第11話 「今年は、6月なのに、40度を超えました。ありがとうございました」 彼女は、礼儀正しかった。「でも…、もっと、きれいになりたいかな♡」

 蚊との戦いは、ひどい夏。

 「かゆい!あっち、いけ!」

 ぷうん…。

 「蚊取りは、効いていないのか?」

 ぷうん…。

 「シャインニングアタック!」

 「うるせえ!…今、何時だと、思っているんだ!」

 となりの部屋にいたらしいおじさんが、怒鳴り込んできた。頭に、きた。

 「…申しわけ、ありません。リア充のやつに、だまされていたんです」

 「…そうか。それなら、仕方がないな」

 おじさんは、捨てゼリフとともに、帰っていった。

 「…ちっ。俺のとなりのエイリアンって、ゆ×りだったのかよ」

 その言葉が、妙に、気になった。

 ネットで見たら、「となりのエイリアン」っていうのは、ゆう○まさみっていう人のマンガのタイトルだったことがわかった。

 「面白、かっこいいぜ!」

 頭にきて、蚊を、追いかけ回し続けた。

 「こいつめ!ミツバチと、まぎらわしいじゃないか!」

 ひっぱたいてやったことがあった。

 「ぺひ!」

 …え、ぺひ?

 完全には、命中しなかったらしい。

 ただ、その蚊の足のほうは、叩くことができたかな?おなかの部分も。蚊からは、血が、出ていたはずだ。

 「そういえば、そのときも、ミツバチのような蚊の相手を、したわけだが」

 夏の夜は、ミステリー。

 「思い出すな。お尻に針をもつ、黄色のしましま模様の変なやつを、叩いたんだったよな。蚊の世界で、流行っている姿なのか?」

 日本の夏は、おかしく、なりそうだ!

 「あの…」

 「…」

 「聞いていますか?」

 「ああ、はい!」

 「今年は、6月なのに、40度を超えましたよね」

 「はい、はい」

 「ぞうきん、ありがとうございました」

 モスキー子ちゃんは、意外に、礼儀正しかった。

 「私…。はあ、はあ…」

 「…」

 「はあ…ああん」

 「…」

 「もう、私…。きれいに、なりました」

 「…」

 「でも」

 「え?」

 「私、もっと、きれいになりたい」





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