第52話 行動 × タイミング
『行動を起こした者と行動を起こさない者』
おそらくこの差だ。
リンやエミリオは、『想い』があって、世界旅行をして、仲間を作って、動画を撮って、今がある。全て行動に移している。
自分は、『想い』があって、最低限の知識力の向上はしていたが、いつも妄想・想像をするだけで、行動に移せていなかった。
その違いが、これだけの収入差を生み出したのだ。
お金が全てじゃないのは、理解している。
どこかで、自分は諦めていたから妄想だったのだと認識した。それが悔しかった。
でも今、妄想を現実化させる術がある。みんなが仲間にいれてくれた。リンの夢を叶えよう。そのために、今からを生きよう。
『これからは全部、行動に移していこう!』
英人はそう心に誓った。
「明日なんだけど、みんな議論じゃなくて、調べものをしてくれないかな?」
エートがみんなに提案する。
「別にいいけど、何を調べるの?」
オイトの顔が?いっぱいだ。
「さっき、みんなで決めた区や決定事項について、それぞれ知識を深める必要があると思わない? たった1日でも、それぞれが調べて共有できれば、議論も変わってくると思うんだけど」
「たしかにそれはいいね」
リンが納得する。
「じゃあ、僕カジノ区、取った!」
セイスが1番に言う。
「僕はどんな会社が必要かアントニオと考えるよ」
リンはずっと先も見据えているようだった。
「医療区は私たち専門だから、調べやすいかな。あと、ホテル区も調べていいかも」
クリスティーヌが手を上げる。
「エートも一緒だよね?」
アンナが英人の顔色をうかがう。
「もちろんだよ。買い物区も僕たちで調べよう」
「食べ物全般はもちろん私たちよね」
サラとセレナがエミリオの方を見て言った。
「そうだね。3人で調べてみるよ」
「研究区の動植物食物区は僕とオイトで調べてみるよ」
チルがオイトと相談して決めた。
「デジタル区は僕してみようかな」
サンクが手を上げる。
「僕はインフラ関係を調べてみるよ」
タラータなら地の利はいかせそうだ。
「じゃあ、僕は居住区かな!」
最後に、スーが決めたようだ。
「オッケー。じゃあ、明日は各自調べものよろしくね。今日は早いけど、あしたのこともあるから、そろそろ解散したほうがいいかもね~」
リンがそう言うと、セレナが後片付けを終えたところで、リンの足の上に乗っかりにきた。
『ama ama』の時間らしい。
どうやら、今日は、リンとセレナ、エミリオとサラというペアのようだ。
果物らしきものを、器に入れて持ってきて、一緒に食べている。
クリスティーヌとアンナが英人の様子をうかがっている。今日怒られたばかりだから、同じことをしたいけれど、躊躇しているようだ。
英人は流石にまだあそこまで、オープンにはできないと思ったのでさっと目をそらした。
「じゃあ、明日の予定も決めないとだから、今日はホテルへ帰るよ。明日は夜集まる? それとも明後日のランチとか?」
「明日はしっかり調べものして明後日のランチでいいんじゃない?」
リンがそう言うと、みんなが頷く。
「オッケー。じゃあ、明後日ね」
「楽しんでね~」
エミリオが笑って手を振る。
「じゃあ、失礼するね。クリスティーヌとアンナ、行こう!」
二人は一緒にいていいと理解したようで、笑顔で英人の両サイドにおさまった。
帰りの車で、クリスティーヌとアンナはどこかへ連絡をいれていた。たぶん明日の調整だろう。
車の揺れが心地良く、うとうとして意識を失う寸前に、ホテルへ着いた。
目を擦りながら、車を降りると総支配人のスミスが待っていた。
「お帰りなさいませ。ご連絡いただいた件ですが、明日十七時から一時間であれば、お会いできるとのことでした」
「あら、良かったわ、一時間も取れて。あなたは、いつ空いてるの?」
「私なら、明日は午前十時に業務が終わる予定です。」
「そしたら、そのぐらいに部屋に来てくれる?」
「かしこまりました」
「ありがとう」
クリスティーヌがスムーズに予定を決めた。
やっぱり二人ともしっかりしている。『やるときはやる女』だ。
彼女たちも行動力があって尊敬に値する。
英人は部屋に入ってソファに倒れこむ。クリスティーヌとアンナは横ではなく、前のソファに腰かけた。
「明日は十時からスミスにホテルのことを聞いて、十七時には社長と会えるわ」
クリスティーヌが説明してくれる。
「医療系は、友達の医者に最近の最先端医療と研究を聞けるようにしたわ。こちらは電話だけどね」
医療はアンナが手配してくれたようだ。
「後は、買い物区だけど新しい場所をイメージしながら、デートでいい? ランチはその辺で食べることになると思うけど」
クリスティーヌがなにやら不満げだ。
なぜなのか聞いたら、「サラとセレナのランチを食べているから、最近外食してもあまり美味しいと思わなくなったのよね」と教えてくれた。
まあ、たしかにそれはそうなるよね。と、妙に納得できた。
「ね、もういい?」
「ん? あ、ごめん、いいよ」
二人はその返事と共に英人に抱きついてきた。
「「慣れるまでタイミング難しいわっ!!」」
BORDER ~ぼくたちは地球という国をつくらざるを得なかった~ 宗像 緑(むなかた みどり) @sekaigakawaru
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