イグザミネーション:謎のLINEと動画

 勝太君と五十嵐君だけじゃない、健吾君と弘人君も。一体なんで? 姉ちゃんは何をしてるの?

 頭の中を「?」が廻っている。

「どうしたの?」

「え? あ、いや、別に何も……」

「何か分からないけど見てみよっか?」

「え、あ、お、ん?」

 自分でもよく分からない戸惑いの声が出てきた。

「あ、待って、なんか来た」




 こういう時に使えるのは、あの子たちしかいないっしょ。

 伊織はスマホを見てニヤニヤと笑っていた。

 彼女たちは私に感謝するべき人間なのだ。だから、必ず答えてくれるはず。まぁ、勝太ばかりに集まるかもしれないけど……まあ、良いってことで。勝太はどちらにしろ一位だし、下位争いの方が気になる。


 伊織は八鳥はっとり中学の三年生の時に、早織や勝太が一年生で入学してきた。

 何やら勝太は小学生の頃からだいぶ人気だったらしい。確かに、彼はものすごいイケメンだった。言うことも面白いし、勉強もスポーツもできる。性格も最高。この頃は、私は彼氏にしてやってもいいなぁとかれを評価していた。

 どちらにしろ、五十嵐君がいたから無理だけども。

 勝太人気は中学になっても収まらず、むしろ勢いを増した。校内の女子の八割が勝太が好き、くらいの人気よう。

 伊織はその時も生徒副会長をしていて、顔が広かった。将来医者になって大金を儲けるためにも何かをして評価を上げた方がいいかなぁと思っていた時に、一年生の女子五人組が声を掛けてきたのだ。




 取りあえず、四人全員の動画を見ることにした。

 姉ちゃんによると、何やらこの動画を見て、ファッションセンスとかキュンキュンするかとか、そういう様々なところを審査して、一番彼氏にしたい人間に一位票、ついで二位、三位、四位票を入れる、ということらしい。

 健吾君をまず見てみる。

「うわー、この子タイプだわ! めっちゃカッコいい! なんかちょっと意地悪そうな感じするけどそれがまた好き」

 咲来はそう言った。彼女はかなりの恋多き乙女だから、これはまず間違いないのだろう。

「すごい出来るって感じするし、なんか努力とか熱意とかが分かるわぁ。何より、この目線見て。めっちゃかっこいいよね」

 織子はそんな評価。

「ちょっと織子、白鳥君いるんだからそれ言っちゃダメでしょ」


 そのまま次、弘人君。

「あぁ、なるほど。なんか平凡だわ」

「カッコは大人っぽいけど……色気ないよね」

「なんか物足りないかなぁ。顔も悪くはないけど良くもないって感じ?」

「メッセージがイマイチきゅんとしない」

 みんな、こんな厳しい評価を弘人君には下した。まあ、彼氏にするかと言われるとまずするとは言わない。健吾君を見た後だとなおさらだ。

「次誰行く?」

「五十嵐君行こうよ。知ってる子は知ってる子でもこっちはなんかお調子者って感じでさ、一年のとき空気めっちゃよかったし」

「まだ調子乗ってんのかなぁ、ガラシャん。ちょっと私あれ嫌いだったんだよね」

 凛は嫌いな人いないのかと思っていた。

「じゃ、行くよ」


「なんか、めっちゃ自分に自信ある感じだった」

 第一印象を早織は述べた。

「ちょっとなんか、ウザい。ファッションが完璧すぎてさ、なんかカッコつけてる感ヤバい」

「だよね。なんか中学の時と変わったかなぁ」

 五十嵐派かと思われた美佳子もこうらしい。

「じゃ、もう勝太君見よ。勝太君はなんか面白いことしてくれそうな気がするからさっ」




 誰が早織を自分のものにできるか競うグループ

 参加者 健吾・勝太・弘人・いおりん♪・かず


 伊織『さぁてと、私なりにキビシー判定をしたところ、決めましたっ」

 健吾『緊張するわ、これ』

 伊織『結果発表。まず一番ビミョーな三位から! 弘人君!』

 弘人『三位って』

 伊織『次、四位! 一樹君』

 かず『はっ? ふざけないでくださいよ。僕は完璧なコーデにして完璧なせりふを吐いたはずでしょ? 絶対に小鳥ちゃんたちが寄り付くはずのかんっぺきなものだったはずなのに、これはおかしいでしょうがっ?! そもそもこれ伊織先輩の判定がおかしかったんじゃないんすか? 独断と偏見なんだから僕をもう落としてしまおうとしたんじゃないんですかっ?』

 伊織『あ? あんた、長文うるさいし、見るのめんどくさい。しかもこんな酷い内容ってさ? 私の審査がダメだっていうの? 言った奴どうなるか知ってる?』

 健吾『俺みたいにバッキバキにされるから気を付けろ、一樹』

 弘人『それ言うのもったいなくない?』

 かず『いやでもそうでしょ? おかしいでしょ』

 伊織『あんた、これ以上言ったらこのグループ追放するけど。私の大事な大事な妹に告白するの許さないけど。いーの、それでも。私をこんなに侮辱していーの?』

 かず『え、っとすみませんでした……』

 伊織『さて切り替えて、まず第二位! 勝太君!』

 勝太『あー、マジか』

 伊織『それで、ダントツの一位が健吾君でーす♡』

 健吾『え? 嘘マジ? よっしゃぁっ!!』


 伊織『あのね、まず一樹君だけど、自分に自信持ち過ぎてて、見ててウザかった。めっちゃカッコつけてるって感じだったし。そんな感じめっちゃする。恋愛するときは注意しよーね』

 伊織『次、弘人君。弘人君はね、まあ大人っぽいコーデだったけど、まず顔があきまへんわ。愛のメッセージもなによ? あんな粗末なのじゃ誰も寄り付かないでしょ』

 弘人『顔っていう生まれつきのものを否定されるとわ』

 伊織『わじゃないよはだよ! で、二位の勝太君。コーデも完ぺきでめっちゃ爽やかでもうなんも言うことない!』

 勝太『じゃ、なんで?』

 伊織『でも最後のギャグっぽいの何なの? 意味が分からなかったって言う声が多かったよ』

 勝太『え。あの数学教師の真似ですけれども』

 伊織『わかるか! それで一位の健吾君。もうね、言うことないわ。カッコいいし、顔もいいし、汗かいてるし、なんかさりげなく出てくる言葉キュンキュンするし、ユニフォームもまたスポーツマンって感じだし、一番自然体でなおかつ一番カッコいい。私の彼氏になっても許せるなぁって思った』

 健吾『いや、許せるなって何ですか……笑』

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