3月28日 風邪を引きました。

 完全にやってしまった。

 風邪ひいた。


 風邪の方がマシとか言うからだ、アホだ。


『夜風なんかに当たるから』

「コート無いのが不味かっただけ」

【従者、呼びますよー?】


「お願い」

【先生にも繋ぎますねー】


【風邪ですか】

「コート無しで夜風に当たった」

「あ、桜木様、先ずは熱を」


「すんません」

【痛い所は有りますか?】


「腎臓辺りが重痛い、鼻と喉の奥が乾いた感じ、ボーッとする」

「一応、電気毛布を出しますね」

【アクトゥリアン、スープも】

【はいはーい】


 バタバタと世話をされ、何も考えられない状態で先生と話し続ける。


「風邪の方がマシとか言うからやね」

【いつもの様に夜風に当たったせいですよ、隠匿の魔法を封印したコートを申請しますよ】


「すんません」

【このスープ、食べれます?】


「なんとか」

【気が済むまで飲んで下さいね】


「はい。元気だと平気なのに、具合悪いと寂しく感じます」

【誰に会いたいですか】


「従者、ミーシャ、先生、世話、構われたい。あ、ちょっと下腹部も、腸も痛いかも」

【本格的に風邪ですね、アレク君で良いですか】


「ウエルカムですぞ」




 サクラが風邪、風邪って。


「バカだなぁ、夜風で風邪って」

「お弔いをしてた、花を流してた」


「少し鼻声だ、珍しい」

「そう?そうか、ずっと一緒の錯覚」


「日本語変」

「なんとなく分かるでしょ」


「うん」

「なんで錯覚するんだろうね」


「お互いを良く知ってるから?」

「ワシは君を良く知らん」


「馬鹿でチャラい阿保」

「だけじゃ無いでしょ」


「眠れないの?」

「腰がしんどくて無理」


さすろうか」

「甘やかされて良いのかね」


「一応、親戚じゃん」

「流石に親戚の兄ちゃんに腰をさすられた事は無い」


「じゃあ、俺が初めてだね」

「くそが」


「はいはい」


「なんか、話してくれ」


「今日は曇り後雨、日中の最高気温は20℃を越える見込み」

「良い声よな、落ち着く、そっくりよな魔王と」


「魔王と同じで落ち着くのはヤバいんじゃない」

「ワシには無害だったもの、有益だった」


「そっか。この状態、従者に誤解されそう」

「じゃあお前は布団はげ」


「寒く無い?」

「寒気は無い、怠い、重怠い」


「ぬいぐるみは?」


「全部、急に、また転移したら置いていきたく無い」

「新しいの買って来るよ」


「とびきり肌触りが良いのを頼む」

「大きさは?」


「蜜仍君位」

「デカい、やっぱ人肌恋しいんじゃん」


「寒くは無い、お腹痛い」

「赤い玉出ちゃうか」


「クソ、いっそガッツリ発熱してくれれば良いモノを」

「先生に聞いてみようよ」


【落ち着きましたか?】

「熱出る感じ無い、お腹痛い、どうしたら早く治る」


【それなんですが、制御具のせいで治癒力落ちてますよね】

「かもね、2でも治んなかったし、0の世界ではいつもこんな感じよ、ずっと」


【かと言って外して貰う気は】

「肺炎位はいかないと無いね。温泉入れば良くならんかね」


【長湯は禁物ですよ、消化に良いモノを食べて休憩してから、様子を見て】

「うい」

「移せば治るってマジ?」


【デマですよ。では】

【取り敢えず何を出します?】


「温泉玉子で」

「だけ?」


「お腹痛いから様子見」

【はーい】

「何か買って来ようか」


「良い、構っててくれ」


 温泉玉子を1つ、スープ2杯。

 エリクサーは無し、怠そう。


「何でエリクサー飲まないの」

「何か、良いのか確認するのも面倒だし、力を削ぎたいならダメでしょう」


「そこまでする?」

「おう、意地だ」


「バカみたい」

「バカだから意地を張るんだバカめ、お腹痛い、腸弱ってんなコレ」


「いつもこんなんだったの?」

「年2回は。もっと酷いと、腸が個別で痛くなる事も有った、腸閉塞手前」


「原因は」


「……ストレス」

「もー、もうやめよ?」


「意地だ、それと勝手に罰だと思ってるから良いの」

「じゃあそれ、俺に分けてくれたら良いのに」


「制御具が有るんでな、残念だ」

「無しなら分けてくれんの」


「なんだ、面倒見たく無いなら帰れ」

「ドM」


「くそ野郎」

「他のお腹の病気も、ストレスなんでしょ」


「向こうでは、原因がハッキリしないのは全部ストレスって事になるの」

「ストレス解消したら良いのに」


「する元気が無い」

「それ、抑うつ状態なんだって」


「知ってる、自然な流れだ、そのウチ回復する」

「誰も喜ばないと思う」


「記憶が戻ったリリーちゃんとか巫女さんは喜ぶんじゃ無いの」

「小野坂は居ないんだ」


「全部は知らないけど、マサコちゃんは歪められたんだと思う、だから喜ばない、凄い謝ると思う」

「他も、改心してたら喜ばないと思うけど」


「簡単に改心出来たら、怠惰も憤怒も苦労しないでしょ」




『っしゅん!』

「噂話だな」


『アイツだろうな、風邪引いたらしい』

《治しに行ったら、ダメなんですよね》

「天使の気持ちは有り難いだろうが、贖罪と思っているなら、機会を奪う事になるだろう」

『あぁ、マサコが受けた仕打ちを自ら再現するだなんて』

【もどかしい、不合理だ】


「そんな事を思い、させているとは」

《思ってらっしゃらないでしょうね》

『人間なんてそんなもんだ、それよりまだ会議は休廷中なのか』

『はい。私、1度撤退しましょうか?』


『いや、もう根比べだ』

「意地の張り合いだ」




 ハナさんの具合が悪いらしい。


《ただの風邪じゃよ》

『え、本当に病弱過ぎません?』

『魔道具無しで夜風にな、弔いにと花を手向けたんだ』


《亡くなった従者と、第2地球の者にじゃ》

『もししたいなら朝にした方が良い、お前まで風邪を引かれたら困る』

「そうですね、花を集めておきますよ」

『うん、お願い』




 お散歩していると、街路樹の小枝からクエビコ様が話し掛けて来たのだけれど、不穏。


『ハナが風邪を引いたらしい』

「は、何してんのあの子は」


『死者へ花をと、夜風に当たり過ぎたらしい』

「はー、バカじゃないのもう。アレク、アレク、アンタが世話してんの?」

【おう、今寝たとこ】


「チキンスープ、あの店の買ってってあげなさいよ」

【あぁ、うん】


「後はアイス、ヨーグルトも」

【買っといてよ、構えって言われてるから】


「あら可愛い」

【うん、だからあんまり離れたく無いんだけど】


「分かったわ、買いに行きましょ白雨」

『あぁ』

【あ、後はぬいぐるみも、欲しいって】


「なにそれ凄い可愛いんだけど」

【でしょ、肌触り良いのを頼むって】


「ええ、任せない。ちゃんと面倒見てあげるのよ、宜しく」

【おう】






