最終話 幸せに。


眼前にはビッグバンツリーモス


回りには駆けつけてくれた仲間たち



(ふぅ。きっとこれが最終決戦か。…心臓の鼓動が早い。手が震える。怖い。でも楽しくて仕方ないな。これが武者震いか…。)


聖一は怯えや恐れよりも興奮が勝つ。



………聖一………


聖一の頭には合体した天使から声が聞こえる。


………おそらくビッグバンツリーモスを倒すには眉間に魔力のこもった刃を突き立てる必要があるわ………


(眉間にねぇ。)


………しかも眉間にしっかりと刺すには今持っている武器ではダメかもしれないわね………



(え?!じゃあ、勝てないのか!???)


そこへスミフが駆け寄る。


「聖一!!!これ!」


スミフからダガーが渡される。


どうやらビッグバンベヒーモスの素材とミスリルを合成して出来たダガーを何度も打ち直して、そこに魔力が付与してある。


「これならアイツにも歯が通るはずだよ!しかも魔力を付与してあるよ。」



「おいおいおい。これ今必要なやつだよ。仕事が出来すぎて怖いよ。」



(よしこれでアイツの眉間にたどり着ければ勝てる。)


スミフから新しい武器を受け取り気合いが入る聖一。





「皆ありがとう!!本当に感謝する!!それで作戦なんだけどさ…。」


「その前にこれたべてなの!」


暖かいシチューを聖一に食べさせるジャイの娘のムスメ。



「ありがとう。元気が出たぞ!


…あ、それで作戦なんだけど……。」









ビッグバンツリーモスは三千mを越える。



………外に出たばかりで魔素と邪素を練っているようね…まだ動き出す様子はないけど動き出せば勝ち目はなくなるわ…急ぎましょう………


聖一の頭に声が響く。


(動いてない今がチャンスって事だな。)








準備を終えた聖一は投石器の上に立っている。


「発射!」


少し上向きに向きを修正した投石器から岩がビュンと勢いよく上空に向けて発射される。


放物線の頂点に達したところで投石の勢いそのままにジャンプをして力場を出す。


「うぉぉおーーー!」


だいたい60mくらい上空にあがったところで力場を出して着地。


(20階建てのビルくらいの高さかな。まだまだ高い場所に行かなきゃ眉間には程遠い。)


ここでブラックホールに入れていた投石器から発射されてすぐの投石をブラックホールから出す。


勢いよく投石がブラックホールから出る瞬間に投石の上に乗る聖一、ビュンと駆け出す。


勢いがなくなる前にまたブラックホールから投石を出して飛び乗り、また勢いがなくなる前に投石に飛び乗る。


投石と力場を駆使して上に登っていく。


(投石器があってよかった。ジャイがキング様の部隊にお願いしてくれたんだな。ジャイのお陰だな。)


1キロほど上空に来た聖一、力場に着地して皆がいる地上を振り返る。


もう米粒くらいにしか分からないが、ジャイが親指をグッと突き出してグッドポーズ、つまりサムズアップしてウインクしているような気がした。



(よし、ここからは!)


聖一はハイエルとママエル率いるハイエルフ達が蔦魔法を発動した瞬間にブラックホールに入れていた。


「飛び出せ!」


ブラックホールから伸びていく蔦を駆け上がっていく聖一。



蔦を駆け上がりジャンプ。空を飛んで上昇して力場に着地。また蔦を出して駆け上がっていく。


うまく蔦と力場を駆使しながら上がっていく。


(ようやく2キロってところか。)


力場を駆使してさらに上空に上がっていく。



あと眉間まで100mと言ったところでビッグバンツリーモスがピクリと動く。


「え?」


「ギャイアィアー!!!」


「やべ。」


とうとうビッグバンツリーモスが動き始める。


「頼む!!」


ブラックホールからハネビト族が出てきて聖一をつかむ。


さらにハネビト族に抱えられたマホとシャマも中から登場する。


「いくわよ!」


「いくであります!」


3人はハネビト族に抱えられながら肉迫していく。


ビッグバンツリーモスはこちらに向かう動作を見せた時、突然動きが止まった。


「え?!」


ギルマ率いる冒険者100人の魔法弓と魔法攻撃


王直属部隊精鋭300人の剣のスラッシュ、槍の投擲攻撃


アントとチチアント達の怪力投擲攻撃



これらをビッグバンツリーモスの足元に一点集中攻撃をしたことで、片ひざをついたようだ。



「いまだー!!!!」



手で覆うように眉間を隠すビッグバンツリーモス


手に向かってマホとシャマの無慈悲な攻撃が炸裂する。


「いくわよ!ピンポイントブラックホールアタック!ピンポイントブラックホールアタック!ピンポイントブラックホールアタック!」


「精霊弓ぃ!貫通と爆発!貫通と爆発!貫通と爆発!で、ありますです!」


いやがるように手をはねのける動きをするビッグバンツリーモス。


「入れ!」


マホ、シャマ、ハネビト族は全員ブラックホールに入る。


力場を出して聖一は足に力をためる。


「んぐぐ、でぇぇりゃあー!!!!!!!!!」


勢いよく飛び出してそのまま3秒間の飛行能力を使って眉間までひとっ飛びして


スルリと吸い込まれるようにスミフからもらったダガーを突き立てた。







ビッグバンツリーモスはピシピシと亀裂が入り崩れていく。


「退避!退避じゃー!!」


「まじ卍ー!」


「はしれー!」


異変を察知して、足元で攻撃していたキング様とギルマとアント達がその場から退避する。



聖一は力場を出して力が抜けた様子でブラックホールからハネビト族とマホとシャマを出す。


「やったのね?」


「やったのでありますです。」



粉々に砕けていくビッグバンツリーモス。


結合した魔素と邪素が剥がれ落ちているようだ。



最後には10mくらいの木がちょこんと残った。


………純粋な魔素だけの世界樹だわ…ここからまた大きくなっていくのね………



………この広がった魔素を使って、私のパワーで少しくらいなら奇跡を起こせるけど…なにかやってほしいことはあるかしら………



「ああ、それなら」







数年後


マホと結婚している聖一はジャイやシャマ、皆に囲まれて楽しそうにしている。


その上空を守護天使が飛び回っている。





そして地球では聖一が助けて一緒に異世界を旅していた子供の母親が妊娠している。


「ねぇあなた」


「ん、なんだ?」


「この子には、亡くなったあの子と同じ名前をつけても良いかしら?」


「え?いや…。」


「ふふふ、分かるの。あの子が帰ってきたのよ。」


「そうか、ぐす、そうか。ふふふ、ぐす。」


夫婦の間には涙と笑顔とお腹の中には新しい命があった。






………えへへ、またお父さんとお母さんの子供になれるなんて嬉しいな…聖一お兄ちゃんありがとう………





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

(連載版)巨大生物ばかりの異世界をパルクールと足場スキルで無双する。 トム・ブラウンみちお @tom_mitio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