決断の時です。どうぞ、あなたの答えを聞かせてください

「はいはいは~い、集合、集合ですよ~! ほら、あなたもぼけっとしてないでこっち来て、座ってください!」


「え? なんで今日は月曜日なのに、他の曜日も全員集合してるんだって……? お前、オレたちが何も知らないと思ってんのかぁ?」


「なんでも、職場が変わって、あなたがこれまでの勤務体系とはまた違った働き方をするようになったと、そうお聞きしました。当然、休日もこれまでと変わる、と……」


「一週間の内、二つの曜日を指定してお休みをもらえるんでしょう? つまり、これまでずっと平日だったボクたちが休日に変わって、君と長く過ごせるようになるんだよね?」


「逆に、これまで休日だったはずの土曜と日曜に出勤しなくちゃならなくなるかもしれない……ってことでもあるわ。これはとんでもない革命が起こったものね」


「うわうわ~っ! マジピンチなんだけど~っ! どうしてそんな余計なことをしてくれちゃうのかな~!?」


「みんな、落ち着いて。変わってしまったこともあるけれど、大事なのは彼の意思でしょう? 私たちだけが盛り上がっても仕方がないわ。……と、いうわけで、あなたの意見を聞かせてもらえる? あなたは、何曜日をお休みにするつもりなのかしら?」


「月曜日っ! 月曜日がおすすめですよ!! 周りの人たちが暗~い顔して通勤やら通学する中、一人お家でのんびりできるだなんて、考えただけで最高でしょう!? ここはまず私を選びましょうよ~!」


「へっ! こいつがそんな陰湿なことを考えると思ってんのかよ? ここは当然、オレを選ぶよな? 一週間の始まりを日曜日と考えたら、オレはちょうど真ん中くらいの位置することになる。そこで疲れをリフレッシュするってのが、定石だろ!?」


「……これまでと真逆のことをする、というのも新たな発見があって面白いと思いますよ。土日の逆、正反対の位置にある水曜日を休みにすることを、私は強くおすすめします」


「あ、あの、さ……! ボクを選んでくれたら、なんでもない木曜日が素敵なお休みになるんだよね……。それに、君と一緒に過ごせたら、ボクも嬉しいし……君も同じ気持ちだったら、ボクを選んでほしいな……!」


「……なぁに? あなた、まさか迷ってるの? この私、金曜日を選ばないだなんて随分といいご身分になったものね? 休日の前日だった私を、休日そのものにするチャンスなのよ? これを見逃すだなんて、あり得ないわ!」


「ヘイヘイヘーイ! こんな話になってはいるけどさ~、君は物心ついてから今の今まで、土日をお休みとして過ごしてきたわけじゃない? その生活リズムを崩すのって、良くないんじゃないかってあたし的には思うんだよね! というわけで、提案! お休みはこれまで通り、土曜日と日曜日ってことで、どすか!?」


「お姉さんも土曜日ちゃんの意見に賛成かしら。平日が休みって新鮮で素敵なことのように思えるけど、お友達と予定が合わせられなくて悲しい思いをしたりするものよ? ここはお姉さんのいうことを聞いて、今まで通りの日常を過ごした方がいいと思わない?」


「……なるほど、そういうことですか。全員、譲るつもりはないってことですね?」


「ま、わかりきってたことではあったけどな……まあ、こうなったらしょうがねえか」


「全ての判断は、彼に委ねる。彼自身が二人で過ごしたいと思う相手を指名して、私たちはその判断に従うことにしましょう」


「選ばれた人は、毎週丸一日ずっと二人きりでいられるんだよね? そうなったら、ボク……!!」


「選ばれなかったとしても恨みっこはなしでいきましょう。まあ、私が選ばれることは確定してるでしょうけどね」


「うっわ~っ! あたしたち、損しかないじゃん! まあ、君のことを信じてるから、別に不安になったりはしてないけどねっ!!」


「……さあ、聞かせてちょうだい。あなたは、どの子を選ぶのかしら?」


 ……さて、大変なことになってしまいました。

 この決断は重大で、重い責任を伴うこととなるでしょう。


 では、ここまで彼女たちと過ごしたあなたに、改めてこの質問を投げかけさせていただきたいと思います。

 準備はいいですね? 待ってくれだなんて言われても困ります。最初に質問してから一週間も時間が空いているのですから、その間に決めておくのが筋というものでしょう?


 さて、それでは……どうぞ、あなたのお答えを聞かせてください。

 ――あなたは、何曜日の彼女が好きですか?

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彼女の名前は○曜日 烏丸英 @karasuma-ei

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