第9話 シャマの気持ち

第9話


シャマが喋り出した。


「お二人は魔素と邪素についてはわかりますですか?」


「ごめん、知らないかな。」


「私は魔素も邪素もなんとなくわかってるわ。」


シャマの問いに、聖一とマホは答える。


「私がここにいる理由を説明する為には、魔素と邪素について説明してもいいでありますですか?」


「そうね聖一は知らないでしょうし、私の知識もなんとなくわかる程度なのよ。是非、聞かせてちょうだい。」


どうやらシャマは魔素と邪素の説明をするようだ。


「お、お願いします。」


(なんかよくわかんないけど、とりあえずお願いしとこう。)


何の事かよくわかっていないが、頭を下げてお願いする聖一。




「モンスターつまり魔物は、魔素と邪素で動いているであります。



魔素とは魔物にとってのエネルギーのひとつで、


人にとっての血や髪の毛のようなものなのであります。」



(ふむふむ。人間にとっての、筋肉とか血液みたいなことかな?


まあ、タンパク質や脂質やビタミンのように体を動かすためのエネルギーの可能性もあるか。


さすが異世界。不思議がいっぱいだ。


なんにせよ魔物は魔素っていうのと、邪素って言うので動いてるんだな。)


シャマの説明をうけて自分の知識に落とし込みながら考える聖一。


説明を続けるシャマ。



「魔物を倒すことでパワーアップを感じませんでしたか?


魔物が力尽きる事で魔物から魔素が解き放たれるのです。


そして魔物を倒した人間や共闘したパーティーの人間に魔素が流れ込むのです。


そしてこの魔素を取り込むことで人間はパワーアップいたします!です!!!」


「はいなのです!」


「なんで口調引っ張られてんのよ!」


シャマの力説に語尾が引っ張られる聖一と感じた疑問をシャウトするマホ。さらにシャマは説明を続ける。


「元々人間の中にも大なり小なり魔素はあるです。その魔素を魔力に練り上げて放出するのが得意な人が魔法使いになったり、魔素を全身に巡らせて剣や拳を自在に操ったり、体内の魔素を変換して不思議な技を繰り出したりしてるのです。


そして空気中にも微弱な魔素は含まれるであります。だから寝たりすると体力や魔力が回復するでありますです。」


「空気中にも含まれてるのか。じゃあ生きてるだけで人は強くなるのか?」


聖一はシンプルな疑問を投げ掛ける。


「それは違うでありますです。」


「魔素のオーバーフローよ」


「え??!!!!い、い、い、良いのか?そこまで言うなら遠慮なく行かせてもらうぞ!えい!」


マホのオッパイをつつく聖一。


「キャー!!!なにすんのよ!!」


マホにビンタされる聖一。


「え?マホのオッパイつつこうよ。って言っただろ!」


「魔素のオーバーフローよ!!もう!」


頬を赤らめあう2人にシャマは話を続ける。


「よろしいですか?」


「お、おう」


「え、ええ」


「マホさんが言った通りです。空気中をゆっくりと流れる魔素ではパワーアップには至りません。魔物を倒したときに流れ出る凝縮された魔素を吸収する事でオーバーフローが起きて、つまり許容量を溢れて体内を巡る事でパワーアップするのです。」


「そういうことか。魔物を倒すと一気に魔素が来るからパワーアップするんだな。」


理解する聖一。


「はい、魔素の説明はこんな感じです。そして邪素です。」


「魔物は魔素と邪素で出来るんだっけ?」


邪素の説明を始めるシャマ。


「そうでありますです。邪素は人間にとっても害悪で、世界にとっても害悪なのです。空気中に混ざっていれば疫病が蔓延したり、魔物が活発化することでしょう。」


「え?」


「しかし邪素は『ジャイアント・トレント・ツリー』という、いわゆる世界樹があるから大丈夫なのです。」


「世界樹?」


「世界樹は世界中の邪素を吸って空気中に魔素を吐き出して、世界をきれいにしているのです。」


「へぇ!世界樹のお陰で世界を綺麗にしてくれているんだな。」


「そうなのです。」


「ワンダーエルフ族はその世界樹の守り手。そして私はワンダーエルフ族の巫女!」


「おお!そうなのか!」


「巫女?それはとっても偉い役職についているのね。」


ワンダーエルフ族の巫女だと言うシャマに二人は感心する。


「そして私は18になったので旅に出ました。そう……旦那様を見つけるために!!!」



「ええ!!!」「ええ!!!」



口が空いたまま塞がらないマホと聖一であった。



「それで旅しているところを盗賊に襲われたのか?」


「はい、そうなのです。」


「許せないわね。」


襲ってきた盗賊に対し、再び憤る2人。


「それにしてもあいつら、シャマの事を物みたいに言っていた。売ったら金になるとかさ、そう言ってたんだ。俺はちょっと許せないわ、そういうの。人を力でねじ伏せて物みたいな扱いするなんて。」


「ワンダーエルフ族の宿命なのです。普段は結界に守られた里に住んでいて滅多に外に出ないから物珍しいのです。」


「変わった種族の売り買いは珍しくないわ。あらかた太ってはげた、いやらしい貴族どもが飼うのよ。奴隷にして一生虐げるのよ。ほんと気分悪いわ。どうせワンダーエルフ族の男は金にならないとかそういうキモい理由で、盗賊どもはシャマのお供を殺したんでしょ。」


ワンダーエルフ族の扱いに怒りを隠せない聖一と、仕方ないというシャマ、気分が悪いというマホ。



「巫女は外の世界に強い男性を探し、旦那様として連れ帰るのです。そうすることで種族は繁栄すると言われております。


そしてその旦那様と一緒に里の守り神の蛇神様に祈りを捧げるのです。だからとても重要な旅なのです。」


「そうか……。そうだったのか。」


「そう…。それだけワンダーエルフ族にとって重要な旅なのね。」



シャマを思い、2人が静まる。



「改めて聖一さん!!!!」


「え?」


「私とワンダーエルフの里に来てください!!!」


「シャマ、それは難しいわよ。だって聖一はさ……」


「わかった!行く!!」


シャマが里に来てほしいと改めて聖一にお願いする。いやいやそれはさすがにと言うマホ。良いと言う聖一。


「えええええ!」


アゴが外れ、目が飛び出る勢いのマホであった。

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