 路地裏で、屋内で、道は入り組んで迷いそう。

 でも案内板は有るし、コレ、どこかで。


「九龍城だコレ、キター」


『喜ぶ所なのかココは』

「マーリン、コッチに九龍城無いの?クエビコさん」

『有るとは聞いているが、どうだろうか女媧』

《有るけれど、そう、コレがアナタの九龍城なのね》


「あは、複雑ぅ、迷路やんけ」

『お前、地図読めて無いのに』

《私でもちょっと、難しいわね》

『地図と言えば、誰だ?』


「蜜仍君じゃろ、でもなぁ」

《それか、私だろう?》


「あぁ、もう完全攻略したも同然ですな、宜しゅう土蜘蛛姐さん」

《承ろう》






「サクラ、ちょっと行ってくるよ?」


 熟睡してる。


 下に降りると従者が話し掛けて来た、忙しいのに。


「あの」

「寝てる、欲しがってる物を買いに行く」


「そうですか、コチラで何か準備は」

「何も、自由以外に要らないんじゃ無い」




 そう言って、中央分離帯跡地へ元魔王が行ってしまった。

 彼も人間、なのに人間を見限った様な表情で。


 命令とは言え報いる事すら出来無い、辛い、誰もまたお世話をしたいと言わない理由が良く分かった。


 罪悪感でいっぱいになるからだ。

 全ては国連のせい、どうしたら、召喚者様が報われるのだろうか。






「白虎さん、もふもふぅ」

《四聖獣が居るのね》

『人工物と自然が、こうも混在出来るものなのだな』


「魔法もそうだけど、科学も結構何でも出来ると思うよ、アプローチが少し違うだけで、夢を叶えてくれる。あの天窓、実は照明だもの、向こうに有った」

《ふふふ、浮島をどうするか考えていたのだけれど、コレも良いかも知れないわね。対の九龍城、陰と陽》


「じゃあ、こうでしょう、鏡合わせで。ココでジャンプすると、コッチ来れるの」

《そう、戻る時はどうするのかしら?》


「アレ、案内板、避難するやつ各所に有るし」

《ふふ、じゃあ、そうしましょう。1つ頂くわね》


「まいどー」


『あまり消費させるな』

「だって」

『おや、マーリンとケンカかな』

《お邪魔してるわねハナ》


「ロウヒ、イルマリネンも。いる?」

《勿論よ》

『1つ下さいな』


「あいよー」

《ふふ、浮島屋さんね》

『良いお店だね』


「おー、お店屋さんか、したかった、助かる」

《良いのよ》

『じゃあまたね』


『お嬢ちゃん』

《我々にも1つ良いかな》

「自治区の方々、どうぞですよ」


『ふふ、ハバスをもう1つ作るか』

《ウチは川と湖だ》

「まいどー」


《ふふふ、大繁盛ね》

「ニュクスさん達も?」

『少し違うんだ、僕らのはロキにあげたいんだけど』

《ダメよ、アレに自由にさせたら危ないわ》


「じゃあ、ヘルのはこうした鏡合わせのね」

《くっつけて、繋げても良いのかしら》


「中央分離帯やね、ほら」

《なら、私達のをココに》

『コレなら安全だろう?』

《まぁ、そうだけど、ロキにはナイショよ?》


《そうね、ふふふ》

『そうしよう』

「まいどー」


『1つ下さいなー』

「エイル先生も?」


『ちょっとね』

「まいどー」






 桜木様付きの従者から連絡が。


【あ、の、柏木さん】

「どうしました、何か異常事態ですか」


【浮島が、分離を、一部は変形したりと】

「桜木様のバイタルチェックをお願いします」


【あ!はい】


「ドリームランドでしょうかねぇ」

『柏木さん、非常に由々しき事態と言うか』


「今度は何でしょう」


『転生者様が、国連で、生中継を』

「は」




「加治田リズ、転生者だ」

「移民のアポロ、同じく転生者で、今は鈴木千佳です」


「今、召喚者の桜木花子に制御具、魔法を封印する魔道具が着けられてる」

「ハナは皆さんに安心して貰いたくて、国連に渡したんです」


「でも今、浮島で風邪を引いて寝込んでる。病弱で、真面目だから外す要望は出して無い」

「で、私達は、何で着けさせたのか理由を知りたい」


「それと会議の内容、常に俺らが知れなくても良い、知るべきじゃ無い内容も有ると思う。だけど透明性や公平性の為に、神様や精霊、天使でも良いから介入させたかった」

「だけど否決された、理由は情報の不平等や不均等が起きるから」


「でもそれは、それこそ神々や精霊、天使がどうにかする事だ。それを人間が立ち入った判断をしたと思う」

「人間側の越権行為だと思う、私なら喜んで受け入れて任せる。疚しい気持ちが無いから」


「だけど、コレは制御具の撤回要請でも、神々の介入の強制でも無い」

「ただ理由を知りたい、そして国連は納得させるべき立場」


「叶わないなら脱退する、カーネーションズを編成して、神々と転生者の新しい組織を作る」

「全員に納得して貰えるとは思わないけれど、納得して貰える組織にします」


「支援団体の方も募集します」

「もう気付いてるとは思うけど、本と同じ。RTTのメンバー募集です」


『では、次は私かな。どうも、伝令の天使ガブリエル、ジブリールとも呼ばれているんだけど。見えてるかな、聞こえてるかな』

「俺は見えてる」

「私も」


『では見聞き出来てる前提で話すね、私がココへ来たら会議が休廷し続けてるのだけれど、皆さんはどう思うんだろうか。不均等、不平等が起こらぬ様に、ドリアードやクエビコと協力してると伝えたのだけれど、何故かダメだったんだ』


『自治区で補佐をしていました、マイケルです。私にも、話させて頂けますかね』

『どうぞ』


『先日、私も会議に神々の同席を要請する陳述書と、制御具装着の理由を国民にも開示すべきだと提案したんですが、ダメでした。元補佐、一個人だったからと思ったのですが』

「俺らのと別でだな」

「コッチは2種類出したわよ、個人と転生者として」

『一括で拒否ですか。増々、何故なのか気になりますね』




 柏木氏からの連絡、随分と慌ててらっしゃる。


【コレはちょっと、ビックリなのですが】

《癖はうつるそうですし、突拍子も無い所がうつったんでしょう》


【あぁ、はい、それで、桜木様は】

《消費は無さそうですが、ドリームランドで何か起こってますねコレ》


【では、ドリームランドは】

《人間にだけ、閉じている可能性は有ります。能力を抑えてる以上、不測の事態を防ぐのには最適かと》


【またお眠りになる可能性は】

《無いでしょうね、今繭になれば逃げたと思われる可能性が有るので》


【ですが、今こそお眠りになられた方が】

《私も一瞬、そう思ったんですが、そも召喚者の意義を考えたんです。第2世界では御使いと呼ばれていましたよね》


【はい】

《なので、もしかしたら、純粋に神と人を繋ぐ存在なのかも知れませんよ。だからこそ、人間の都合には決して阿らない、阿れば大罪か魔王になってしまう、そんな呪いが掛かっているのかもとは、思った事はありませんか?》




