ゲーム5・キュンです動画対決③

 誰が早織を自分のものにできるか競うグループ

 参加者 健吾・勝太・弘人・いおりん♪・かず


 伊織『さぁて、タイムアーップ! みんな動画送ってきてくれたらしいんで、判定タイムしまーす。どれが一番いいのか考えとくんで』

 かず『自信あり』

 弘人『自信あり』

 勝太『まあまあ』

 健吾『うーんどうだろ』

 伊織『それじゃあ、得点の参考に、アピールポイントを教えてください!』

 かず『何より、大人っぽいファッション。振る舞いも大人っぽっく、ちょっとツンツンしたけどモテそうなコメントっすね』

 勝太『季節外れだけど、結構爽やかで俺の顔に似合いそうなファッションに、わざわざカッコつけずに普通に俺らしくトークを盛り上げる感じの動画。不動の人気を誇る元生徒会長なんだから、結構自信あるんだがなぁ』

 弘人『夏っぽくて高校生らしい感じのやつ。動画は……特に』

 健吾『熱血少年っぽい服装?』

 伊織『あとの二人なんか自信なさそうだけど、ま、いっか。それじゃあ、早速審査しまーす。ちょっと待っててねー』




 これ、どうかな。

 俺は俺らしくだ。変に飾ると逆に気持ち悪くなるだけだ。ありのままを出さなければ。それは勝太が人を笑わせるうえで大事にすることだ。ここでもそれを発動させたが、果たしてどれくらいの評価だろう。

 正直、普通の俺で、何にも無い。これが良いのか、モットーでも少し不安はある。ファッションは天才的にいいと思うんだけど。

 勝太はキャンプで使うようなチェアを用意して、動画編集ソフトで背景をビーチにしてみる。そして、サングラス。

 サングラスをしゅっと外し、カメラの向こうで見ているであろう早織にこう語りかけるのだ。

「おぉあ、ほれ数学始めんぞ、ごんらぁ。……あ? お前らはバカかぁ? っていう話だがぁ、ほれ、はよ教科書だせやぁ、おぉあぁ」

 以上。

 これは、今の数学教師の授業開始時の物まねである。江戸時代の人のような口調にその教師の謎の「おぉあぁ」などのセリフが入る。

 真顔で本人は言うため、みんなが面白がり、結果数学の時にはほぼ全員が授業の準備をせずに臨むのだ。

 今回は眉間にしわを寄せ、唇を歪ませるという数学教師の真似をしながら言ったから、これはウケる。絶対に。

 ただ、伊織はこれをどう見るだろう。キュンです動画だから、これでキュンキュンするのかと言えば分からない。

 ――ま、これぐらいしか俺は出来ねぇんだし、もう出したんだから仕方がないや。




 サッカーのユニフォームを着て、首に試合の時のネックレスを付け、リフティングを六百回くらいしてから「あぁ、疲れたぁ。ま、これで試合の時は絶対勝ちだわ。見とけよ、俺のミラクルシュートをな」と言った。

 汗をかいた姿でタオルを首にかけ、こういうとまあまあ効果はあるんじゃないか。ただ、健吾はその時にどんな顔をしているのだろう。

 自身が、無い。

 伊織がこれを見たらすぐにこれを切り捨てるだろうか。

 なら、早織が見たら?

「わぁ、健吾君凄いカッコいい! 試合見に行くから、絶対決めてよ! 横断幕でも作って応援するからっ」

 と言って俺の肩に抱き着いてくるのだろうか。

 ――いや、これは妄想だし、んなことあるわけがない。

 だが、自分的に撮れ高が高いと思っている健吾は、意外とあるかもしれないと思い、内心ワクワクしているのだった。




「キャァァァ!!!!」

「イヤァァァ!!!!」

「ヤバいヤバい落ちる落ちるイヤァァァ!!」

「ウギャァァァ!!!! お母さーん!!!!」

「あんたらうるさーい!!」

 五人はものすごい距離が長く、宙返りをしたり逆さまのまま走ったりもするジェットコースターでひたすら叫んでいた。

「なんで咲来はこんな平気なんよぉぉぉ!!!!」

「こういうの得意なんだよね」

「何て、聞こえなウワァァァギャァァァ!!!!」

 早織もひたすら叫んでいた。もう涙が出てきそうだ。風がビュオンビュオンと顔に当たってきて、目が開けていられない。

 と、脳みそが飛びそうなくらい急降下してからゆっくりと減速していった。

 早織も目を開ける。隣の並木なみき咲来は「あ、終わり。あぁ、嫌だなぁ、もっとやりたかったなぁ」という。

「頭おかしいの、さく」

 岡村りんは顔を真っ白にして言ってきた。

「あぁ……もうダメ。吐く」

 織田おだ織子はそう呟き、美佳子はもはや何も喋らなかった。


 降りて、次の遊び場、コーヒーカップに向かっている時に、凛がつぶやいた。

「あ、LINE。は? 何それ。鈴川先輩がなんか言ってきた? 助けてって?」

「どういうこと? 鈴川先輩ってお姉ちゃん? 見せてよ」

 早織は興味本位で覗き込んだ。

 相手には星朱ほしあけみとある。あれ、星って。

「あの朱ちゃん?」

「あ、そうそう。なんか言ってきたの。あずちゃんとかにも来たらしいよ」

 あずちゃんこと高杉たかすぎあずきは私と凛の一年のときの同級生だ。朱は同じクラスになったことはないが、お姉ちゃんが仲良かったためよく遊んでいた。

「なんか動画を送ってきたんだって。勝太君を入れた男を遊んでるから、それの協力をしてほしいと。朱ちゃんとかあずきちゃん、勝太君ですごかったからね……」

 ――勝太? と姉ちゃん? どういう関わり? 

 私の頭の中には「?」が飛び回った。

「良く分かんないけど面白そう。動画の中で一番イケてるのを答えろって。朱ちゃんは助けないと」

 凛は「OK」を押す。と、事前準備をしていたのか、即座に四つのカッコつけた男がいる動画が送信された。

 ――え? 勝太君に五十嵐君に……? 何でいるの?

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