第6話 妹と甘々で特別な生活

 シャワーを浴び、それから湯船にゆっくり浸かり一日の疲れを癒した。

 俺は風呂から出て、リビングにいる綾に声を掛けた。


「お風呂使っていいぞー」

「うん、ご飯出来たから食べてからにするね」


 テーブルには既に晩御飯が並べられていた。

 オムライスのビーフシチューソースとドレッシングたっぷりのカット野菜。そして、俺の大好きな黒烏龍茶。


 まるでお店のメニューみたいだ。

 綾の隣に腰を下ろし、正座した。


「美味そうだな」

「姿勢の良い正座だね、お兄ちゃん」


 そういう綾も同じく正座。しかも、制服の上に可愛らしいピンクのエプロンを掛けたままだ。万が一、汚れてもエプロンで防御できるし、合理的。


 というか、やっぱり制服のままなんだな。まあいいか、可愛い妹の晴れ着なのだから。


 手を合わせ「いただきます」を一緒に言った。



 ビーフシチューソースと共にオムライスをスプーンで割る。恐ろしいほど柔らかい表面に感動を覚え、形が崩れないよう丁寧にすくい上げた。


 それを口へ運ぶ。


 もぐもぐと味わうと、舌の上でオムライスがサンバのように踊った。……美味い、美味すぎる。高級レストラン出て来てもおかしくないクオリティだ。



「さすが綾だ。俺の舌が幸せだって言ってる」

「良かったぁ。最近、隙を見てスマホのレシピアプリで猛勉強していたから、出来るか不安だったけど成功して良かった」



 へぇ、そんなアプリがあるんだな。

 便利な世の中になったものだと感心しながら、俺は料理を味わった。



 ――食事が終わり、片付けは俺が担当。


 その間に綾はお風呂へ。



 綾ばかりに負担は掛けられないし、そもそもあんな美味しい料理を振舞ってもらったんだ。料金を取ってもいいレベル。それをタダで食べられるのだから、片付けくらいどうってことなかった。



 ひとり寂しく片付けを進めていると、背後から声がした。



「お兄ちゃん、ごめん。シャンプー取って~」

「ん? ……って、綾!」



 少し振り向くと、そこにはバスタオル姿の綾がいた。上手く隠しているとはいえ……谷間が窮屈きゅうくつそうだ。少し突いただけで零れ落ちそうな光景となっていた。


 えげつな……。



「ねえ、お兄ちゃん。大丈夫?」

「だ、大丈夫だ。えっと……シャンプーだったな。確か予備がキッチンにあったはず」



 探しに行き、棚を漁ると出てきた。

 綾が愛用しているロクシタンのファイブハーブスリペアリングシャンプーとコンディショナー。上品な香りがよくて、頭皮に良く髪がサラサラのツヤツヤになる。


 女子とって髪は命だから、投資は惜しまないんだろうな。一緒に生活するようになってから俺も使わせて貰っていた。おかげで髪の質が大きく変わった。


 ボトルを手に持ち、俺は綾の元へ。



「取ってきてくれてありがと、お兄ちゃん」

「これくらいお安い御用さ。それより、風邪引くぞ」


「うん、直ぐ戻るから。……あ、そういえば、ロクシタンのボディソープ、高かったけど良いね」

「ああ、ローズの。三千円もして馬鹿高いけどな」

「負担を掛けてごめんね」

「いいさ、綾にはいつもお世話になっているし、安いもんさ。それに、あのボディソープは俺も気にっている」



 というか、綾はロクシタン信者なのかもしれないな。結構拘っているようだし。まあ、別のブランドも使っているようだけど。



「じゃあ、綾は戻るね」



 手を振ってバスルームへ戻っていく。

 微笑ましい光景に俺は心が癒された。



 * * *



 このアパートは、2LDK。

 つまり、二部屋の他にリビング、ダイニング、キッチンがある。だから、俺と綾の部屋はそれぞれあり、快適な空間でゆったりと生活を送れていた。



 そんな俺は、自室のベッドで寝転がりスマホをいじっていた。ネットニュースで世界情勢を眺め、暗い事件の多いことに辟易へきえきする。


 なんで世界はこうも狂っているんだろうな。


 明日も学校があるし、もう寝よう。

 そうまぶたを閉じた時だった。


 スマホにラインメッセージが届いた。


 開いてみると綾からだった。



 綾:おやすみ、お兄ちゃん

 俺:おう、おやすみ

 綾:……あ、まって。一緒に寝る?

 俺:え? マジ?

 綾:うん。寂しい



 まさか、そんな寂しいと思っていたとは。この一週間、そんな素振りはなかったのに……今日は違った。


 なら俺のとるべき行動はただひとつだ。

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