第8話 ワンダーエルフ族のシャマ

第8話


フードをかぶった女性1人が盗賊15人に囲まれている。


あわや盗賊に殺される瞬間マホが放ったライトニングが目眩ましになる。


「クッ!なんだこりゃあ!!」「眩しいぞ!」



走りながら聖一は問う。


「おい!なぜ襲うっ!??」


「あぁ?なんだぁあ?」「こいつらの種族は高く売れるんだ!邪魔するな!」


「は?売る?」


聖一の顔つきが変わる。


ミスリルダガーを投擲、盗賊の喉に刺さる。


「へ?…ゴフッ」


間抜けな声をあげたあと自分の状況に気付く盗賊。


先頭にいる盗賊2人に聖一はたどり着く。


猛スピードダッシュの勢いそのままに前方宙返りをしながら盗賊の頭を越える。


宙返りの途中、逆さまの聖一は盗賊の頭を掴む。



喉にミスリルダガーが刺さった盗賊がなにか言っている。


「ゴフッ、ゴフッ!」



そのまま盗賊の顔を背骨ごと引き抜いて、その先の盗賊に向かって背骨を剣のように振る。あっさり首が飛ぶもう1人の盗賊。


首からは血しぶき。


「よし。とりあえず2人。あと13人だな。囲まれてるか。」


聖一は盗賊2人を倒して、周りをぐるりと見回す。


「とりあえず大丈夫か?今助ける!」


「は、はい!!こ、股間が膨らんでますですが、変態さんでありますですか?!」


「ち、違う!とにかく助けるからな!」


「ありがとうございますです。」



「力場」


「ほえ?」


「それは君を守るシールドだ。」


フードをかぶった女性の周りにシールのように力場を展開する。



「どおりゃぁー!!!」


周りを囲む盗賊。まずは正面に向かって走り出す聖一。


「うわ!なんだお前!」



「てぃっ!っと。」



聖一は勢いのまま、立っている盗賊の胸元に着地。


力を込めて踏ん張り、次の盗賊に向けて跳躍。と、ともに盗賊の胸元が爆散する。


「いちぃ!」


5メートルほど離れた盗賊に向けて跳躍して、片足で肩に着地。


「ひぃぃっ!」


怯える盗賊の頭をもう片方の足で蹴りちぎってフッ飛ばす。


「にぃ!」


既に絶命した盗賊の両肩に両足を乗せて跳躍。


また5メートルほど離れた盗賊に向けて再び跳躍する。


頭を潰して、飛んで、また潰して、飛んでを繰り返す。


「さん!」「しぃ!」「ご!」「ろく!」「なな!」「はち!」



「お、おいおめぇら集まれ!!」


残り5人の盗賊がその様子を見ながら急いでフォーメーションを作って固まる。


「固まれば対抗できるはずだ。ぐっへへ。」



「手間が省けて助かるよ。」


足場を作り5人の頭上へ行き、ブラックホールからドラゴンの鱗を取り出す。


そしてドラゴンの鱗に乗って五人まとめて踏みつけて圧殺する。


「ぎごぐぁぶしゃー!」



「はぁ、ようやくついた。」


遅れてマホが到着する。


圧殺されて飛び散った盗賊の唇がマホの唇に飛んでいってぶつかり。口を開けた拍子に飛んできた舌が喉につまる


「ブチュー!うわ!ゴホ!おぇー!ペッペッ!」



吐き出して、そのあと信じられないという顔をするマホ。


「わ、私の、ふぁ、ファーストキスが。グスン」


「全員倒したか。うっぷ。気持ち悪い…な。」


(人をモノ扱いするこいつらを許せなかった。盗賊とはいえ人を殺めるというのは気持ちが良いものではないな。)


人の命を奪うということを初めて経験した聖一は、魔物を倒す時のような精神状態ではいられなかった。



聖一とマホ、2人が別の理由で下を向いているとフードの女性が聖一に近づいてきた。



「あの、変態さん、ありがとうございますです。」


「変態?!お、俺は変態じゃない!それより怪我はないかい?」


「はいですっ。私は大丈夫です。仲間は、その、グスン、そ、その、ふぇーん!」


女性は泣き崩れる。女性の肩に手をポンと乗せる聖一。


「その…君、名前は?」


「シャマでありますです。」


「ではシャマ。せめて埋葬してあげよう」


フードの女性シャマは涙を拭いて聖一を見る。


「は、はい!!あ、ありがとうございますです!!!」


3人で土を掘りシャマの仲間の亡骸を埋葬する。


「ほ、本当にありがとうございますです。」


「シャマまずは休もう。」


「はいです!夜営の準備をしますです。」


「ああ、いや、そのー。」


「聖一早く小屋を出してー!顔洗いたいのよ。」


「おお。」


飛び出した時にちゃっかりブラックホールに戻していた小屋を再びだす。


シュウィン!


いきなり出てきた小屋に驚愕するシャマ。


「な、な、な、なんであります、ですますですイタシマスですか?」


(めちゃめちゃ動揺してる。)


「ま、まあ中へ中へ。」


再びマホが索敵魔法をかけ直して、小屋に入っていく3人。


ひとまずマホが顔を洗い、口をゆすいでいる間に暖かい紅茶が入った瓶をブラックホールから取り出してコップに注ぎシャマに渡す。


「まあ、とりあえず飲んで。」


「すごいです。暖かいの出てきた。あ、ありがとうございますです。ズズズ。ぷはー。あ、あ、暖かい、美味しいー!さっきまで盗賊に追われてたのが嘘みたいです。グスン」


また涙ぐむシャマ


「口にあって良かったよ。改めて俺は聖一!さっきのはマホ!よろしく!」


シャマはフードを取る。綺麗な水色のショートボブからなが~い耳がピョコンと飛び出す。


(綺麗だな。)


「改めまして、ワンダーエルフ族のシャーマンをしております、シャマと申しますです。感謝してもしきれないこの気持ち!私自身をもって……え、えいです!」


自己紹介したあと放漫な胸に、聖一の顔を押し当てるシャマ。


「ほ、ほふ」


訳のわからない声をだす聖一。



そこへ、顔を洗い終わったマホもリビングに合流する。


「ちょちょちょ!なにやってんのよぉぉー!!!」


「ワンダーエルフ族は強いものに惹かれる種族!聖一様の子供をくださいませー!」


「いい加減にしなさぁーい!!!!!」


何故か聖一が殴られて吹き飛び、窓を突き破って外に放り出される。



「ナイスパンチだマホ。」


殴られて、歯茎から血が出ているのに何故か笑顔でグッドポーズをする聖一。



何事もなかったかのようにリビングに戻る。


まるで殴られていないかのような、何事もなかったような、外になんて吹き飛んでいないような顔をする聖一。


マジほっぺたなんて痛くないよー。とでも言いたげな顔で口笛を吹きながらソファに座る聖一。



え?何事もなかったことにしようとしてる?という顔を浮かべるシャマとマホ。



「さて。よし、一旦落ち着こう。シャマまずはなぜ盗賊に追われていたんだい?良ければ聞かせてくれないかい。」


「そうね。私にも聞かせてちょうだい。」


「は、はいです。」


シャマは語り始めるのであった。

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