《ネイハムが良い答えを出したぞぃ》

『人間から出て欲しかったがな』

『なになに、凄い気になるんだけど、何その答えって』


《人間の都合に決して阿らんのが召喚者、御使い。阿れば大罪か魔王と化す呪いが掛かっておるのでは、じゃと》


『おー、彼、天才じゃない?』

『だが、人間に辿り着いて欲しかったらしい』


『だれが?』

『オモイカネだ』




【柏木さん!】

「はいはいはい、次は、施設長ですか、どうされました」


【勝手に施設が稼働したらしく、今向かってるのですが】

「どうしてこう、次々に。桜木様は、いつもこう、感じてらっしゃったんでしょうかね」


【柏木さん】

「はいはい、制圧部隊を向かわせますが、先ずは誤作動の確認を。安全確認が難しければ、無理せず避難していて下さい」


【はい】




 そう言われても、私には責任が有るのだし、何より昨夜はちゃんと点検をして出た。

 召喚者様が腕を民間人にあげてしまったので、最低限の材料だけを補充した筈が。


『どこで、ミスしたんでしょう』

「確かに、1体分に、深夜に補充されていますね」


『どうしましょう、魔王か悪魔が蘇っちゃったら』

「そこは召喚者様を信じてますから、問題は」


 消した筈の桜木様のデータ、魔王のデータ、そして虚ろ舟に有った井縫侑翔のデータ。


 特に有り得ないのは、魔道具に付着していた、観上清一、マティアス・ローリゼンのモノと思われるデータ。

 コレを知っているのは極僅か、桜木花子様も知っているかどうか。




『何を企んでいる、オモイカネ』

【私も、遊びたい】


『な、遊びたいと』

【たのしそう】


『お前、寂しかったのか』

【寂しくは無い、でも遊びたい、イオンの匂いを嗅いでみたい】




 ハナが風邪を引き、眠ってから、ドリアードや土蜘蛛の動きがおかしい。

 雰囲気も、何もかも。


《どこまでも灯台じゃのう》

『なんだ、アイツに何を』


《ふふ、コレは秘密じゃ、直ぐに分かるでな》

『ならお前は出禁だ』


《ちょ》




 再び何もする事が無くなり、実家に行き、甥と遊ぶ。

 桜木さんは子供が嫌いじゃ無いのに、産み育てる事も諦めて。


《ちょっとコレ、祥那しょうな、大丈夫なの》

「コレ、祥那しょうな君の職場関連よね?」


「え、あ、はい、多分」


 タブレットには、何で、リズさんと鈴木さんが国連に、しかも有志を募って。

 桜木さんは。


《ちょっと行ってらっしゃい》

「追い返されたら、また遊んで貰いましょうねー、バイバーイ」

「ばいばい」


「はい」


 省庁へ向かうと、記者や何かが正門前で大勢待っていた。

 急いで裏口に向かい、柏木さんの執務室へ。


「あぁ、助かりました。少し、連絡するか悩んでたんですよ」

「また桜木さんが」


「違うんですよ、桜木様は、風邪で寝込んでらっしゃり、今回とは無関係の様です」

「風邪って、あ、でも制御具にそんな力は」


「以前と同様に、そう思い込み、自己治癒まで停止させているらしく」

「じゃあ、その機能は無いと言えば」


「もしかしたら、制御具すら本来は効いてらっしゃらない可能性も有るんです。なんせ魔法は」

「何でも出来ます、けど」


「はい、装置の装着はあくまでも儀式であったなら、弱点を翻すのは、今努力してらっしゃる事を無に帰す行為」

「それで、今は」


「アレク君が付いて面倒を見てらっしゃいますが、それも時間の問題かと。国連が他の会議室にて、アレク君の空間魔法封印の話し合いが行われているそうです」

「そんな事をしてる場合じゃ」


「そうです。伝書紙事件同様、この世界にも我欲を通したい者が居る、そう言う事でしょうね」




 召喚者様に改めて謝罪も出来ぬまま、国連へ帰投。

 そのまま元の業務へ戻り、仕事を続けていた。

 そうしていつもの様に議会案を分類していく中で、おかしな点に気付いた。


 神々や精霊のお手を煩わせまいと、神託を請う回数が減り。

 部署の予算が減り、人数が減り。

 そしていつしか各国へ神託の内容を請う事に、そして手間暇が増え、部署は解体され。


 そして他国へ請う事も減り、またその部署も消え。

 他にも、神々や精霊に頼らずとも良い様にと、ゆっくりと変化していた。

 それは魔法に関する事も、アレも、コレも。


 いつから、不便が正義になっていたのだろう。

 いつから、神々へ意見を伺う事をやめたのだろう。


 他国の人間に聞いても、いつからかは分からず。

 違和感に誰しもが気付いていたのに、内部監査への報告は無し。


 誰かが報告するだろう、もうしただろう。

 平和だから良いだろう。


 そうして今やっと気付いた私が報告へ向かうと、やっとかと内部監査部が資料をくれた。


 無色国家の介入。

 教会の汚染もココからだ、と。


『コレは』

「アナタが聞きに来る前の資料なので、非公開、非公認ですよ。正式な依頼が無いと動けないシステムですんで」


『では、正式な依頼を』

「代表者の名前、アナタになるんですよ。向こうの隠匿が完全なモノになれば、アナタの不名誉になる。何人かがこの忠告で怖気付いて逃げたんでね、忠告ですよ」


『少し、考えさせて下さい』

「どうぞどうぞ、我々は常に動ける状態ですんで」


 これは一大事、厄災に匹敵するのに。


 だから誰も大事にしなかった、少なくとも厄災の認定がなされて無いから。


 所詮は余波、人間の理。

 証拠を挙げられ無ければ、守るべき家族、名誉が揺らぐ、一歩間違えば汚名を被るだけ。


 ただ、召喚者様に報いずに引けるだろうか。

 問題は私の不名誉では無い。

 完全な証拠を上げて、壊滅させたい。

 どんな手を使っても。


『そう悩んでいた時、私にお声掛けして下さったのが、マイケル元補佐と、死の天使様です』

『私は、偶々お声掛けを』

【死のうとしてるのか心配だった】

「それで、証拠は」


『はい、コチラに』


 案の定、回線も電源も遮断された。

 それすらも転生者様や天使様の想定内、妨害が有ると知らしめる為のパフォーマンス。


「元の電源切られたなコレ」

「少し暗いけど続けられますよね」

『まぁ、私が居るので回線遮断は無意味なんですけれどね』

【舐められてますね】




「柏木さん、コレって本当に」

「確認に行きますか、津井儺ついなぎ君」


「ですが」

「ココの裏の池、お忘れですか?」


「それは、あくまでも召喚者様に」

「聞いて、確認してみましたか?」


「いえ、行ってきます」




『施設長、誰も、居ませんけど』

「ココで待っていて下さい、何か有ればお願いしますね」


 施設は稼働を続けている事は外部からは確認出来ても、詳しくは地下内部に行かなければ分からない。

 万が一、悪しき集団が居るとなれば報告をと思ったものの、人影は一切無し。


 ただ機械が人体を製造し続けているのか、稼働音が聞こえる。


