第7話 キングドラゴンの肉

第7話


2人にエネルギーが流れ込む。かなりのエネルギーだ。


キングドラゴンの素材をブラックホールで回収していく。


マホが「…もう今日はこれ以上動きたくないわ…お願いだから身体洗わせて…グスン」


ということでブラックホールから小屋を出してマホには先に風呂に入ってもらっている。


そういえば出発前に冒険者ギルドでドラゴン系のモンスターはめちゃめちゃ美味しくて滋養強壮に優れているらしい。的なことを聞いた気がする。


(鰻みたいな感じだったら良いなぁー)


と考えながら焼いてから食べてみる。



(いただきまーす。ん!これは!)


口にいれた次の瞬間、聖一は笑顔になる。


(う、う、鰻だ!!ドラゴンは鰻みたいな味がする!ホクホクして淡白で上品な味だ!)


ブラックホールをゴソゴソしてワガマチで買っておいた、塩、酒、蜂蜜、小魚、水を煮詰めて鰻のタレもどきを作ってみる。


(お、意外といける!けど、うーんやっぱり醤油が無いと全然違うなぁ。まあ、でもこれでも充分美味しい!)


タレもどきをつけてドラゴン鰻をジュージューと焼いていたら


髪が塗れたままのマホが部屋着を着崩してる状態で小走りでやって来た。


「…な、なにを焼いてるの?!ジュルリ」


「キングドラゴン」


「え?!ドラゴン?!へ、へぇ。こ、こんなに美味しそうな匂いなのね。えへへうふふジュルリ」


「食べる?」


「ええ!」


「ほい」


「パクっ。ぐ!ぐぐぐ!」


キングドラゴンの蒲焼きもどきを口にいれたマホはしゃがみこむ。


「マホ!大丈夫か!!!??」


「う、う、うまいわねぇ~。」


号泣しながらほっぺたを押さえるマホに聖一は安堵する。


「よ、よかった~。いや~ほんとうまいね。」


(いつか、醤油を見つけたいなぁ。さて、風呂でも入るか。)



「じゃあマホ、俺お風呂入ってくるよ」


「行ってらっしゃーい」


(実はこの小屋は結構お風呂にこだわってるんだよね。)


血だらけのマホが直行できるように裏口を付けてある。


脱衣所を通らなくて済む。これで毎回マホは裏口から洗い場に直行する。


そして服ごと頭からお湯をかけて血を洗い流す。


そしてビシャビシャの服を脱いで、そのまま置いてあるタライを使って服を石鹸で洗い流す。


そして浴室のすぐ横の乾燥室に乾かす。この乾燥室には暖かい風が吹く魔道具が付けられていて、だいたい3、4時間もすればビシャビシャの服が乾くようになっている。


(素晴らしい小屋だ。ジャイ、本当にありがとう。)


文明が発達していなくてもこの世界は魔法が発達している。


お風呂にも魔道具が付いている。


現実世界のように蛇口をひねればちょうど良いお湯が出る。


(俺には仕組みは全くわからんがな。)


大人二、三人がゆったり洗える洗い場。そして大人二、三人が入っても余裕がある香り高い木の浴槽がある。


この浴室はマホも聖一もお気に入りである。


(この木の感じは檜っぽくて、匂いがすごくリラックスできて安心するんだよなー。)


洗い場にはマホについた血の匂いと、マホの女性特有の甘い香りと、マホが使った石鹸の香りが充満している。


(うーん。普段はなんともないのにマホの匂いがムズムズと鼻に残る。なんか血が巡るなぁ。)


聖一も服を洗い、乾燥室に服をかける。



身体を洗い流して浴槽に浸かる。


チャプン(くぁー気持ち良い。)


暖かい浴槽からは湯気が立ち込める。


(身体の隅々まで暖まるなぁ。うーん。なんかいつもより血がめぐるな。うん、なんか変な気分だなぁ。なんだこれ。)


ガチャ


(ガチャ?ん?)


