Day3-16 夜、寮の自室で


日が沈む前には寮に帰ってきた。



しかし、今日は書くことがいっぱいあるな……。


でも、まだ時間はあるし。


ちょっと休憩するか。


(夏休みの宿題はギリギリまでやらないタイプ)




部屋の中にはベッドがあり、その脇にテーブルがある。


何の変哲もない小さめのテーブルだが、上面には金属の板が取り付けてある。


30センチくらいの正方形で、色は白っぽい銀色。


見えにくいのだが、そこからホログラムのように、うっすらと魔法陣が浮かび上がっている。



これは『魔法の転送板』らしい。



最初は気が付かなかったので、関係のないモノを置いてしまった。


そうすると 『ここには不要なモノを置かないでください』 と警告が表示された。


手で触れてみると、別の文字が浮かび上がり、取り扱い方法が表示された。



主な使い方としては、洗濯をお願いしたり、食事を受け取ったり、備品を送ってもらったりすること。


洗濯の場合は、洗ってほしい服をカゴに入れて、転送板の上に置く。


手でサインを送ると、カゴごと消えてしまう。


翌日には綺麗になった服が現れている。



朝は既定の時間になると、朝食が乗ったトレーが送られてくる。


食べ終わった食器などは送り返す。


非常に便利である。



今日はまだ早い時間なので、晩ご飯の希望を書いた紙を送れば、多分リクエストに応えてもらえるだろう。


備品も送ってくれるそうなのだが、トイレットペーパーとか石鹸とかのことだろう。



他のものが欲しいと言った場合、どれくらい対応してもらえるんだろうか?


ちょっと試してみよう。



明日はネレアのコンサートだ。


出会って日が浅いということもあるけれど、僕はあまりにもネレアのことを知らない。


一応、ネレアは僕の中で一番の彼女なのだから、予習をしておいた方がいいだろう。



紙に『ネレアに関するモノ』と書いてみた。


転送板の上に紙を置くと、すぐに消失する。


1分ほどすると、音もなく以下のものが出現した。




・ネレアの写真集



・四角い宝石のようなモノ



・女性用の下着




……えーと



1つ目はいい。見るからにネレアが載っている。



2つ目は何だ?


形はサイコロ。緑色で透明感があり、キラキラしている。


手をかざすとホログラムが浮かび上がった。


ネレアだ。


同時に音楽が流れ始め、小さいネレアの立体映像が歌い始めた。


これは音楽を聴くための魔道具か。


なかなかいい曲だな。



3つ目


これは……どう見てもパンツだ。


問題は、僕が『ネレアに関するモノ』と書たことだ。


これはネレアが履いていたパンツが送ってこられたのか?


いやいや、そんなことがあるわけない。


前世の日本のように、この世界でも有名人が商品を宣伝する仕事があるのかもしれない。


ネレアが下着メーカーの広告に出演している可能性もある。


それと同じ下着が送られてきたとか……?


しかし、一応、確認のため、臭いをかいでみよう。


いい匂いがする。


ネレアもこんな匂いがしていたような気がしなくもないが、確証は持てない。


……クロッチ部分に染みがあるような気がする。


結論はで出ない、パンツは保管しておこう。



お茶でも飲みながら、ネレアの写真集を拝見しよう。



「ヘイ、転送板!お茶を入れておくれ」



冗談で言ったつもりだったのだが。


なんと転送板には音声認識機能もあった。




ーーーーー




紅茶を飲みながら、ネレアの写真集を見てみる。


形や大きさも、日本の本屋でよく見かけるグラビアアイドルの写真集と変わらない。


だが、この写真集も魔法で加工してあるようだ。


本の厚さに比べて、実際のページ数が圧倒的に多い。


開いても開いても次のページが出てきて、全部で何ページあるのかが分からない。


一見、写真のように見えても、動画のように動き始めたりする。


いきなり音声が流れた時はビクってなった。



写真集には今よりも少し幼いネレアが載っている。かわいい。


初めてコンサートを成功させたネレア。少し自信を付けたようだ。


孤児院に慰問するネレア。子供に微笑みかける彼女は聖母のようだ。


いろんな写真が続き、ついには今の学園に入学したネレア。



……えらく最近ことまで載っているんだな。


いつ発売された写真集なんだ?



校門の前で少し緊張した表情のネレア。


入学式の最中のネレア。


教室で僕に告白した時のネレア。



……って、オイオイオイオイ!


この写真集に僕も写ってるんだけど?


どーゆーことだ!?


誰が撮影していたんだよ?



つーか、何だよこの写真集!!


誰が作ったんだ!


そもそも売り物じゃない可能性も出てきた。




ーーーーー




急に部屋の扉がノックされた。


僕の返事も待たずに扉が開く。



「……エルナ!?」



今朝に続き、押しかけメイドがまた僕の部屋に入ってきた。



「ご主人様、お忙しいところ申し訳ありません。奥方様が来られました」


「ちょっと待って!……え、奥方さんって誰?」


「第一夫人のネレア様ですよ」


「結婚してねーし。つーか、扉は返事を待ってから開けろよ」


「すみません、手元が狂いましたか?パンツを汚してしまいましたか?」


「うるせえ!大丈夫だよ」



ビックリした。


こいつ僕が部屋で何をしていたかまで知ってやがる。


ネレアの写真集だけど、僕の登場するページはいただけないものだったが、トータルで見たらそれはシコいこと間違いなかったので。


つまりはネレアをおかずに、シコっていただけで。


ネレアのものであろう下着を使って、シコシコしていたわけで。



……でもまあ、日記を書いているところは見られなくてよかった。



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