第33話 奇跡 × 背に腹はかえられない

クリスティーヌとアンナは、『e-to』に1秒でも早く会いたくなっていた。


2人は、自分たちもかなりの稼ぎがあるから、人を1人みつけるぐらいは容易だと思っている。


ただ、『e-to』にびっくりされてはその後がなくなるため、意味がない。


なるべく違和感なく出会いたい。


そう思っているが、クリスティーヌとアンナの身体と心のバランスが崩れだしていた。


声が聞きたい。


話がしたい。


早くこの身を捧げたい。


クリスティーヌとアンナは『e-to』と過ごす初夜は3人で。と固く約束していた。


まだ『e-to』に会ってもいないのにサラとセレナに刺激を受けてしまっている。


出会い方もサラとセレナのように、ちゃんとした恋愛対象になりたいため、eightersの友達として出会いたい。


そのためには、どうしてもeightersに頑張ってもらうしかない。


サラとセレナにはリンとエミリオがいる。だから、サラとセレナに、「私たちもそうなりたい。そのために手伝ってもらいたい」と懇願した。


サラとセレナも「約束する。私たちはあなたたちのために手伝うわ」と言ってくれた。


そういったこともあり、ポテチ×コーラ動画を提案してくれた結果となった。


クリスティーヌとアンナは『奇跡はきっと起こるわ!』と二人で目を会わせる。


リンが動画をアップロードした後に、サラが助言する。

「『e-to』も必ず動画を見るわ。動画をみたら、びっくりするだろうから、メッセージを送っておいた方がいいと思うの。ここが勝負所よ」


それについてはeighters全員もそう思った。


……


メッセージを送って3日経ったが『e-to』から返事はない。もしかして動画を見てもらえていないのだろうか?


皆に不安がよぎる。しかし、定期的に動画は撮影しないといけないし、編集作業や動画の打ち合わせもあるので、することは山積みだった。


だから全員で相談した結果、返事については暫く様子を見ることにした。


ただ、リンはパソコンにメッセージが来ていないかを毎朝確認していたし、議論チャットでも『e-to』がいることを視認していた。


この状況をみかねて、サラとセレナは2人で打ち合わせをすることにした。


「リンとエミリオには夢があるわ。その夢を実現するためにも、eightersはまだ綺麗でなくてはいけないと思うのよ」

サラがそういうとセレナが頷く。


「そうね、私もそう思うわ。でもどうするの?」


「あいつに頼むしかないと思うの?」

 

「あいつって誰よ?」

 

「あいつよ、Antonioよ」

 

「Antonio って、まさか、Antonio Lopezのこと?」

セレナが驚いた表情をしている。

「えぇ、そうよ」

 

「でもAntonioって。サラは大丈夫なの?」

 

「eightersも企業コラボ案件はしないのに、『e-to』のためならって、今回は撮影したと思うのよ。ということは、私たちも背に腹はかえられない。まさに今回が勝負時だと思うの」

 

「確かにそれはそうよね。サラがそう思ったのなら、私はいいとは思うわよ。でも、リンとエミリオには相談するべきじゃない?」

 

「依頼が完了してから、事後報告にするわ」

サラは決意した表情で話す。


セレナが困惑している。

「何を見返りに要求してくるかわからないわよ?」


「私だって、リンとエミリオとこれだけ一緒にいるのよ? 交渉術は上がっていると思うわ」

サラは自信ありげに語りかけた。


「でも、何も武器を持たず交渉するの?」

セレナがまだ躊躇している。


「まさか? eightersのサインか、動画内で宣伝をするか」


「それでも駄目なら?」

セレナはまだ納得できないようだ。


「それでも駄目なら。私が1年でも2年でも専属で働いてやるわ」

セレナはそこまで決心しているならと折れた。


「わかったわ。もし、そうなったら、私も一緒に専属になるわ」


サラとセレナは決意を固めた。

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