35話 宴

35話 宴


脳天から血を吹き出して倒れるビッグバンベヒーモス。


皆、喜びの咆哮をあげる。


「うぉぉぉーー!!!!!!」


「やったぁぁー!!!!!!」


「とうとう倒したー!!!!」


「せ、聖一が聖一が体内からやったんだー!」








皆が歓喜の声をあげるなか、1人だけ溺れるマホ。


誰も気づいていないので自力で泳いで血と脳の海から脱出する。


「おえっおげっうへっ。 ……はぁはぁはぁ。」




なかなか出てこない聖一。




ひとしきり喜んだあと少しタイミング遅れでお尻からズリュリュンと出てきた聖一。


「うおっとと。力場!あ、やべクールタイムまだ来てない。」


お尻から100mくらい自由落下する聖一。


「いててて。骨何本か折れた。」




仲間達が聖一の元へ駆け寄る。


少し遅れて血まみれのマホが登場して回復の光を聖一にかける。


「か、回復の光ぃ。ゲホ。おえっ。」


「マホありがとう!」


「おえ。いいわよ。それより聖一…やったわね!」


「ふふふ。おう!」



バチン!


ハイタッチをするマホと聖一。





ジャイが聖一のところへやってきた。


「勝鬨をあげ、くさ!…すいません。勝鬨をあげてくださいですじゃ。」



(すまん、尻穴から出てきたからな。……え、勝鬨?おおー!とか言えば良いのかな?勝ったぞー!とかで良いのかな?……え、何て言おう。)


ジャイは再度促す。


「さぁ!どうぞですじゃ!」


(えっとね、えっとね、えっとね。えっと……)


聖一の背中を叩くジャイ


「さぁ!」



「えっとねーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」



弾みで「えっとねー!」と叫んでしまう聖一であったが、なんか良くわかんないけど熱意だけは伝わったみたいで、皆もそれに反応して「おー!」と咆哮をあげている。


(良かった。なんか伝わった。)




ビッグバンベヒーモスの解体をする体力が誰も残っていないので、ダメ元でブラックホールに収納してみたら入った。


(え?入った。これ入っちゃうんだ。ブラックホールやばいな。)


まずは全員休んで数日後に解体する事になった。




「ひとまず宴だ!!!!すまんが準備の間に俺は風呂に入る!」


という聖一の言葉を皮切りに皆用意をはじめてあっという間に酒が用意された。


(フー気持ち良かった。え、もう準備できてるのか?皆…。宴までのスピードやばいな。フフフ。)


「よし!かんぱーい!!!」


皆ガブガブと酒を飲み始めた。




(本当によかった。)



マホが聖一のところへやってくる。


「聖一。お疲れ様。本当に私達………やったのね。」


「ああ。やったんだ。俺達はやったんだよ。」



命懸けの冒険の日々が頭をめぐる。



「ねぇ聖一。なんだか戦う前の宴とは全然違うわね。」



「ん?ほんとだ。みんなの笑顔に曇りが無い。戦う前の宴もみんな笑顔だったけど………やっぱり皆怖かったんだな。」


「そうね。私、みんなのあの笑顔を見たかったのかも。だからありがとう聖一。」


「え、いやありがとうだなんて。マホのおかげだよ。」



見つめ合う2人に甘い空気が流れる。


唇をそっと近づける2人。



…お、お兄ちゃんキス?!…


…キャッ!キスですか?!!…


頭の中に流れる2人の声。


「わ!」


「え?」


「ごめんなんでもない。」



再び見つめ合う2人。


唇を近づける。


するとそこへ千鳥足のジャイがやってくる。


「飲んでますか?なのじゃ~。おえっ。」




ジャイの吐瀉物がマホの頭にかかる。


「わ!」


「マホ?!大丈夫か?!」


そのままイビキをかいて寝はじめるジャイ。


顔と頭を手拭いで拭いて仕切り直す2人。



再び見つめ合う。


唇を近づける。




少し先に寸胴を持ったムスメが歩いている。


「皆~!シチューなんだから~!」


と言いながら歩いているが寸胴が大きくて足もとが見えていない。


「わ!」


小石につまずきフラフラしながら聖一とマホの所へ近づき寸胴の中のシチューをぶちまける。


ビシャ!!


マホと聖一に熱々のシチューがかかる。


「あちぃあちぃー!!!!」


「あついわねー!!!」



2人とも熱さで飛び上がり近くの小川へダイブする。




「はぁはぁはぁ。あー熱かったな。にしても良い雰囲気もなにもあったもんじゃないな。くく。ハハハッ。あー本当に良かったな。誰も死なずにこんな時間を迎えられるなんてな。…な?マホ。」


(ん?マホ?)



まわりにマホがいない。



ダイブの瞬間に勢いがつきすぎたのか頭を川底の岩にぶつけて気を失い、マホは気絶して川をプカーと流れている。



「マ、マ、マホー!」


聖一はマホを助け出し陸へあげる。


(呼吸がない!人工呼吸だ!)


マホの唇に自分の唇を当てスーハーしてはまたスーハーする聖一。


「……う、ゲホゲホ。」


(マホ!)


「よ、良かった。」



(危うく1人死者が出るところだった。)



「聖一が助けてくれたの?」


「おう。息がなかったら人工呼吸って言って口と口をあわせて呼吸を戻す方法でな……。」


「く、く、くちとくち…。」



事故とはいえ変な感じでキスをした2人は急に恥ずかしくなり顔が赤くなる。


「も、も、戻ろうか。」


「そ、そ、そうね。」


小川から宴会をしている皆の所へ戻る。


「ねぇ聖一。」


「ん?」


聖一のほっぺにキスをするマホ。



「ありがとう!」


「お、お、お、おう!」



2人はぎこちなく歩いていく。





歓喜の宴は夜明けまで続いた。

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