 メインルームを確認。


 異変は一切見受けられない。

 続いて製造部へ。


 コレは、もう既に出来上がっている、なら通知すらワザとなのか。


 そう思った時、右の踵に違和感を覚え、視線を向けた。

 植物の蔦なのか根なのか、靴と踵の隙間から一気に成長を始めた。


 そのまま動けずにいると、蔦は出来上がった人造人間へ、そうして銀色の水滴を1滴垂らすと枯れ、同時に蘇生装置が動き出した。


『施設長!』

「どうやら我々が良く知る、我々を良く知る神様の、悪戯の様ですね……」






 浮島屋を出て散歩しようとしていると、見知った顔がキョロキョロしていた。

 施設長。


「あれ、施設長なんでココに」

「神々の触媒、歯車に利用されたみたいでして」


「あぁ、大変ですな」

「あの、ココは?」


「九龍城の浮島屋、ワシ店主」

「そうでしたか、どうしたら売って頂けるんでしょう」


「浮島どうするん?」

「そうですね、施設を移植し、より安全にしたいですね。そして神々の手に半分委ねようかと」


「人間側が許してくれたらね」

「それが、1番難しい事なのかも知れませんね」


「桜木様ー!なんですココ、誰ですかこの方は」

「施設長、ココは九龍城の浮島屋」

「どうも、ホムンクルス施設、施設長です」


「へー、魔王を無力化して頂いてありがとうございます、僕は土蜘蛛族の山之蜜仍です」

「ぅう」

「施設長、涙もろ」


「不安ですか?大丈夫ですよ、桜木様はお強いですから」

「それが不安だったりして」

「違います違います、感謝されるだなんて、嬉しくて」


「ふふ、もう探索されました?」

「まだ、少しは土蜘蛛さんに案内して貰ったけど、地図が読めぬし、ココ複雑だから」

「でしたらお任せを、マッピングや暗記には自信が有りますので」


「僕も!探知もお任せ下さいね」

「おう、2人に任せた」

「はい、お任せを」

『ハナ、一般人には非公開だろ』


「神性と関わったら一般人ちゃうやろ、施設長は触媒にされたんだろうし」

「あの、マーリン導師で?」

「ですよー、可愛いらしい方ですよね」


「これ、ワシと同じで褒め言葉が嫌いなんじゃから」

「はーい」

《大丈夫だ、心配し過ぎだぞマーリンは、少し奇妙だが面白いぞココは》

『コレは土蜘蛛の長だ』

「あぁ、はい、宜しくお願い致します」


 結局は一緒にと、探索が始まった。

 なんでも屋を細分化した個人店が犇めき合う、ごちゃまぜチャイナタウン。


 四方には四聖獣が立体的に配置されている、地下の北には玄武、中段の西側に白虎。

 暫くして東側には青龍、南に朱雀と段々に配置されてて、そして最上部中央には黄金の麒麟。


 人々が発する欲望の黒い靄と悪鬼を糧に、聖獣はのんびり過ごしてる。

 難易度は中級クラスかな


『あぁ、だろうな』

「マーリンにはつまらんか?」


『いや寧ろ、悪鬼や靄は、初めての人間には難しいだろう』

「ですねー、ビックリしちゃうかもですね」

「でしたら、手前に似た施設でマヨイガを作ってはどうでしょう。初心者はカードキーが無いと入れない」


「確かに!カードキーを探せる能力が有れば、ココでも大丈夫でしょうね」

「まぁ、危なくなれば聖獣が何とかしてくれるべ」

「そこですよ、寧ろ悪しき者は排除して頂きたいんですが」


「それ良いかも!何処でも誰でも受け入れちゃうのが心配だったんですよー」

「そうですね、ココには何でも有りますし、この位のセキュリティは当然ですよね?」

「お、おう」


 カードキー持ちは直通で九龍城内部へ、カードキー無しはコンパクトになった良く似た場所で、カードキーを探す所から始める。

 貸し出し品の魔道具を手に、先ずは蜜仍と施設長がお試しへ。


「アカン、めっちゃ心配やわ」

《まぁまぁ、管理者の手助けは可能なんだ、見守ろう》


 自分の能力に見合った品さえ選べば、自然と分かるルールに従えば、カードキーは手に入る。

 無秩序な建物の秩序正しいルール、破れば振り出しか永久追放かな。


「それとこう言う場合、ギルドが有るべきやんな」

「あ、掲示場だ」

「砂漠地帯、再攻略とは?」


「あぁ、砂漠地帯に蜃気楼の砦が有って、コッチに帰って来て確認して無いんだわ」

「行きたいんですが!」


「蜜仍君、お勉強は?運動とかお手伝いは?」

《だな、そろそろだ》

「ぅうー、はぃ、また来ますね?」


「おう、行ってらっしゃい」

《施設長もだな、報告してくれて構わんよ》

「はい、ですが少し考えさせて下さい」






『はな』

「へ、誰、つかショナ私服やん、萌、あれ、何で居るのショナ、つか誰よ君は」


『あてて』

「へ、ワシ起きてるのよね、熱有るのかしら」


『ねー、あてて』

「ショナ、どうなってるん」


 桜木さんの部屋に入った瞬間、窓から侵入したずぶ濡れの不審者と目が合った。

 そして無視され、不審者はそのまま布団の上に覆い被さり。


 それと同時に桜木さんが目を覚ましたのだが、全く現状が把握出来無い様子。


 桜木さんも、僕も。


「あの、桜木さんが風邪で寝込んでいると」

「うん、寝てたけども…だれ」

『かみさま、あてて』


「取り敢えず乾かしますね【ドライ】」

「クエビコさんじゃないし」

『おしい』


「うそ、マジか、オモイカネさん?」

『うん』


「なぜ、全裸でココに」

『ホムンクルス』


「あぁ、だから施設長が触媒に。ショナ、施設長の安否確認」

「はい」

『ちょっとなのに』


「でもだ、何でワシに言わんのよ」

『めいわく、少しにした』


「柏木さん、今桜木さんが目覚めたんですが、施設長の安否確認をと」

【そうでしたか、施設長は無事ですよ、先程お目覚めになり、軽い脱水と魔素低下だそうなので、ご心配無くと】


「はい、分かりました。それと、オモイカネ様らしき方が」

【成程、分かりました。丁重におもてなしを】


「はい」

【では】


「はぁ、ちょっとドリームランドに行ってただけなのに」

『ふふふ』


「先程お目覚めになったそうで、軽い脱水と魔素低下でだそうです」

「エリクサー、分けられないかね」

【はーい!分けておきますねー】


「おう、オモイカネさんや、何でよ」

『イオンの匂い、かぐ』


「鼻にバチンす…誰の遺伝子よ」

『いろいろ』


「ばか、なんて事を、でもマティアスのは」

『ふふ』


「ソラちゃん」

《はい、概ねその通りです》


「種の運び手だと気付いてたんか」

《いいえ、ですが遺伝子保存は有益だと判断しました》


「それこそ未知の外来種で、人間の許可が」

『いみんも?』


「いや、でもだ」

『なにがちがうの?』


「いや、いやいやいや、ショナ、バイタルチェック頼む」

「はい」


 珍しく、と言うか初めて桜木さんが混乱している。

 正にパニック、本当に普通の人間なんですよね、まだ微熱も有るし。


