第32話 再現 × コルク性のコースター
最近、ランチはほぼ全員が集まるようになった。
リビングに巨大な画面を購入したのだ。
ここで、『e-to』の様子をみんなで見るのが日課になった。
クリスティーヌとアンナももちろんここに来ている。
サラとセレナがランチの調理を終え、配膳を始めている。
今日はパスタのようだ。サラダと野菜の冷製スープも添えられている。
リビングとダイニングは繋がった空間で、ダイニングから大画面が見え、いつもだいたい座る場所は決まっている。
「みんな用意できたわよ」
サラがみんなを呼ぶ。
ダイニングの入り口には、コルク性のコースターが置かれている。
そのコースターには、
『赤』『白』『ビール』『水』『炭酸水』『なし』が表記されていて、メニューをみて、飲みたいものが書かれているコースターを机に置いて座る。
そうしたら、セレナが準備してくれるのだ。
『なし』の場合だけ自分で冷蔵庫に取りに行く。
サラとしては、何を飲んでくれてもいいが、料理に合わせた飲み物まで決めたいのだ。だから、このパスタなら、どこどこ産の赤とか、何ビールとかまでこだわっているが故のルールである。
サラとセレナは栄養学も学び、たまに食べ歩きもしている。美味しいと感じたときは、持ち前の積極さを使って、一週間修行させてもらったりもしてるらしい。
『e-to』が日本チャットで議論するときは、リン、クリスティーヌ、アンナも食事を一緒にする。このときは、チルがクリスティーヌとアンナの通訳役になる。
海外チャットで議論するときは、ノートパソコンを机に置くため、3人だけランチは後で配膳される。
議論チャットが終わった後に、クリスティーヌ、アンナ、サラ、セレナはチルとオイトに日本語を教わっている。
「日本に半年行った方が早いわ。料理も学べるし」
サラとセレナはいつも愚痴を言っている。
ただ勉強のかいあってか、大分、クリスティーヌとアンナは日本語を理解できるようになってきた。
今日は日本のチャットで議論をしているので、リン、クリスティーヌ、アンナも一緒にランチをしている。
今日の議題は、×(かける)だった。
『e-to』がおもむろに発言を始める。
ポテトチップス(通称ポテチ)×コーラの組み合わせについてだ。
最初に、1つにするならジャガイモをコーラ煮にしてはどうか? との意見があがる。
それに対して、一度揚げてから煮た方がいいとか、コーラ煮ではなく、ジャガイモのコーラ漬けが美味なはず。等、議論が進んでいく。
中には食感が重要だから、ポテチのコーラ味がいいのではないかとの意見まであがる。
また、それにはコーラの炭酸感を重視するべきだから、ジャガイモをグミのような形に成形して、コーラにいれる方法が良いのでは? と、無茶苦茶な意見も出る。
みんなは他の意見に興味はなく、『e-to』の回答を待っている。
だが、今日は外れの日だった。いい回答は得られなかった。
「みんななら、どうする?」
エミリオがみんなに質問する。
「僕ならカプセルにコーラいれてポテチと同封してみるね」
リンが答える。
まだ、『e-to』と接点を持てないことに、サラがイライラしている。
「あなたたちの動画でポテチ×コーラの組み合わせ内容の再現とeightersなりの新しい提案をしてしまいなさいよ」
「「それはいいわね。すぐ調整して!」」
クリスティーヌとアンナが、息巻いている。
みんなリンを見て、リンが頷く。
ランチの後に要領良く、みんな各所に連絡している。
エミリオがその辺をまとめた。
「OK、明日に撮影できる手はずは整ったよ」
と、調整が完了したことを皆に報告する。
eightersは基本企業案件コラボはしない。
人間関係でとか以外は全て断っている。
ただ、企業案件コラボをするときは、サンクのネットショップで関連商品が何か売られる。
ようはeightersに扱ってもらえれば、売上が確実にあがるのだ。
リンは今回は『背に腹はかえられない』と判断した。
今は何よりも、『e-to』と出会い、仲良くなるのが最優先事項だ。
……
翌日、工場を廻って、カプセルも作ってもらった。各会社はお金というよりも、認知度があがるので、全面協力してくれた。
オイトが編集も大急ぎで処理し、動画をアップロードした。
リンは「そろそろ編集も誰か専用で雇う必要があるかもな……」と考えていた。
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