第19話 レオの勝利と先代神獣のお墓

 騎馬族の野営地と王国軍の野営地の真ん中あたりにみんなが集まっていた。

 俺が近づくと二手に割れて、俺のための道ができた。


「レオ総督そうとく!レオ総督そうとく!」


 騎馬族も王国軍も関係なく、こぶしを上げて俺の名前を叫んでいる。


「うぉぉぉおお!!!」


 みんなに手を上げて答えると、雄叫びがとどろいた。


「すごい人になった気分だ……」

「すごい人になったじゃなくて、すごい人だろ。あんな化け物を守護獣ビーストじゃなくて、人間が倒したんだ」


 ハリブの首領が俺の肩を小突く。


「ご主人ー!」


 イオが俺に飛びついた。

 ゴロゴロと喉を鳴らすイオを抱きしめ返す。


「イオ、ありがとう。おかげで倒せた」

「ご主人なら当然にゃ!」

「見せつけてくれるねぇ」


 横からリーベラが冷やかす。

 リーベラのほうを向くと、頬を赤くして目をそらしてしまった。


「リーベラ、リーベラ。頑張ったよ」


 ガニメデがぴょこぴょこ飛んでアピールする。

 リーベラも、ガニメデを撫でまわす。


「ガニメデ!あんた最高っ!」


 そんななごやかなムードの中、兵士とは違う鎧をつけた人がこちらへ近づいてきた。

 兜を脱ぐと意外に若い。

 30歳くらいの男の人だ。


「レオ総督そうとく。少しよろしいかな?私はこの軍をまとめていた大尉だ」

「なんでしょう」

「降伏の申し出る」


 周りを見回した。首領たちは頷いた。

 王国軍の兵士も戦う気は失せている。


「分かりました。受け入れましょう」

「こちらの蛮行を許してほしい」


 頭を下げる大尉に、ストレの首領が割って入る。


「草原を焼き払ったのは許せない。きっちりと落とし前をつけてもらおう」

「そのつもりだ」


 それからは主に首領たちを中心に、今後をどうするかを話し合うことになった。

 騎馬族の野営地へ大尉とその補佐を連れて行く。


「なんと!王国の野営テントとはまた違う。

 居心地がいいな」


 大尉が物珍しそうに騎馬族のテントのなかを見回す。


「そりゃ良かった。イスなんて無いから適当に座ってくれ」


 ヴァノフの首領が大尉たちをうながす。

 俺の正面に座った大尉はしげしげと俺を見つめた。


「君は貴族の出かな?」

「どうしてですか?」

「なんとなく、貴族にいそうだ」


 イプラの首領が俺のかわりに答える。


「騎馬族は、大昔から王国を追い出された人間を迎え入れてきた。

 貴族はよく追い出されてるからな。騎馬族なら誰でも貴族の血が入ってる」

「皮肉なことだ」


 複雑な顔をした大尉と、改めて降伏の条件を詰めることになった。

 話し合うこと二日目。

 ようやく着地点が決まると、大尉の補佐が書きとめた条件を読み上げる。


「それでは、草原の回復、移動式砲台と王国の技術の譲渡、魔物狩りのノルマの撤回、街への通行料金の撤回、薬品の購入時の追加課税の撤回……以上でよろしいですか?」


「詰め込みましたね」


 俺がつぶやくとヴァノフの首領がニヤリと笑う。


「こういう時に言っておくんだよ。言うだけタダだ」

「さすが、商売上手のヴァノフだよ。

私らだけでは、ここまで押し通せなかった」

「南の森の珍しい薬草は、王国でも高値で売れるからな。

 安く買われないように、交渉することは大事なんだ」


 ガセーラの首領が、ヴァノフの首領の言葉に力強く頷いていた。

 交易をしている部族は、そういう力にも長けていないといけないようだ。


「話し合いばっかりだと、肩がこるなぁ」


 俺は伸びをしながら草原を歩いている。


「イオは回復したり、お片付けのお手伝いで楽しいにゃ」


 ある程度メドが立ったところで、休憩ついでの散歩だ。

 魔物があけた大穴を見にきた。

 魔物のコアは、宮廷魔術師が魔物封じをしたので安心ではある。

 どうするかはまだまだ決まっていない。


「穴の中はまっくらだな」


 イオのようすが変わったところなので調べに来たが、よく分からない。


「ここは神獣のお墓にゃ」


 イオが教えてくれる。


「イオのお墓……」

「イオじゃないにゃ!イオの前の神獣にゃ」

「イオは生まれ変わりなのか」

「そうにゃ。大昔のお墓だから埋まっちゃってるにゃ」

「なにか、感じるのか?」


 俺はイオの白いネコミミが、いつもどおりピクピク動くのを見ている。


「懐かしいと思ったにゃ。

 前の神獣は、王国に負けないように守護獣ビーストをあげたのにゃ。

 でも守護獣ビーストまで王国に利用されるようになっちゃったにゃ……。

語り部たちには申し訳ないにゃ」


 イオは悲しそうに話す。

 イオには先代の神獣の記憶もあるようだ。


「そうか」


 野営地へ戻ろうとしたその時。


「レオ総督そうとく、すべて終わったかな?」


 俺の腕をつかむ、あの時の魔術師がいた。

 そのまま俺は転移魔法でどこかへ飛ばされた――。



 ◆◆◆

 次はお久しぶりのアルベルトです

 

 読んでいただきありがとうございました。 

 続きが気になる!イオかわいい!レオはどこへ飛ばされるの!?と思われましたら、

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 ◆◆◆


 イオのスキル

 ・炎   ★★★

 ・素早さ ★☆☆

 ・回復  ★★★

 ・筋力増強★★☆

 ・大食い ★★★

 ・風   ★☆☆

 ・探索  ★★☆


 タイタンのスキル(フェイジュンの守護獣ビースト

 ・地震 ★★★


 ガニメデのスキル(リーベラの守護獣ビースト

 ・拘束 ★★★


 騎馬12部族

 王国の街に近い……ラカータ、ハリブ

 荒野……マカヴォイ、ネゼオ、ハルシェ

 海の近く……ガセーラ、コネン、ストレ

 南の森……イプラ、ヴァノフ、タウロケ、ラナード

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