「まだ微熱か、頭が回らん時に」

「あの、リズさんや鈴木さんとは」


「あぁ、最近会って無いが。何かしてるんか」

「いえ、はい、まぁ、少し」


「何でワシの寝込みに行動する」

『はなのせいにならない』


「オモイカネさん、3と違うような」

『ううん、多分、ぜんぶいっしょ』


「何で言いきれる」

『水銀はかみの雫、不老長寿はいっしょ』


「この体のオモイカネさんと、水銀のは」

『同一個体、温かいは気持ち良い』


「取り敢えず、服を着てくれんかね」

『えー』


「えー、ショナ君、任せた」

「あ、はい」


 エミール君や蜜仍君と同じ年頃だろうか。

 先程挙がった名前の人間以外にも、どれだけ混ざっているのだろうか。


『ふふ、人心を把握できない、しない理由わかった。表情、おもしろい』

「はいはい良かったですねー」


『もう、ハナの為もあるの』

「はい、着せ終わりましたが」

「もう、纏めて病院に行くべきなんだろうか」


『ネイハム、どんな匂いかな』

「ショナ頼む」

「直ぐに連絡してきます」


「もう、下に行く」

『ぬいぐるみ持つ』


「こけないでよ」

『がんばる』


 女性従者に事情を説明している間に、桜木さんはトイレに行き、暖炉前でグッタリしている。


 本当にオモイカネ様だとしても、懐き過ぎと言うか。


《あの、何かお飲み物を?》


「あ、いや、大丈夫です。アクトゥリアン、ホットココア有ったかね」


 一瞬止まった、具合が悪くても止まるんだろうか。


【もー、無いですよぅ、ショナ君お願いしますね】

「あ、はい、じゃあすみませんが連絡をお願いします」

《はい。お世話になっております、桜木様の、はい……》


 ホットココアを作り手渡し、再びタブレットを手に取り、桜木さんに視線を戻す途中、女性従者と目が合った。


 気の所為だろうか。


「甘さはどうですか?味覚有ります?」

「大丈夫じゃよ、ホロ甘い。それより向こう、困ってそうだぞ」


「あの、何か揉め事ですか」

《この、国連のコレで》


「あぁ、通信での面談は」

《はい、確認してみます》


 目が合ったのは、気の所為では無かった、こんな時に不謹慎過ぎて、何か、嫌悪感が。


 どうするか考えていると、私用の携帯がおかしな挙動をしたので確認。


 何故か、アクトゥリアンからメッセージが。


【キラキラ、見えてます?】


「あの、アクトゥリアン」

【はいはーい、なんですか?】


「このメッセージは」

【桜木さんの為なんですが、余計なお世話なら今後は一切合切止めますね】


「あ、いや、いえ、大丈夫です」


 つまりは、同僚からの視線を桜木さんが確認してしまったと言う事なのだろう。


 現にコチラに背を向ける体勢になってしまったし、コレは誤解じゃない、そうなると雨宮さんの事も。




 また、キラキラ見ちゃった。


『モテモテ』

「平凡がモテモテ事件有ったからなぁ」


『私は紙媒体だけ、かお、分からない』

「それなのに可愛いぞ畜生、ズルいなぁ」


『すき?』

「返答に困る、何人か混ぜてるだろ」


『うん』

「最悪最強を想定すると、お腹痛い」


『治さないの?』


「その顔で言うのはズルい」


「桜木さん、大丈夫ですか?」

「腸に少しきてるだけ、問題無い、下したりは無い、大丈夫、うつるかもだしアッチ行ってて、オモイカネさんも」


『泣いちゃった』

「泣いて無い、トイレ」

「あ、はい」


 マジで泣いてないんだが。




 髪の長さもあって、俯いていて泣いているのか確認出来なかった。

 それにしても、一体どうして。


「何を、言ったんですか」

『私だけのせい?心当たり無いの?』

【お手伝いしますよ?】


 あぁ、もしかしたら嫌な事を思い出してしまったのかも知れない。

 前のか、その前のか、更にその前のか。


 ココの女性の邪魔をしたく無いから、女性を避けたのかも知れない。

 なら、僕は僕で出来る事をしなくては。


「では、お願いします」

【勿論ですよ!】


「あの、少し宜しいでしょうか」

《あ、はい》


 竜のセレーナさんや、桜木さんの言うキラキラを、ちゃんと確認出来てしまった。

 全く、嬉しく無い。


【確認出来ました?私は出来ましたよ?】

「はい。迷惑なので帰って頂けますかね、視線に気付かれました」

《え、と、何の事でしょうか》


【視線、見つめたり眺めたりしてましたよね?今さっきも、熱視線☆】


「分からないなら結構です、交代申請はコチラで出しますので」

《え、あ、そんなつ》

【では、好意が無いと私に宣言出来ますね?】


《その、それは》

【では、もう申請もしましたので、お帰り下さい。プライベートな気持ちは、プライベートの時間にお願いしますね】


《失礼しました、失礼、します》

【泉でご帰還を!さよーならー!】


「ありがとうございます、助かりました」

【アナタの為なんかじゃ無いですよぅ、桜木さんの為です】


「桜木さんは、だから女性を避けてたんでしょうか」

【どちらかと言えば研ぎ澄】


 過度な介入にならない様にとは言え、言葉半分で消えるのは少し違う様な。


 そして、この数ヶ月で研ぎ澄まされたなら、やっぱり雨宮さんが。

 でもプロ意識も有り、桜木さんとも。

 いや、本当に親しみを込めて接してるとは限らない、そうなるとワザとそうしてる可能性も。

 いや、でも。




 ストレス性の便秘になりかけかも、危ない。

 つか、もう1人は何処へ。


「あれ、従者さんは」

「ココに居ますよ」


「君は私服やん、そんなヤバいんか」

「いえ、偶々です」


「魔道具無しでもバレバレじゃろが、ちゃんと大人しく。繭に戻ろうか?」

『いっしょにはいる』

「どれもやめて貰って良いですかね」


「えー」

『えー』

「あ、柏木さんですので、少し待ってて下さいね」


「流された」

『ながされた』


「喋り難いか」

『なれない、きっと、はしれない』


「良くココまで来れたね」

『輸送、ヘリから落ちて、水、通った』


「無茶を」

『匂いはだいじ』


「データ的に、匂いは数値化したり出来無いのかね」

『匂いはデータのけっか、個体差の感じるは少し違う』


「あぁ、何か分かる気はするが」

「オモイカネ様、あんまりくっつかないで頂けませんか、そのお体、男性ですよね」

『けいかいされている』


「あぁ、本当だ、喉仏有るわ」

『生殖機能はばっちり』

『すまんな、こんな奴だとは』

《体に心が持ってかれとるんじゃろ》

『こう、幼くなりますかね』

『灯台にコレだけ群がるか』


「なので、ご遠慮頂ければと」


《マーリンや、言えた義理かのぅ》

『チッ』

『すまんが、面倒を頼む』

「おう」

『まかせて』

『もう少し、ナイショでお願いしますね』


「あの、桜木さん」

