第七話 地図を暗記するのって結構大変
「あ、いたいた。ケイン!」
「お、カインか。収穫はあったか?」
俺は冒険者ギルドの中でケインと合流することが出来た。
冒険者ギルドに入った瞬間に、”アイツが例の冒険者に永遠の苦しみを与えた奴らしいぜ”と言う声がちらほら聞こえたような気がしたが、多分気のせいだ。
「ああ。ミスリルは手に入った。そして、それを素材にした切り札も作ったよ」
「そいつは良かった。それで、これからどうする?」
「そうだな……夏休みになり、あいつらがメグジスに来るまでに、この街の構造を正確に把握しておかないとな。あとは戦闘訓練しないと。まだあの戦い方には慣れていない」
俺は成功確率をさらに上げる為に、次の行動を取ることにした。
「まずは街の構造を知り、逃走経路を無数に確保しておく必要がある。隠し通路とかが見つかればいいんだけどな……」
「なるほどな。俺はそこそこ偉い諜報部員だったこともあり、この街の詳細な地図を持っているんだ。それをお前に見せてやるよ」
「そりゃどーも。ただ、酒場で見るわけにはいかないからな。宿に行くぞ」
「そうだな」
俺達は地図を見る為に、再び宿に戻った。
「じゃ、見せてくれ」
「分かった分かった」
宿に戻った俺は部屋に入ると、ケインに地図を見せるようせかした。
「ほれ」
ケインは懐から地図を取り出すと、床に広げた。
「わ~こまか~い」
ノアは四つん這いになると、床に広げられた地図を興味深そうに見つめた。
「確かに細かいな。いや、細かすぎると言った方が適切だな。俺が見たゲルディンの地図でさえ、ここまで精巧に書かれてはいなかったぞ」
「まあ、ここまで精巧な地図を作るメリットはあまりないしな」
「まあそうだな」
他の街や国ならともかく、自分の街の精巧な地図を作って部下に持たせ、それが盗まれでもしたら、犯罪に利用される可能性が高い。そして、更にマズいのが、この地図が敵国に渡ることだ。そうなった場合の損失は計り知れない。
「う~ん……それなんだけどさ。俺の元上司が完璧主義を貫く奴でな。半端な地図を作ることは絶対に認めないって言ったせいでこうなったんだ。因みに領主一家には内緒だ」
「何だよそいつ。敵国の諜報部員にしか見えないんだが」
「俺と同じ孤児院出身だから、それはないな。それに、真偽のスキルで色々確認もされているはずだしな」
「変わったやつがいるものだなぁ……」
俺は頭を掻きながら、そう言った。
「それじゃ、この地図を暗記するか。これでも暗記は得意な方なんだ」
「流石は元貴族様だな。頑張れよ」
こうして俺は、地図の暗記に全力を注いだ。
「は~あ。この地図を丸暗記するのは大変だったよ~」
俺はベッドの上でゴロゴロしながら、そう言った。
「まさかあの地図の全てを暗記するとは思わなかったぜ。しかもたった3日でな」
ケインはソファに座り、足を組みながらそう言った。
「うん。カインは頑張った。偉い!」
ノアは俺の横に寝転がると、そう言った。
「じゃ、あとはこれを忘れないようにしつつ、戦闘訓練をしないとな」
ハルスとネイルは2人で1人と言ってもいいぐらい、スキルの相性がいい。
ハルスのスキル、守護者は自身を中心とした半径二メートルに透明な防壁を展開するスキルだ。強度は込められた魔力に影響される為、ハルスが使えばかなりの強度になる。しかも、この防壁を展開しながら、移動することだってできる。
ネイルのスキル、剣創造は半径十メートル以内に魔力で造られた剣を生み出すスキルだ。この時、作れる剣に上限はない。ただし、作った剣は、30秒で消えてしまう。
このコンビを攻略する場合は、常に上から降ってくる剣や、下から生えてくる剣に注意しながら、防壁によって守られている二人に攻撃しなければならない。正直言って、かなりめんどい。
かと言って、二人がバラバラの時を狙うのは無理だ。と言うか、あの仲良しコンビが一緒に外出する光景を俺は見たことがない。屋敷の中ならバラバラになることもあるだろうが、流石に屋敷に潜入するのはリスクが大きすぎる。
「じゃ、頑張るか」
俺はベッドから起き上がると、みんなと一緒に部屋の外に出た。
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