少しずつ、目が開いていく……。


 ……いまだ!


 悟られないように手で守護獣ビーストに合図する。


 肩から思いきり飛び上がって、槍投げのように剣を魔物の目に向かって投げた!

 剣のスピードを増すように、竜巻、風圧弾が放たれる。

 反対の目にも火炎弾、大砲など、あらゆるスキルや砲撃が放たれた。


 カエルの守護獣ビーストであるガニメデが、近くにいて舌を伸ばす。

 俺は無事に回収された。


 ドドドッ!!!


 ものすごい轟音ごうおんが響いて、魔物が膝をついた。

 危ないので、ガニメデと一緒にジャンプして逃げる。


「ガニメデ、ありがとう」

「うん」


 そのまま動かなくなった魔物は、砂のようにボロボロと崩れていく。

 砂煙のなか、最後には大きなコアだけが残った。


「このコアはどうするんだろう」

「さあね」


 マイペースなガニメデと仲間のもとへ帰る。

 少しずつ晴れていく砂煙をくぐれば、敵も味方も問わない歓声が、俺をむかえてくれた。



 ◆◆◆

 魔物のサイズを盛大にミスっていました。

 ごめんなさい。

 

 読んでいただきありがとうございました。 

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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★


 騎馬12部族

 王国の街に近い……ラカータ、ハリブ

 荒野……マカヴォイ、ネゼオ、ハルシェ

 海の近く……ガセーラ、コネン、ストレ

 南の森……イプラ、ヴァノフ、タウロケ、ラナード

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