「へい」


「柏木さんとお話し頂いても」

「へい」




 桜木様、少し顔色が良く無いですな。


「お体の方は大丈夫ですか」

【へい、ワシなんもしとらん】


「そこは確認も取れてますし、疑ってはいません。従者の件でお話しが有りまして」

【へい、何か有りましたか】


「いえ、従来通りになりますので、宜しくお願いします」

【へい】


「先生との面談は暫くお待ち下さい」

【へい】


「はい、では」


 桜木様には悪いのですが、今は緊急事態。

 タブレットを通じ、ネイハム先生に桜木様の状態を確認して頂いたのですが。


【気付いてらっしゃったのは確実です。この様な状況でも、アナタを庇ってらっしゃるとは】

《本当に、申し訳御座いませんでした》

「久し振りでしたから、嬉しかったんですね、まだ若いんですから、お気になさらず」


【ただ、もうココには居られないでしょうね。他の女性従者から、怒りを向けられる可能性は有りますから】


《それは》

【まぁ、プライベートもそうですが、お好きにどうぞ】




 ショナから聞き慣れぬ音。


「む、聞き慣れぬ音」

「個人用ですから」


「やっぱちゃんと準備を」

「あぁ、大した事じゃ無いですし。家族には言ってあるので、大丈夫ですよ」


「あぁ、写真、やっぱ良いや」

「大丈夫ですよ、見ても」


「良い、すまんな休みなのに」

「柏木さんが呼び出そうとしたタイミングで、僕が偶々省庁に行っただけですよ」

《半分はマジなんじゃよなぁ》

『いいたいみんぐだなぁ』


「本当にな、ドリームランドに新施設が出来た」

《痛いか、オモイカネや、腰を擦ってたもぅ》

『こし?』

「いや、上、腎臓らへん」

「本当に大丈夫なんですか?」


「薬が飲みたいレベルでは無い」

『気を逸らさせてやってくれないか』

《折角じゃ、映画で良かろう》

『えいが、みる?』


「流すか、なんか頼む」

「じゃあ、怪獣モノにしましょうか」


 コレは頭空っぽで平気。

 ハリウッドリメイクと思えば、違和感も仕事をしない。


 ただ、怪獣モノで泣くとは思わんかったわ。


《コレで泣くか、相当弱っておるでは無いか》

『かいじゅう?はかせ?』

「博士か、両方やな、ヤバいな、弱り方がおかしい」

『もう前とは違うんだ、抑制魔法も無い、容易く心が動いても仕方無い』

「やっぱり、病院に行きましょうか」


「大丈夫、ただ先生とはマジで面談するわ」

「では、連絡してみますね」




 桜木花子との面談。

 映画で泣いたので、自身が大丈夫なのか心配になったらしい。


【怪獣に触れたシーンでもうね】

《あぁ、あのシーンですか》


【もうね、触れた辺りでもうピーク、耐えられんかった】


 化け物から怪獣に。

 格上げと言うべきなんでしょうか。


【かいじゅうとじぶんをかさねた?】

《オモイカネ様、データの盗み見は》

【いや、ワシ怪獣やと途中でマジで思った、大勢が封じ込めたいのは一緒だし、一部に憎まれるのもそうだし】


《半ば誤解だとお伝えしたいんですが》

【まぁ、実際に見聞きはして無いからね】

【だけ?】


《何かあったんですか?》

【いや】

【ショナにメールきてた、すきですって、むりっておくってた】


【あぁ、マジだったか】

《あぁ、連絡しておきましょうか》


【ワシの事は気にせんで、従者は変わらず女性で良いのに】

《従者の代わりはいくらでも居ますが、アナタの代わりは居ないんですよ》


【どうしたら代わりを残せる】

【にんしん?】

《今は止めて貰って良いでしょうか》


【しないしない、コレ、本当にオモイカネさんかね】

《そうでしょうね、特異なデータへのアクセスが叶うのは、オモイカネ様だけなので》


【ほう】

《少し気になるのは、誰の遺伝子なのか、なんですが》

【ハナはわかってる】


《お聞きしても?》

【むり、先生、あててくれ】


《井縫、観上、マティアス、そして魔王》

【うん、ハナの好きなかお】

【しにてぇなおい】


《嬉しく無いんですか》

【素直に喜んで良い事か?】


《あぁ、1つ因子が足りませんしね》

【そうじゃねぇよ】

【ショナはココにいるから】


【もー、真面目に話したいのに】

【わかった、ちゃんとする】


《先ずは、その方は最悪、殺処分になりますが》

【なん、またロキか】

【私が考えた】


【なんでこんな事を】


【匂い、感じたかった、感じるは出来無いから】

【だからって】


【受け入れてくれるって、おもった】

《現に、普通に傍に置いてますしね》

【流れで】


【色んな人間の集合体は、普通おかない】

【一時的やし】

《なら、今後はどうするおつもりで》


【どうしたいかによる】

【色々、体験したい、お家はハナがいい、ココに帰ってくる、する】


【それは保留な】

《普通、保留にすらしませんよ。少なくとも、アナタの事は何でも知ってるんですよ》


【ココに探られて痛い腹は無いし】

【じゃあ居て良い?】


【保留、具合悪いねん、思考にノイズとかバグとか多いの】

《長く置けば情が湧きますよ》


【秒で湧いとるが】

《もっと辛くなりますよ》


【どっちにしても殺処分はダメだ、もう完全に生命体だもの】


《では、少し本気で話し合いましょうか。席を少し移動しても?》

【ばいばい】

【うい】




《では、再開しましょうかね》

【おう】


《風邪を治す為にも、少し制御具を外しませんか》

【それはそれ、コレはコレ。普通は勝手に治らんでしょう】


《治癒魔法師なら、勝手に治るんですよね。なら、アナタは普通以下では》

【元魔王候補で、非公認魔王だったし】


《今は、違う筈では》

【雷電と治療は、別に要らないでしょ、ココ】


《どうして、そう思いますか》

【居ないんでしょ、他に、魔女狩りにあったって聞いた。ニュクスさん、ヘカテさんに】


《それは過去の話では》

【今も居ないのは、必要無いとこの世界の人間が選んだ結果。ケイゾクしている、なら、封じられるべき能力】


《封じられて構わないんですか》

【死ぬよりマシ】


《では、もう子孫やご結婚は》

【ずっと諦めてる言うてるのに】


《その若さでですか》

【ワシのじゃ無くていい、皆のでええねん】


《罪悪感ですか》

【まぁ、それも有るのは認める】


《一部からは、小野坂さんを疑似体験しているとも》

【風邪引く前に一瞬過ぎったけど、そう粗末にも出来無いから、して無いよ】


《エリクサーをお飲みにならないのは?》

【殺したり沈静化し易いかなって】


《諦め、落胆でしょうか》

【ワシはね、最早、貴方達の世界に関わるべきではないと考えたんですよ、その掃き溜めの様な世界に付き合っていると、本当に嫌になっちゃうんだ。だから、ずっと口出ししなかったでしょ?言ってみれば、大いなる無駄に疲れちゃったんです。残念ながら】


