第48話 発想 × 豪華なシャンデリア

「英人は、今日はどうする? ホテルまで送ろうか? 二階も部屋が余っているから、そこで泊まってくれてもいいけど?」

ワンが英人に聞く。


「ホテルに荷物も置いてきたし、一度ホテルに送ってもらえると嬉しいかな」


「了解。今後のスケジュールなんだけど。どこか観光したりしたいなら、案内しようか?」


「いや、やると決めたんだから、そんな時間もったいないよ。今後について、色々議論したいかな?」


「わかったよ。なら早めのディナーから、みんなで議論しようか」


「そうだね、今日は朝までになったから、そうしてくれるとうれしいかな」


「まあ、夕方に来れるかどうかだけどね?」

ワンが英人の後ろを見て笑いながら言う。


「???」

 英人はわけがわからなかった。


「これからどうするの?」

 後ろからアンナが話しかけて英人はビクッと自動的に反応して震えた。


「ホテルに戻ろうかと思って。送ってもらえるって」


 クリスティーヌとアンナが、両方の手のひらを天に向けて、『はあっ』っと、ため息をつく。


「英人様は自分の身分をわかっていらっしゃるの?」

クリスティーヌが、手を腰に当てながら攻めてくる。


「え?」


「英人様は神に選ばれた発想力の持ち主なのよ」

アンナが自分の身分を理解しろとばかりに向かってくる。


「そんな大袈裟な……」


「そこを改めてもらわないと困るわ!」

クリスティーヌとアンナが共感している。


「一度ホテルに行って荷物をとって、私たちがいつも使っているホテルに移動する、それでいいわよね?」

ワンには断る余地もなく『それでいいよ』と回答せざるを得なかった。


「へ?」

英人の一音あがった声が漏れる。


「ちゃんと私たちが案内するから安心して」

クリスティーヌが英人の顔を見上げて言う。


「じゃあ、行きましょうか」

アンナが英人の手を取った。


 英人は何もわからないまま、クリスティーヌに手を引かれ、二人に半ば引き連られて車に乗り込む。


 ホテルまで行き、荷物をまとめている間、クリスティーヌとアンナは『なんでこんなホテルを用意したのよ!』とワンに怒っていた。


「準備できたよ」

英人が荷物をまとめ終わる。


「じゃあ、行きましょうか」

クリスティーヌが英人の手を取った。


 車で二十分ぐらい移動した。


「着きましたわよ」


「さあ、行きましょう」


 三人でエントランスに入ると支配人らしき人が待っていた。


「ごきげんよう。久しぶりね」

クリスティーヌが手をあげる。


「お久しぶりです。クリスティーヌお嬢様」

支配人らしき男が深々と頭を下げる。


「いつもの部屋空いてるわよね?」


「もちろんです。ご準備も整っております」


「ありがとう」


 英人は置いてきぼりをくらう。


「あ、紹介しなきゃだったわね」

アンナが焦って言った。


「彼は総支配人のチャールズ スミスよ。クリスティーヌ家は、代々いつもここを利用してるのよ」

クリスティーヌが説明してくれた。


「彼は英人よ。私たちの特別だから」

英人は軽く会釈する。


「ようこそ、英人様。ゆっくりおくつろぎくださいませ」

スミスがそう言う。


「では行きましょう。荷物は置いておいたら運んでくれるわ」


 アンナはエレベーターに乗って迷わず最上階のボタンを押す。フロアに着くと当たり前のように進んで一番奥の部屋の扉を開ける。


「うわ~~っ!」

英人は驚嘆した。


 リビングの真ん中に豪華なシャンデリア。サブリビングもあって、寝室も二つ。ベッド一つが広い。隣にはジャグジーだってある。


 だが、ダントツ一番は景色だ。


「すごいねっ!」

 英人が、クリスティーヌとアンナのほうを振り返ると、既に二人とも生まれたままの姿になり、英人のほうに走ってきていた。


 また、押し倒された。


「「さあ、楽しみましょう!」」

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