「ドラゴンの煙の匂いついちゃったからもう一回お風呂入ろーっと。」


湯けむりの向こうに裸のマホがいる。


「お、お、お、お、おい、マ、マホ…」


「ななな、な、な、なんで?キャーー!!」


聖一と目があったあと、しゃがみこむマホ。


「な、なんで鍵閉めてないのよ!!」


「いや、だ、だってマホはさっき風呂入ってただろ!」


「し、信じられないわ!もう!!聖一のバカー!変態!!」


マホが逃げるように走ってお風呂場から去る。


(うわー、どうしよう。変なことになった。やべ、鼻血出そう。)


気まずい雰囲気が流れる。


が、聖一は考える。


(ゆ、湯けむり越しのマホの裸を見てしまったからか、お風呂のせいか、血の巡りが早い。ぐ、なんだこの感じ。あ、頭からマホが離れないぞ。あ、鼻血出てきた。)


鼻血を止めてから、とりあえず風呂を出る聖一。


小屋のリビングのソファに腰をかけているマホが目に入る。


「ま、マホすまない!鍵をかけてれば良かった!」


「きゃ!」


聖一と目が合うと、ドキッとした様子で、バッと後ろを向くマホ。


「ぐ、苦しい。む、胸が苦しいわ。」


うずくまるマホ


「え?!大丈夫か?!」


マホの肩に触れる聖一


その瞬間2人の心臓が跳ね上がる。


ゆっくり聖一の方を振り返るマホ。顔が明らかに紅潮している。


お互いの心臓の音が聞こえる。


「わ、私の方こそバカっていってごめんなさい。」


「いや、俺が不用心だった。すまない。」


見つめあう。


「…聖一」


「…マホ」


「や、優しくしなさいよね…」


2人の顔が近づく。


その時


ビービー!ビービー!ビービー!


マホの索敵魔法が敵を発見したようだ!


「うわぁっ!!」「キャー!!」


驚いてひっくり返る二人。


「も、モンスターか?!」


「も、モンスターではなくて人間が15人ほど。3人の人間を追いかけているわね。」


聖一はマホに問う。


「え?それって?」


「多分盗賊ね。」


「助けなきゃ!!」


「そうね!」


マホは杖を手に、聖一は靴を履いてブラックホールからミスリルダガーを手に取り、外に飛び出す。


勢いよく飛び出るが聖一はマホの顔を見れない。


(あわわわわわ!は、恥ずかしいー!やべー!なんだったんだあれ。自分でも抑えが効かなかった。)


聖一は赤面する。そしてマホも聖一の顔を見れない。そして小声で独り言を言う。


「……あわわわわわ。は、は、恥ずかしいわ……」


2人はまだ知らない。ドラゴンの肉には催淫効果、つまり媚薬のような効果があることを。





ブラックホールに小屋をしまう。


2人はとにかく索敵魔法に反応があった方へ走る。





森の中、ローブを着た女性1人と男性2人が盗賊15人程度に囲まれている。






盗賊に囲まれたローブを着た男性の1人が槍で応戦する。


「盗賊め!この槍の錆となれ!でぇぇい!」


しかし、カウンター気味に盗賊のカットラスのような剣で持っている槍を指ごと切られ血が吹き出る。


半分に切られた槍が勢いよく飛んでいく。


そして弓矢を構えた、もう一人のローブを着た男性のこめかみの少し後ろに槍が刺さり、眼球の窪みから槍の先が飛び出る。


槍が刺さり絶命。そのまま崩れ落ちる。が、張りつめた弓から矢が放たれ、槍を持っていた男性の喉を貫通する。


「ヒューヒュー」


なにか喋ろうとするが喉から空気が出るばかりである。


そのまま崩れ落ちて絶命する。


そして女性に盗賊達がターゲットを変えた。


このままでは女性はころされるであろう。


「ライトニングゥゥ!!!」


強い光が盗賊達の目をくらませる。


その光の後ろからとんでもないスピードでかけてくる男がいる。


「くそ!2人助けられなかった。」


走る聖一。


身体能力が強化されて既に人間のスピードではない。


さらにスピードをあげる。


もう一人を助ける為に!


(もう、あの時みたいに……。除雪機に子供と一緒に巻き込まれた時みたいに、間に合わないなんて嫌なんだ!!)




しかし聖一。




この血なまぐさい状況だというのに、



非常に残念なことに股間はギンギンである。

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