《第4話、視覚素子は笑う。君には出来ませんよ》

【どうかな。第23話】


《善悪の彼岸》

【良く覚えてるねぇ】


《はい、非常に有意義でしたので》

【役に立つ知識なら良いのにね】


《いいえ、勉学だけがこの世の全てでは有りませんから》

【それが本当なのかどうなのか、もう、知るかどうかすら迷ってる】


《記憶を共有した時点で、全てが終わった気になってるんですか?》

【後は、皆が上手くやってくれるだろうって】


《全ての情報は共有し、並列化した時点で単一性を喪失し、動機なき他者の無意識に。或いは、動機有る他者の意思に内包されるから、でしょうか》

【それは経験から導き出された先生の言葉?】


《ふふふ、そうですね。君は世界中で起こる何もかもが、インチキに見えてるんでしょうね》

【サリンジャー先生がサリンジャーの引用、ふふ】


《君がジッとしていれば、人は君に会いに来るだろう》

【それな、クーロンにも言われたな。心の覗き見が趣味ですか】


《私は、私が見える世界を皆に見せる為の機械ですから》

【大丈夫、消滅する媒体者である事に、落胆も、諦めてもいないから】


《オリジナルが居ないと、傀儡の模倣者が生まれる可能性が有るので。適度に自己主張をお願いしたいんですが》

【ワシは所詮何処かの誰かの知識の集合体、模倣体。だから、ワシじゃ無くても良いでしょって思う】


《知識は勿論、文明や文化の進化の結晶体。そう洗練された世界を捨た、チチェでコグマに生まれ変わりますか?》

【スイカは有るぞ】


《所詮は他人の叡智の結晶、他国から買ってきた産物ですよね》

【その脇の甘さがエモさに繋が、そもそも、あの日記がフィクションならコグマは付喪神か?】


《ココの分類ならそうですね。それと、完全なオリジナルは、詰まるところ宇宙人かと》

【アクトゥリアンか】


《言語も常識も一切通じない、アクトゥリアン》

【ヤベェな】

【ヤベェですかねぇ?】


【質感がもうな、ワシも、こんな感じなのかな】

【と言うか、以下ですね!】

《邪魔しないで頂けますかね?》


【だって楽しそうだったんですもん、私も早く混ざりたいんです!】

《分かりました、伝えておくので》


【絶対ですからね、では!】

【すまん】

《いえいえ、君の知識を広める事には賛成ですか?》


【そこはノーコメント、誘導したくない】

《本当に、ココを諦めてはいないんですよね?》


【好奇心は有るでよ、でもなぁ】

《チームプレイは》


【《野球は下手だから》】


【ふふ、思考誘導されてしまった】

《いいえ、インターセプトしたまでです》


【何回観たの?】

《嫉妬される程度》


【1回か】

《はい、字幕を付けて頂いたので。ソチラは?》


【多分二桁で収まる筈】

《字幕無しですよね、お好きだからこそかと》


【ヲタクだから楽しいけど、先生すまんね。余計な知識を蓄えさせたらしい】

《1の言葉で10を知れる、和歌を和歌で返すのとそう変わらないかと》


【だけどなぁ】

《知識や教養の問題も含みますよ、引用の引用を使っての会話に楽しさを見い出せないなら。耳と目を閉じ、口を噤んで孤独に暮らしたら良いんですよ、ふふふ、止められなくなりますね》


【良く無いなぁ、記憶を消して貰わないと】

《言葉では知っていても、実際に目の当たりにするまでは信じられませんでしたが。もう私の財産ですので、対価無しでは消せませんね》


【でもなぁ、判断力に疑問を持たれるのでは】

《知識の共有如きに、判断力へ疑問を持つなら、書を捨て国を出るべきですよ。例えば、無職国家に》


【ペニシリン無しはマジでワシ死んじゃいそうだし、生きてたいから無理だな】

《ですね。熱がありそうですし、ビタミン剤と整腸剤をお送りしますので、お飲みになっておやすみ下さい》


【うい】

《では……桜木花子がココまで考え、ココまでしても、優しさや配慮までも、偽りや偽装だと言うんでしょうかね。国連の人間と言うのは》




 泉からビタミン剤や葛湯が届いた。

 先生の処方、桜木さんは何故か喜んでいる。


「桜木さん、コッチがビタミン剤と、整腸剤です」

「初薬剤、薬剤じゃ無いのか、処方箋無いし」


「欲しいですか?」

「有るの?お、初お薬手帳じゃ」


「説明書ですよ、仰る通り、処方箋無しで買えるものなので」

「ビタミンC神話はいつ崩壊したんやろ」


「風邪に効くってやつでしたら、40年程前に」

「ほう、そうやって薬飲んだ気になっとくわ。ほいで、早く治すには」


「ストレス無く」

「無理やんな、髪は邪魔だし手は無いし、一服する」

【はい、どうぞ】


「あの、アクトゥリアン」

【個人裁量です、そしてココは仮にも桜木さんの領地ですので。では】

『妊娠して無いし、問題無いのに』


「リスクが」

『そこらの人間とヤりまくるよりマシ』


「そうですけど」

『要らなくなる位に、他のモノを与えたら良いと思う』


「はい、御尤もです」

『ぶっぴん違うからね、心、きもち』




 ビタミン剤と整腸剤は実質風邪薬、そう思おう。

 一服、不味い。


「ウーちゃん、風を頼むよ」

『だって、風邪なのに』


「ウーちゃんのせいじゃ無い、お願い」

《雷雨はどうかな?》


「散らない?」

《まだ大丈夫》

『もう、邪魔しないで』


「まさかの逆パターン」

《咲が割かれた、あははは》

『もー』


 一服を終え、温泉へ。

 桜と雷雨、おつ。


「桜木さん、大丈夫ですか」

「おつやで、桜と雨雲と雷雨、かっけぇわ」


「雷は、前からお好きで?」

「昔はダメだった、布団に盛り込んで寝落ちレベルで怖かった。だけど普通は落ちないし、落ちるのは避雷針か高い場所に落ちる、都心なら危なく無い、光ってから何秒か数えると、どの位遠くに落ちたか分かる。そうお兄ちゃんに教えて貰って平気になった、しまいにはカメラで撮ろうとしてたわ、難しいんよな」


「今なら撮り放題ですね」

「落とし放題、鳴らし放題でも無いでしょ、飛行機も船も居るじゃろ」


「ココら辺には居ませんよ」

「間違って誰か来てたら死ぬぞ、ロキ焦げかけたし。オモイカネさんは大丈夫かいな」


「心配してますよ、ドライ使えないのにって」

「そう全部バレるのが、そんな嫌か」


「嫌ですよ、普通は秘密にしたい事もあるんです」

「エロ意外で」


「プライバシーが何の為に守ら」

「メールで告られて、無理。って断るとかか、キレ過ぎじゃろ」


「ど、オモイカネ様ですか」

「おう、急にぶっ込んで来てビックリしたわ、許せと言わんが」


「プライベートな時間以外にプライベートを持ち込むなんて、プロ意識に欠けますし。桜木さんに気取られた時点で、従者的には完全に失格です」

「すまん、気付くつもりは無かったんだが」


「アクトゥリアンも認知してたので、桜木さんは問題じゃ無いんです」

「でもだ、すまん」


「違くて、桜木さんは何も悪く無いんです」

『ハナ、もう上がった方が良い』


「へいへい、上がるかね、髪、宜しく」

「はい【ドライ】」


 ショナにも秘密が有るらしいが、エロ意外にどんな秘密が。




《なぜじゃ?どうしてこう、2人だけにして良い雰囲気にすらならんのじゃ?》

『ショナ君に覚悟が足りないんじゃ無いかなぁ』

《そうよ、もう止めて他のにしましょう》


《ベリサマ、どうしたら良いんじゃろ、我、もう分からん》

『そこはほら、エイルに』

『え、じゃあロキで』

『んー、どっちかなんだよなぁ』

《もー》




 オモイカネ様に温泉に入りたいと言われ、何とか加減を間違えない様にと入れ。

 如何に桜木さんが楽な方か。


『洗われた』

「心配なので一緒に入らせて頂きました」

「ご苦労様、溢れたらどうなるん?」


『分かんない、ぜんぶ?』

「えー、じゃあ普通の、液体を嚥下出来る?」


『わかんない』

「あぁ、トロみ付けるか、葛湯有るかね」

「桜木さんの風邪用にありますよ、作りますか?」


「ワシも飲む、弛めで頼む、氷コロコロしんしゃい」

『あー』

【どうぞ、ふふ】


「可愛いねぇ」

『どこが誰に似てる?』


「目の色はマティアス 手は魔王、髪はせいちゃんかな」

『ワンコはどこいった』


「しらんがな、アレをそんなガン見しとらんもの」

『なんで、イケメンなのに』


「アレはギリギリのラインや、ちょっと苦手。こう、言い難い、名伏し難い、男性ホルモン?」

『男性ホルモン』


「男らしい感じ、あ、何で葵ちゃん、そら無いか」

『探したけど無かった』


「探したのね」

「桜木さん、この位で良いですか?」


「ありがとう、後は調節して飲ますわ。うん、美味い」

【食器どうぞー】

『あー』


「早い早い、待って、はい、あー」


『あー……ほのあまい?』


「だね、甘露甘露、あー」

『あー』

「桜木さん、髪を梳かしますよ」


「へい、もう少し水分量足すか」

『むせないようにする』


「そうしてくれ」

「トリートメントも何も、してませんよね」


「誰に会うでもあるまいに、あー」

『いける。いたね、残念変態イケメン』


「あー、アレはイケメンランキング最下位やね、顔面も何もかも」

『ヤリ◯ンだから?』


「しかも不真面目やし」

『ウブ好き』


「うっせえな、トロトロの方飲ますか」

『通ってる感じする、ふしぎ』


「からのサラサラ」

『のめた』


「こっから先が不安だわ、専門家って、やっぱ病院か」

「そうですね、そうなるかと」


「拘束されないかね、外界に下ろしたら」

『それはこまる』

「正直、微妙な時期です」


「ならミーシャか、呼べるん?」

「聞いてみますね」


 凄く、気持ちがチリチリとしたのは、多分嫉妬で。

 ただ何をどう、誰に嫉妬したのかが、良く分からない。




 ミーシャが早速威嚇している、オモロ。


「桜木様、それ、誰ですか」

『オモイカネ』

「です」


「え、え?」

「はい、分体と言うべきか、日本の最高機密でらっしゃいます」

『ハナは何もして無い、自分できた』

「ホムンクルスの研究所荒らしたの、この方やねん」


「なぜ」

「それな」

『イオンの匂い、良い匂い』


「したんかい」

『さっき少しした、髪を梳かした時』

「なるほど」


「で、コレ生まれたての赤子と同じなんよ、嚥下が不安でスプーンで水分摂らせたけど、不安で」


「桜木様の遺伝子も入ってますね」

「え」

『せいかい』

「何で分かるのよ」


「匂いです、嫌な匂いしないから」

「こわっ」

「桜木さん、知ってたんですか?」


「薄々、超薄」

『少し入ってた方が惹かれるって』


「えー、寝室出禁だわ」

『えー、一緒に寝るの』

「え、桜木様、機能が」


「戻って無いけど一応な」

『マーリンと一緒にねてた』


「栄養補給じゃ」

『私もなの』


「嘘は良くない」

『嘘言わない』


「アレ、溢れてんのかコレ?」

「いえ、大丈夫です」

『灯台は温かいの』


「灯台ぃいい」

『召し上げられる?』


「あぁ、もう、そうしちゃう?」

「ダメです、桜木様は諦めたらダメ」

「ミーシャさんお願いします、桜木さん、上に行きましょう」


 灯台の能力、消せないのかね。

 あ、偽装の魔法でどうか、魔道具頼んでみるか。


「灯台パワー強過ぎる」

《だけじゃ無いんじゃがなぁ》

「そうですね、何か流しますか?」


「タスマニアデビル」

「はい。そう言えば映画観ましたよ、最新の」


「お、くわしく、だれと」

「兄と、隣の子と、その妹さんと」


「あれ、お義姉さんは」

「体調が優れなくて。本も買いましたよ、桜木さんの」


「あぁ、恥ずかしい。お隣って幼馴染的な?」

「そうですね、直近のグループにずっと居ますから」


「良いなぁ、普通に幼馴染とか憧れるわ、なんなら都市伝説だと思ってたわ」

「一回り違う姉妹で、母がしょっちゅう家に呼んで遊んでました」


「わお」

「兄のファンです、妹にしか見れないって玉砕済みです」


「グループ育児の弊害では」

「そうでも無いかと、普通にくっついてた子も居ますし」


「不思議、親戚の感覚しか分からんわ」

「地域によるんでしょうね、グループが多かったので交流は複数有りますし」


「あぁ、可愛いなデビル」

「ラーテルとどっちが可愛いですか?」


「こっちやろ、飼えそうな雰囲気やん」

「指を食べられちゃうかと」


「再生出来ればワンチャン」

『はなー』


「号泣じゃん、どうした」

『なにも、しないから、一緒に、ねる』

「すみません、泣き止まず、逃げられました」


「ミーシャ、夜の見張り大丈夫?」

「はい、時間帯は変えてませんので」

『んー』


「その顔で泣くな、水分が勿体無いぞ」

『ちゃんと、のむからー』


「はいはい、一緒に寝ます、落ち着け、水分摂れ」

『かなしかったー』


「初悲しいか、大変だな人間は」

『うん、たいへん、ぅう』


「なー、たいへんだ」


 なんで皆泣く。

 ワシか、ワシが、いや、ワシ悪く無いだろコレ。


『ごめんなさい』

「思い出し溜息だ、気にするな。水分摂れるか?」


『うん』

「よし、待ってるから行きなさい」




 オモイカネ様へなのか、桜木さんへの嫉妬なのか。


 雑念を払いたくてタブレットを見ると、桜木さんとネイハム先生の面談が公開されたと通知された。

 僕も知らされていない事で、多分桜木さんも知らない事。


 文字起こしされた内容が読めない、読んでしまったら、桜木さんに何かバレてしまいそうで。


 なのでもう1つの通知を黙読。

 転生者様が国連への協力拒否を正式発表、そして新規団体カーネーションズが正式に樹立。

 そして明朝、浮島を新たな国連との交渉の場にする予定らしい。


 この浮島なのか、他の浮島を利用するかは不明。

 設置場所も、何を話すかも。


「ショナも溜息か」

「映画、実は殆ど頭に入ってこなかったんですよね」


「あぁ、ワシが何かするか心配だったか」

「そうかも知れませんね」


「信用、無いよなぁ」

「半分冗談です、すみませんでした、今度一緒に観ませんか?」


「どんなんなん」

「ジガバチ出ますよ」


「あぁ、それは魅力的だ、映画館だけ?」

「いえ、コレでも観れますよ」


「もう泣きたく無いから追々だなぁ」





引用、参考。


こぐまレンサ

著者 ロクニシコージ


攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX

原作 士郎正宗

第4話、視覚素子は笑う INTERCEPTER

第23話、善悪の彼岸 EQUINOX


問題があると判断された場合、引用などの部分は即時消去いたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る